第16話 一世一代の勝負


俺はトリートからポーション2本を受け取って1本は左腕の怪我へ掛かる。もう1本は飲む。飲むと全体に満遍なく効くのに対して、局部にかけるとピンポイントで回復してくれる。


これで正常時の8割型の力は発揮出来る状態まで戻った。ただ血液が足りていないので、レバーなど食べて増血する。


トリートも分かっているのか、俺用としてレバーの串焼きを数本買ってきてくれている。



食堂に行くとそこには15人の子供達が集まっていた。俺がいなかった3年間で知らない顔が2人増えていた。また、卒業した者も居たようだ。


幼児から成人前まで様々である。どの子も痩せこけており、まともな食事が取れて無いのだろう・・・。


ただ、今日は違う俺が渡した金で、安い食材を使い工夫されたボリュームがある沢山の料理が並べられていた。流石、メリーさんとトリートだ。


皆んな目の前に並べてあるご馳走に釘付けである。メリーさんとトリートも席に着く。


「それではいただきましょうか。頂きます。」


「「「「いただきまーす。」」」」


皆んな一斉に料理を食べ始めた。「今日はいくらでもおかわりして良い」との言葉を聞くと、皆んなから「わーい」と大声や笑い声が上がった。


楽しい昼食の時間は、皆んながお腹いっぱいになるまで続いた。


エドは何故か孤児院へ帰りたがらなかったが、俺はたまにこれから顔を出そうと決めたのだった。


メリーさんともっとちゃんと話をしたいしな。エドからメリーさんの情報を吸い出そうとしても、お母さんってイメージを持っているので使えない。徐々に聞き出そう。



それよりも、厄介なのが、トリートとの関係だ。エドとトリートは俺が客観的に分析するに、両想いだ。違かったとしても、それに近い関係だろう。


確かにトリートは可愛い。そこら辺を歩っている町娘より断然可愛い。


それこそ、マリアさんと良い勝負すると思う。平均点以下なのは、胸くらいだろうか。栄養不足の影響で、そこまで発達は良くない。


たが、15歳なのだ・・・。高校生と考えれば、なくもない。でも、下手すれば中学生3年だぞ。流石に犯罪だろ。俺の中でそんな葛藤がある。


どうすっかなぁ〜。




◇◆◇◆◇◆



無口盗賊ムーゴの視点。



2日前、ルーツ副頭と一緒に新人冒険者狩りに出掛けてのが、災難だった。あれさえ無ければ、こんな事には・・・。


ルーツ副頭はヤラれちまうし、腕はこんなになっちまうし。


それもこれも、あの変なガキのせいだ!油断させておいて、いきなり奇襲とかないだろ。頭には敵わないまでも鋭い踏み込みだった。


ルーツ副頭でさえも油断してたとは言え一撃だった。相手もガキだったからか俺は何とか逃げ出せたが危なかった。


奴の情報は、仲間へは報告してある。アイスラン町で活動している新人冒険者なら直ぐに見つかるだろう。


ルーツ副頭はあんなだが、話が面白いと中々仲間内で慕われていた。躍起になって探す奴も多いだろう。時間の問題だ。




予想外に2日経っても、エドの行方が分からなかった。どう考えても冒険者だ。生活をしていく為には、冒険者ギルドとの繋がりがある。それなのに見つからない…。


俺の左腕の傷は相当深く、薬草では止血がやっとだ。下手すると後遺症が残ると思われる。ポーションが使えれば、すぐに良くなるのだが金が無い。


敵討ちのために直ぐにでも動きたいが中々動けないでいる。どこに隠れているんだ。



◇◆◇◆◇◆



エドの視点。


転生32日目の夕方。


ブラックウルフなどの素材を持って、いつもの肉卸店のタンクさんの所へやって来た。


「タンクさーん、いるかーい?」


返事が聞こえたので、しばらく待っていると奥からタンクさんが現れた。


「おうエド、久しぶりじゃねーか。毎日顔出すお前が来ないなんて、どうかしてたのか?」


「ちょっと色々ありまして…。それより、コイツを買い取って貰いたいんですが…。」


俺は大きな袋から手前にあったレッドウルフを出す。タンクさんが驚きの表情を上げる!


「!!コイツはどうしたんだ?ハイラビット狩り名人のお前が・・・。」


「いつもよりちょっと森の奥へ潜ったら、たまたま襲われてしまって。」


「そんで倒しちまったってのか? しかもお前1人で?」


タンクさんは呆れるような驚いた様な表情をしている。


「いや、俺1人では無理ですよ。仲間とです。」


「・・・といっても、エドの仲間を見たことねーからな・・・。ここ数週間の関係だが、お前が善人である事には違いない。疑う訳じゃ無いが、その仲間とやらはどこにいる? そいつがそれなりの奴なら、俺も納得して素材を買い取ってやるよ!」


俺は暫く考える。果たしてここで、『忘却の騎士』をバラして良いのか…。メリットとデメリットを考慮して・・・そろそろ俺もある程度動けるようになってきたし、召喚獣もいるので頃合いかな。


それに素材を買い取ってくれると言質をとった。



「・・・分かりました。俺の仲間を紹介します。の素材買取りをよろしくお願いしますね。」


俺は一世一代の勝負に出た様な真剣な顔つきで、タンクさんへ話した。


「・・・おう、分かった。いつ頃合わせてくれるんだ?」


「今から直ぐにでも大丈夫です。ただ、この事は誰にも内緒でお願いします。」


コクリとタンクさんが頷く。


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