第32話 狙われた商人


ゴブリンを倒して、馬車の裏にまわる。


ゴブリン達はあんなに戦闘音が聞こえているはずなのに、まだ俺に気づいておらず、目の前の獲物に夢中になっていた・・・。


すぐにゴブリン達の首を刎ねた。


女商人は酷いめにあっていたが、ギリギリセーフで助かったようだ。


すぐに布を取り出して、掛けてやった。


「大丈夫か・・・?」


「・・・はい。何とかギリギリ。」


「俺がこの場に着いた時には、もう既に他の者は殺られていた・・・。」


「・・・はい。助けて頂き、ありがとうございます。」


女商人は布を羽織って、頭を下げてお礼を言ってきた。そして、荷台へ行き軽く体を拭いて、替えの服に着替えるのだった。


その間に俺は、冒険者達と業者を一箇所に集めておいた。このままにしておけば、死体へ獣やモンスターが集まって食われる。


そのため、冒険者はプレートを集め、一般人は身分証を取って、遺体は埋めるか燃やすのが一般的だ。



荷台から降りてきた彼女は、身長160cmくらい。歳は20歳前後だろう。髪は水色で三編みにして後ろで縛っている。目鼻立ちが整っていて美人だ。胸も程よくある。


彼女も森の中での遺体の埋葬方法を知っており、俺がファイアボールで大きな穴を開けるのを見て何も言わなかった。ちょっと魔法の威力に驚いていたが。


「この度は、本当に危ないところを助けて頂きありがとうございます。私は、アミノと申します。」


「俺はエド、冒険者だ。たまたま通りかかっただけだ。それにしても、今回は災難だったな。」


「エドさんですね。確か、穴熊亭に泊まられていましたね。」


「ああ、今朝あんた達が早くから出発の準備をしていたのは、見てたよ。」


「そうでしたか。ということはこれからモード町へ向かうのですよね?」


「まあ、そうなるな。」


「でしたら、そこまでご一緒させて頂けないでしょうか?業者を失い、雇った冒険者も居なくなりました。どうか、お願いします。」


まあ、そうなるだろうな・・・。


「・・・まあ、同じ方角だしいいぞ。ただし、条件がある。」


「・・・ありがとうございます。条件とは・・・何でしょうか?」


アミノさんがかなり身構えた顔をしている。どんな無茶難題をいわれるか緊張しているようだ。そりゃ、命がかかた場だ、相当な見返りを求めれるかもしれない。身構えて当たり前だ。


「そうだな。まず、道中の飯はそっちで提供してくれ。それと、またモンスターや盗賊に襲われた場合、俺のいうことは絶対に従うこと。最悪、命が危ないと判断した場合、この荷物は捨てる可能性がある。ここまでは良いか?」


「はい。分かりました。ここまでは大丈夫です。」


「最後に・・・。」


「・・・・ゴクリ。」


「アミノさんは俺の専属になってもらう。」


「っへ!私がエドさん専属・・・ですか?つまり、・・・そういうことですか?」


アミノさんの顔が少し赤くなっている。


「そう。アミノさんの商会は、俺を優先的にバックアップして欲しいって意味だ。勿論、お金は払うので、必要な物などを用立ててくれると助かる。」


アミノさんがちょっとあたふたしていたが、真面目な顔になった。


「・・・そういうことですね。分かりました。それは、命を救って頂いたお礼としてこちらからも、エドさんの力になれるようにがんばります。」


「うん。よろしく頼むよ。」



・・・・



幸運にも馬車と馬は無事だったため、冒険者達を埋葬したら、すぐここを出発することにした。



目的のキャンプ地で野宿を行い、早朝に次の村に向かって移動する。


着くなり早々に衛兵に報告すると共に冒険者ギルドへゴブリンナイトの報告を行う。


アミノさんも俺が戦っている姿を見てはいない・・・。俺が助けた場面からしか俺の力は知らない。


冒険者ギルド職員は、銅プレートの俺が銀プレート率いるPTが破れたゴブリンナイトの集団に勝てたとは、やや疑いを抱いているようだ。


ちょっと面倒な事が起こりそうな予感である・・・。こんなとき、俺一人ならさっさとギルドを離れて宿屋へ直行なのだが。


アミノさんがいるので、どうするか迷う。すると、ギルド職員から質問が出る。


「エドさんは、銅プレートで、しかも失礼ですが職業は召喚士ですよね?一体どうやってゴブリンナイトを倒したのですか?」


「・・・冒険者が手の内を明かさないといけないルールがあるのでしょうか?」


ギルド職員は黙りこくる。


「・・・まあ、そのようなルールはありませんが、どう考えても可笑しいのですよ。召喚士が1人でゴブリンナイトを倒すなんて。」


ギルド職員は、疑いを掛けるような目で俺を見てきた。


「まあ、簡単じゃないですか!!召喚士の俺がゴブリンナイトなんて格上を倒せたって言うことは、良い召喚獣を持っている。それだけですよ。それ以外に何か考えられますか?」


「っう。確かにそれしか考えられませんね。」


「中立のはずの冒険者ギルドが、召喚士の生命線ともいえる召喚獣の情報を明かせというんでしょうか?明かすからには、俺がこれからも生活していけるだけの保証が欲しい。」


「・・・・因みにその召喚獣の情報を明かす場合にエドさんが求めるその保証とは何ですか?」


「まあ、お金です。向こう1年程は生活できる資金がほしいです。金貨で言うと5枚は頂きたい。私が1日、銀貨1〜2枚稼ぎますので、360日で銀貨360枚〜720枚となります。その間を取って金貨5枚です。」


ギルド職員は苦い顔をする。


「まあ、たしかに冒険者の手の内を見せるのは、強要しておりません。何かの強化スキル能力者であれば、多少力を示してもらいますが、召喚獣だとそれ自体が切り札になりますね。」


「分かって頂けて助かります。」


渋々納得してくれた感じだ。


アミノさんも冒険者ギルドへ護衛依頼を出していおり、その者が殉職したので、色々と報告が必要だったようだ。


俺は先に報告を完了し、アミノさんの報告が完了するのを少し待つ形になった。



暫くすると、アミノさんはこちらへ戻って歩いてくるが、途中で冒険者3人組に取り囲まれている。



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