第34話 ヤラれた商人


俺はアミノさんの手を引いて冒険者ギルドを足早に出てきた。


「ふぅ〜〜。怖かったねアミノさん。大丈夫だった?」


「・・・。」


「アミノさん?」


「ふぇっ!だ、大丈夫ですよ。ありがとうございました。」


アミノさんの顔がちょっと赤くなっている。しかも、握っている手が熱くなっている。


「もう少し早く助ければ良かったね。そうすれば、あいつらに変な事されずに済んだのにごめんない。」


「何言ってるんですか!エドさんは他の冒険者達が知らん顔しているのに助けてくれたじゃないですか!す、凄くカッコよかったです。」


「・・・そう言ってもらえて良かった。」


「あの時・・・ゴブリン達に襲われた時は、本当に諦めてましたから・・・。でも、本当にエドさん自身がゴブリン達をやっつけたんですね。私は、エドさんの召喚獣が倒したのとばかり思ってました。」


「まあ、召喚獣はフェアリーなので、対人戦では使えません。間違って相手を殺めてしまう可能性もあるので。」


「フェアリーですか、確かに魔法攻撃が強いので対人戦には不向きそうですね。」





そんなやり取りをしながら、アミノさんが薦める宿へ着いた。何やかんやで、手を離すタイミングが無くてそのまま繋いでいる。


手を繋いで宿に入ったものだから、宿の定員さんに「ダブルかツインどちらにしますか?」などと聞かれて、俺は慌てて「部屋は2つで」と訂正するのだった。


アミノさんは何故か残念がっていた。・・・この世界の女性って結構積極的なのかと思う俺だった。


マリアさんも意外とあっさりOKだったし・・・。


そんなにこの世界の女性はガードが緩いのだろうか?試しにアミノさんの耳元で小声で囁く。


「アミノさん、そんなだと俺、本気にしちゃいますよ。」


アミノさんの顔が赤くなる。


「っえ。別にエドさんなら、・・・良いですよ。」


冗談のつもりが・・・。俺の顔も赤くなってしまった。


「いつもこんなんじゃ無いからね。エドさんだからだよ・・・。」


「「・・・。」」


結局、ダブルの部屋を取ってしまった。






転生62日目の朝。



スヤスヤと俺の隣でまだアミノさんが寝ている。起こさないようにして、ベッドから出て日課の訓練を行う。



・・・・



水浴びをして、汗を流した後にタオルを肩に掛けて、上半身裸で部屋に戻る。


「エドさん、おはようございます。」


そう言えば、アミノさんと同じ部屋だったのを忘れていた…。アミノさんはあいさつするとそのまま俺の胸に飛び込んできた。


「アミノさん、おはよう。」


アミノさんは俺の引き締まった腹筋と胸筋を触って笑みを浮かべている。実は筋肉フェチで俺くらいの筋肉が好きみたいだ。


「くすぐったいから、やめてよ。」


「ごめん。ちょっと調子に乗ってしまいました。」


「まあ少しなら、別に良いけどさ。」


そういうと、アミノさんはギュッと抱きついて俺の鳩尾あたりに柔らかい感触が伝わる。アミノさんのほっぺが俺の胸板にあたってスリスリしている。


「「・・・。」」


そのあと、5分くらいはこのままだった。そして、満足したアミノさんと俺は、一緒に食堂へ行き朝食を取った。



・・・・



アミノさんと一晩共に過ごしたが、別に付き合うとかそういう感じにはなっていない。


まだ、互いの事を知っていないし、今後どうなるか分からないが・・・今の所は現状維持って感じだろうか。


俺は俺で目標がある。スキル、魔法がある異世界へやって来て、チートスキルを授かったから、今以上にもっと強くなって、限界を極めてみたい。


アミノさんは、自分の商会を大きくして、やりたい事があるようだ。商会を大きくするのは、そのやりたい事をするための通過点なのだ。その目的を聞いたら「秘密です。」って、躱されてしまった。



・・・・



そして、村を出発してからモード町までは、何度かウルフと遭遇したが、これと言って何のイベントも無く無事に付いた。


その間に色々とアミノさんとも話が出来たのでそれはそれで良かった。




夕刻になった。


「エドさん、見えてきましたよ。あの大きな壁の中にモード町があります。」


「・・・アイスラン町より、壁が1.5倍くらい高いんだね。」


「そうですよ。この町は、この辺りでは最も治安が良いのです。領主様が素晴らしい方です。衛兵もしっかりしており、きっちりと税金を収めている商人にとっては、過ごしやすいです。その代わり、不正が発覚すると厳しい罰が加わります。」


アミノさんが力説する。ここで、商人として成功するために、彼女は数年間お金を貯めて、やっと店を持ったとの事だ。


少しずつ軌道に乗ってきた時に運悪く今回のゴブリンナイトの集団と遭遇してしまったとの事。


荷物が失われていれば、ゴブリンナイトの魔の手からは助かったが、最終的に借金地獄となり、身を滅ぼしていた可能性もあったとか。


「まあ、アミノさんはちゃんと税金を納めているだろうから、心配しなくて良いんだろ?」


「はい、勿論です。誠実に最大の利益を出すのが私のもっとうです。」


「うん。これからもそうであってくれ!」


「はい。そういえば、色々とお礼をしなければいけません。これから我が商会はエドさんの専属ですので、まだ狭いですが私の家に来て下さい!!」


まあ、ある程度長期でモード町に滞在するつもりでいたので、家を探すまでの間、お邪魔しようかな。


「・・・そうだな。家を探すまでの間ちょっとお邪魔させてもらおうかな。」


「っえ、家を探すなら、いっそウチの家へ住んでくれても良いですよ♡」


本当に積極的だな。


「・・・検討させてくれ。」


「分かりました。良い答えを期待してます。」


「・・・。」


「今日は遅いので一旦商店(兼住宅)へ帰って、明日に荷を捌きに出かけます。こっちです。」


そういって、アミノさんと俺は、馬車に乗って移動した。







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