第49話 双剣のスワイク


トイレで小便をしていると、ケツを蹴られる感覚を受けた。


後ろを見ると8人ほどの20歳前後の男共がヘラヘラしならが、俺を見ていた。そして、もう一度俺のケツを蹴っ飛ばしてきた。明らかに故意である。


「なあ、なんでお前みたいな銅プレートがスワイクさん達と一緒の場所で飲んでんだよ!」


「どうせ、その爽やかフェイスでご機嫌を取って入れてもらったんだろ?実力も無いのにそういうのムカつくんだよ。」


「何とか言ってみろよ!スワイクさん達に泣きついて見ろ。」


ジョーーーー。


「・・・・。」


「こいつ黙っちまってるよ。結局1人じゃ何も出来ないそんなもんかよ。」


「「「ぷははは。」」」


やっと小便が終わった。


「群れないと何もできねーザコ共が。人が折角気持ちよく飲んでたのに気分が台無しだよ。」


「はあぁ〜〜〜。なんだとテメエ。」


男の1人が俺の顔目掛けて拳を振り上げる。俺はそれを掌で受け止める。


「まあ、こっちは無防備な状態で、2回も蹴られて、殴り掛かられてんだからこっちから反撃しても文句言うなよ。まずは、一発は一発だ!!」


ドガン。


2割ほどの力で相手の顔面を殴った。俺の拳が相手の顔面にめり込む。鼻が折れて鼻血がドバッと出る。更に左頬が陥没して見る見る内に紫色になりパンパンに顔が膨れあがる。


「ぐあああああああぁぁぁぁーーーーー。」


男が崩れ落ちて両膝をつき顔を押さえている。


「軽く殴っただけなのにやりすぎか?まあ良いか。次、ケツ蹴った2人。」


こっちも2割程度の力でキックボクシングのローキックをイメージして弁慶の泣き所を蹴る。


ボギッ。 バギッ。


「があああーーーわあああああーーー。」

「いでえぇぇぇぇぇーーーー。なんで俺なんだああーーー俺じゃねえよ。ううう。」


1人は間違って蹴ってしまったらしい。まあ、仕方ないか。


残り5人の男共は、目の前の出来事を受け入れられずに放心状態だ。


「おい。」


「っひ。」


「俺のケツ蹴ったもう1人って誰だ??」


自分が蹲っている3人の様になるかと思うと、誰も無言のまま立ちすくしている。


「「「・・・・・・・。」」」


「名乗り出ないなら、全員同じのイットクか? 因みに、こっから逃げたようとしたら、この3倍は強めに行くから絶対に逃げるなよ。」


強めに残りの5人に対して殺気を放つ。そうすると、5人はビクッとしてガタガタ震えながら、その場に立っていた。


「本当に名乗り出ないなら、全員ローキックだぞ。 5、4、3、2、」


「こいつです。」


1人の男が、俺のケツを蹴ったであろう男を指さした。


「なんだテメエ。裏切りやがって。」


「でも、そうしねーと、全員あのキックを食らうんだぞ。実際お前がケツ蹴ってるし!なんで、名乗りでねーんだよ!!」


「そ、そんなの。あんなの見たら名乗り出れねーだろ!」


バキッ。


「うっさい。」


取り敢えず、俺を蹴ったヤツへローキックを入れて落とし前は付けておいた。取り敢えずこんなもんで、今日は祝勝会だし許してやるか。



俺がトイレから出ようとしていたとき。そこへスワイクさんが入ってきた。


「エド、小便が遅いから来てみれば・・・。絡まれてるとか、笑っちまうわ。ブハハハ。」


「勘弁してくださいよ。俺は銅プレートなんだから、あんなVIPスペースで楽しんでたら、こんな奴等に目を付けられるでしょ!!まあ、軽くお仕置きしておいたけど。」


「っても、ちょっとヤリ過ぎだろ。」


「ちょっと、力がまだ有り余っているみたいで・・・。」


「・・・・・・だったら、ちょっと面貸せ。」


スワイクさんが少しマジな顔をしていた。


「エドに絡んでたお前達も一緒に来い。早くしろ。」


俺は渋々。俺に絡んできた男達はビクビクしならが、スワイクさんの後を付いていく。


周りの冒険者は何が始まるんだと、こっちへ視線がどんどんと集まる。無言で俺達はスワイクさんの後についていくと、ギルドの訓練場に着いた。


ガヤガヤしながら、他の冒険者達も興味心身に訓練場へ集まり始めた。


「何だ何だ?」

「スワイクさんが新人へ稽古でもつけるのか?」

「バカ言え、よく見ろ相手はエドだぞ。」

「でも、アイツは銅プレートだろ?」

「知らないのか、アイツだけはプレートの色に騙されるな。体力お化けだ。」



スワイクさんが木剣を手にとって俺の方へ投げてきた。双剣のスワイクも同じ木剣だ。


「力が有り余っているなら、ちょっと付き合え。」


スワイクさんは、怒っているのだろうか?この人の意図が読めない・・・。


「・・・わかりました。」


「制限時間10分の1本勝負だ。先に有効だを入れた方が勝ちだ。」


「かわりました。」


「因みに魔法は外野がいるから無しだ。良いか?」


「いいですよ。」


そして、そこから結構真面目な模擬戦が始まった。流石、金プレートっていった感じだ。一撃一撃が恐ろしく正確で、早い。


マバタキをする間に3撃は飛んで来る。


剣術スキル(達人)を持っているから、余裕を持って受け止められている。しかし、相手は双剣じゃない。片手剣で俺の土俵という訳だ。


互いに一歩も引かない、技と技の応酬を繰り返す。周りの冒険者達も静かになって、木剣同士がぶつかり合う音だけが木霊す。


・・・・・


長いような短い10分間だった。


結局、最後まで互いに1本を取ることが出来ずに時間切れの引き分けとなった。


まあ、まだ俺は本気ではないが、相手も双剣では無い・・・。まあ、引き分けが落とし所だろう。


十分に勝てると思う。しかし、本気を出して勝ってしまっては流石にまずいだろうな・・・。


「「「「わああああーーーーー。」」」」

「「「「すげえええーーーーー。」」」」

「これが、東地区の立役者、エドという男の実力だよ!」

「「「スワイク、スワイク」」」

「「「エド、エド。」」」


歓声と互いのコールが響き渡る。


スワイクさんが微笑んで来た。ああ、これを狙ったのか・・・。


「ありがとうございました。勉強になりましたよ。」


「いや、こちらこそ、エドがここまでやるとは思わなかった。本当は、5分ぐらいで勝負を着けるつもりだったが、上手くいかなかったな。」


スワイクさんの狙いは、事だった。


金プレートのスワイクさんと模擬戦とはいえ引き分けなら、十分過ぎる証明である。



それから、俺に絡んで来た8人のうち無傷の4人は、スワイクさんと模擬戦をして、ボロボロになった。


なぜか、スワイクさんがやる気満々だった。俺に勝つつもりでいたのに、引き分けでモヤモヤしていたのだ。その憂さ晴らしが、この4人となった。


まあ、このシゴキがあったから、俺からは何もお仕置きはしないであげた。


その後、俺に絡んで来た8人はスワイクさんのPTメンバーに治療してもらって外傷はほどんど完治した。ただ、俺に対する恐怖心という心的外傷は残っている。


彼ら8人に治療後に俺が、ワザと「よう。」と近づいて声を掛ける。それだけで、ガクガクと震えて、地面に頭が付くくらいに頭を下げてきた。



因みに、俺は騎士団からも祝勝会の招待を受けていた。そのため、冒険者ギルドと騎士団の祝勝会の会場を行き来した。




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