孤児院編

第15話 孤児院


転生32日目の昼。



俺は初めてだが、懐かしい天井が目に入る。エドの記憶が懐かしさを感じさせている。ここが孤児院か・・・。


体には所々に痛みが残っている。特に左腕が酷く痛む。俺がベッドから起き上がり立ちあがろうとした時。


ガチャ。


部屋の扉が開き幼馴染トリートが入って来た。そして、ツカツカと歩いて来ると俺の胸に飛び込んで来た。


「急に戻って来たと思ったら、何であんな怪我してるのよ。心配したんだからね。」


トリートは少し目に涙を浮かべていた。


「ごめんごめん。ここを出てから色々あってな・・・。ところで、俺はどのくらい寝ていた?」


「寝てたのは1日半くらいだけど、色々あっただけで片付け無いでよ。ちゃんと話して貰いますからね。」


トリートは結構ご立腹のようだ。


「それより、腹も減ったし、ちょっと頼まれてくれないか?」


「何をよ?」


俺はベッドの脇に置かれていたリュックから、銀貨5枚を取り出した。それを見たトリートが驚いている。


「トリート、これでポーション2本と適当に皆んなの分の昼飯でも買って来てくれ。余ったら、後で食費の足しにでも使ってくれて構わない。」


「・・・分かったけど、エドこんな大金どうしたのよ?」


「俺は冒険者だぞ。普通に稼いだんだよ。」


「でもエドは召喚士でしょ? ・・・!!そっか、あの大きな騎士を引いて稼いだのね。危険な事に足を踏み込んで無さそうで良かった。」


トリートは頭が良さそうだ。自己解決しいる。


「おおよそ、トリートの考えた通りだよ。あの召喚獣の騎士のお陰さ。」


憑依スキルがあろうが、あの『忘却の騎士』が居なければここまで順調には行かなかっただろう。そういった意味であの騎士のお陰である。



◇◆◇◆◇◆


トリート視点の回想シーン



2日前の夕方の事。


ほとんど人が訪れてくるはずも無いのに孤児院の玄関の扉が開いた。


そこにはマントのフードを深く被った大きな騎士が立っていた。背中には大きな袋と人が背負われている。


「・・・。」


何も喋らないその騎士は、ただ立っている。


「な、何か御用ですか? こんな寂れた孤児院に盗るものなんて無いですよ。」


「・・・。」


そういっても、その騎士は黙っていた。


ガチャ。


そこへ、院長のメリーさんが部屋へ入って来た。メリーさんは騎士を見て一瞬驚くが、すぐ様背中に背負わせている人へ向かって叫んだ。


「そこに背負われているのはエドなんですか?もしかして・・・遺体を届けに?」


メリーさんの言葉に私は再度騎士のおぶっている人を確認すると、確かにエドの様な風貌であった。


私はとの言葉に落胆して、座り込んでしまった。


「・・・。」


それでも騎士は、無言のままだった。メリーさんが、涙を流しながら騎士の側へ近づく。エドは全身に怪我をしておりボロボロの状態だった。メリーがエドの顔を触った。


「っえ!まだ温かいわ。騎士様すぐにエドをこちらへ運んで下さい。」


メリーがそう言うと、騎士がエドを運んで動き出した。エドは生きていたのだ。危険な状態かも知れない。すぐにありったけの薬草や薬を用意した。


それから、エドをベッドへ寝せて、私が体や傷口を綺麗に拭いた。その後、可能な限りの看病を行なって今に至るのだ。


そして驚いた事にエドをベッドへ運ぶとその騎士はスッと煙の様に消えたのだった。


騎士が消えた足元には、マントと顔に巻いてあった布が落ちていた・・・。



◇◆◇◆◇◆



メリーさんもやって来て、体は大丈夫な事を伝えた。メリーさんと俺は初めてだが、とても魅力的な女性だ。


ロングヘアーでサラサラの髪、切長な瞳で、目鼻立ちも整っており、美人さんだ。スタイルは栄養が足りて無いのだろう、かなり痩せ型である。


エドからすると年上過ぎらだろうが、俺からすると30歳前後はドストライクゾーンだ。


エドの記憶を紐解きながら、簡単にこの3年間ほどの事を簡潔に説明する。


終いには、「あなたしっかりしたわね。」などと言われる始末だ。話し方も落ち着いていて、簡潔に分かりやすいとの事。


まあ、伊達にブラック企業でビシバシ鍛えられてません。日本での社会人生活で培った、説明は人を飽きさせないために、早く・短く・完結に。


ちょっと、メリーさんは俺の中でだな。ちょっとメリーさんを見る俺の目が熱っぽい感じになっている。


メリーとの会話が盛り上がっていると、トリートが嬉しそうにしながら孤児院へ帰って来た。


「こんなに買い物したのは、初めてかも。調味料から日持ちする保存食など色々買えたわ。」


トリートは買い物籠に一杯の物を抱えている。と、言うのも束の間。何か言葉に怒気を放ちながら話してきた。


「あら、エドとメリーさん、手なんか握って何やってるの!?」


何もやましい事は無いと言わんばかりに余裕を持った対応でゆっくりと手を離した。


「いや、メリーさんが心配してくれて、手を握ってくれただけだよ。トリートなんて俺に抱きついて来てくれたじゃないか。」


「あら、まーあ。まーあ。」


メリーさんがトリートを見て、大袈裟に驚くアクションをする。ワザとだ。


「っえ、そんなのエドが急に帰って来たと思ったら、あんな姿だったんだもん。心配するわよ。」


「心配掛けたな。ありがとうな。」


「何よそんな大人ぶって。年下のくせに!」


っえ、トリートは俺より年上か?


いや、確か同い年だ。誕生日が俺より少し早いだけだ。






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