第14話 次から次へ
一難去ってまた一難。ブラックウルフを倒した後が、盗賊とか・・・。しかも、こっちは結構ボロボロな状態だ。
魔法も使い切ってしまったし、一気に片付けるか?対人戦は初めてだな・・・。あっちは俺を新人冒険者で且つこんな初心者が通う場所でボロボロな状態だから、雑魚だと思って舐めてくれるだろうな。
その隙に叩きのめすか?とは言え、俺自身も本当にボロボロだから余力が無いな。
「おーい、坊主聞いてるのか?本当に出て来ないなら、多少痛い目にあってもらうぜ。」
「・・・。」
「っち、しゃあねーな。」
2人が余裕を見せながら近づいて来る。ある程度近くなったら、俺は2人の前に出た。
「ちょっと待って下さい。あなた達は何なんですか?いきなり弓で攻撃するなんて!冒険者ギルドへ訴えますよ。」
2人組は俺のボロボロの姿を見て、・・・笑っている。
「坊主、何でこんな場所でそんなにボロボロ何だ?ップハハ。」
「フフフ。ココは雑魚しか出ない。そんなとこで、こんなボロボロになるなんて・・・冒険者辞めるべき。」
「お前もたまには良いこというじゃねーか。冒険者ギルドへ訴えられるもんなら、してもイイぜ。だが、もう坊主の未来は・・・奴隷になると決まったから、出来る訳ないがな。ハハハ。」
完全に俺を雑魚扱いだな。そっちの方が都合がイイが。
「な、何を言ってるだ!それより、一体誰なんですかあなた達は!」
「そりゃここまで来ても分からないのかよ、坊主は本当に冒険者の才能無いよ。危機管理能力が欠落してるよ。俺たちは盗賊だよ。」
「っえ?何でこんな所に!」
盗賊だと思っていたが、驚いている風に装う。そして、後退りする。
「別にいいだろ?俺達が何処にいようが俺たちの勝手だ。そして、俺達がお前を殺そうが奴隷にしようがどうしようが、俺達の勝手だ。俺達の常識だと、強いものが全てだ!!」
まあ、盗賊は腐ってるな。これまで、どんな悪さをしてきたのか・・・。
「・・・あんた達の言い分だと、俺があんた達を殺そうが、俺の勝手って訳だな。」
おっと、素が出ちまった。役になりきらないと、修正。修正。
「何言ってんだ?そんな事は有り得ないよ。」
「や、やって見ないと分からないだろ!」
俺は、ワザとガタガタと震わせた手でショートソードを持った。それを見て、盗賊達は更に馬鹿にするように笑ってきた。
「そんな震えててちゃんと剣を振れるのか?ハハハ。」
「フフフ。」
「や、やってやるさ。うりゃー。」
俺は、ワザと初心者のようにしかも如何にも弱そうに装って、変な走り方で盗賊へ向かって行く。完全に盗賊達は油断している。
俺の間合いに入ると本気を出して、踏込み口煩い盗賊の一人を切り捨てた・・・。
「・・・。」
もう一人が呆気に取られている隙きに接近し、一撃を入れる。しかし、俺は体中がボロボロでブラックウルフから受けた傷の痛みで手元が狂ってしまう。無口な盗賊は、左腕に深々と傷ができ傷口を押さえて膝をつく。
「うぐぅ〜〜。」
無口な盗賊は、全く俺の動きについてこれなかった。まあ、どうせ盗賊なんてこんなもんだろう。
そういえば、成り行きとはいえ、対人戦にて初めて人を斬り殺してしまったが・・・そこまで罪悪感に苛まれることになっていない。
これまで、嫌というほどモンスターという生き物を倒してきて、人もその延長上・・・と感じているのか?
それとも俺がこの世界に染まってしまったのか?
相手が盗賊という、最低最悪の存在だったからだろうか?
ショートソードの剣先を無口な盗賊へ向けるが・・・罪悪感があまりない。人を殺してしまってもだ。
ただ、別に楽しい訳ではない。そうする他に手段が無かったからだろうか?
・・・・。
ただ、無抵抗になった無口な盗賊へのトドメが刺せない・・・。
俺が少し放心状態で、盗賊の血が付いた剣先を見つめていると、無口な盗賊は、そのままその場を走り去っていった。
限界だった俺は立ちくらみを起こしガックと膝が折れ、座り込んでしまった。
ブラックウルフとの死闘で血液を流し過ぎ、更に盗賊からの不意打ちの矢傷で出血している。相当な血が流れてしまったのだろう。
矢傷へ薬草を押し当てて布で縛っておく。暫くすると出血は治まる。
早くここを立ち去らないといけないな。
『忘却の騎士』を召喚して、レッドウルフとブラックウルフを詰め込んだ大きな袋を担がせる。ついでに、俺をおぶってもらいアイスラン町へ急いで戻る。
町中に入る前に憑依スキルを使い、根性で町中まで入った。そこから憑依スキルを解いて、『忘却の騎士』にマントとフードを被り、頭にも布を巻いている。
緊急事態で頼る所も無く、仕方なく孤児院へ行くように『忘却の騎士』に指示を出した。
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