第33話 助けられた商人


アミノさんは冒険者ギルドでゴブリンナイトとの戦いの報告を行った後、俺の元へ戻って来る途中にギルド内で冒険者3人組に絡まれ始めた。


「ちょっと、待合せがあるので通して下さい。」


「何言っちゃてるの?銅プレートの奴なんて放っとけって!俺達は銀プレートだから、モード町まで護衛任務を受けてやってもいいぜ。まあ、その代わり・・・。」


そう言って、冒険者がアミノさんの腰に手を回して、尻を触っている。


「っきゃ、や、やめて下さい。」


アミノさんが周りを見回すが誰も助け舟を出そうとしない・・・。


調子に乗った、冒険者の手が上の方へ動き、アミノさんの胸を軽く揉んだ。


「ほ、本当にやめて下さい。だ、だれか・・・。」


(アミノさんも厄介なのに目を付けられちゃったな。)

(この村でアルロさんには誰も逆らえないだろ・・・。)

(いつもは、護衛の冒険者が連れているけどな・・・。)

(このままだと、宿まで連れ込まれてしまう可能性があるぜ。)

(ギルド員も見て見ぬフリだよ。)

(だけど、俺達じゃあ力になれないしな・・・。)




そこへコツコツと足音を鳴らせて俺がアミノさんの所までやってきた。絡んでいる冒険者の事は無視してアミノさんへ話しかける。


「アミノさん、ギルドへの報告が終わったの?だったら、そろそろ行こうよ!」


「っえ、エドさん?っちょっと。」


俺はそのままアミノさんの手を取って引っ張っていく。絡んでいた冒険者も「っえ」って感じで呆気にとられて、アミノさんを放していた。


「おい!ちょっと待て小僧。」


アミノさんに絡んでいた冒険者が、俺の目の前に来て眉間にシワを寄せながら詰め寄ってきた。


そして、俺の胸ぐらを掴んできた。


「おじさん、ちょっと止めてくれない?俺達これから用があるだよ。一緒に宿を取りに行くの!」


俺がアミノさんの肩を抱いておじさん冒険者にアピールする。ピキピキとおじさんの額に青筋が走る。


「ふざけんじゃねーぞ。アミノはこれから俺達と一緒にイイコトするんだよ。なあ?」


凄みの効いた威圧とも取れる誘いを受けて、アミノさんがビクリと萎縮し、無言で俺の後ろに隠れる。少し震えているのが分かる。


「おじさん。アミノさんが怖がってるじゃないか。っていうか、俺の胸ぐら掴むのも止めてくれよ。」


「銅プレートが生きがるなよ。出来るもんなら、てめぇで外して見やがれ。」


「・・・俺が本気を出せば、おじさん怪我だけじゃすまないよ?それでも良いの?」


「そんな訳ねーだろ。やれるもんならやってみろ!」


おじさんは凄みを聞かせて、大声で俺を威圧してきた。が、そんなの俺にとっては効かない。


「言質は取ったよ。じゃあお言葉に甘えて。」


俺はゆっくりとアミノさんの肩に回している手とは反対の手でおじさんの手を握ってそのまま力を込めていく。


徐々に徐々に力を強くする。


最初は余裕の表情のおじさんだったが、その表情が徐々に歪んでいく。そして、俺は一気に本気を出して力を込めると、ボキッと音がなる。


「い、痛ててぇ〜。」


それでも俺は握るのをやめない。ボキッっと更に音がなると、おじさんが片膝をついた。


そして、残りの片方の手で俺の顔面目掛けてパンチを繰り出してきた。俺は、アミノさんの肩に回していた手でそのパンチを受ける。


こっちの手にも力を込めていく。一気に力を込めると、ボキボキッとおじさんの手の骨が折れる。


「ぐあぁぁ〜〜。てめぇ〜もうやめろ。」


「・・・。」


俺はおじさんの手を握ったままだ。そして、両手をそのままおじさんの方へ押し、地面に倒すように力を込める。


おじさんは、両膝を付いて冷や汗をかいている。


「何か言ったかい、おじさん。」


「もうやめろって言ってんだ。」


「何だ人に頼み事なのにその言葉遣いは・・・。」


両方の手を更に力を込めると、ボキボキボキっと音が鳴り響く。おじさんの両手からは血は出ていないものの赤紫色になって、腫れ上がり始めた。


「ぐうああぁ〜〜。」


「てめぇ〜何しやがる。」


おじさんの仲間2人が俺に飛びかかって来るが、1人目の顎を蹴り上げると、足にきてその場に崩れ落ちる。そして、2人目の鳩尾に思いっきり蹴りを入れて吹き飛ばした。


「銀プレートなのにプライドは無いのかよ。俺みたいな銅プレートに不意打ち掛けるなんて・・・。まあ、おじさんはちゃんと誠意を込めて謝ってくれれば、許してあげるよ。」


「す、すまねえ。俺達が悪かった、です。もう、アミノには手を出さない、ですから。どうか、ゆるして下さい。お願いします。」


俺は、片手を放してやる。


「やればできるじゃん。でも、アミノさんにも酷いことしたんだから謝ってくれないと。」


「っぐ。アミノ、今日はすまなかったな。もう、二度と絡まねえから、許してくれ。頼む。」


アミノさんはコクリコクリと頷いている。


「じゃあ、行こうかアミノさん。」


俺は呆然としているアミノさんの手を握って、今度こそ冒険者ギルドを後にするのだった。













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る