第48話 決断の裏側で・・・

転生111日目の夕方。


俺は冒険者ギルドにいる。


あの後、孤児院近傍のモンスターを討伐して、その後に町壁を仮修復した。ゴーレムの残骸を使っているから、見た目が悪くても強度はピカイチだ。



なぜ冒険者ギルドにいるかと言うと、的確にアイスラン町を防衛する為だ。


情報が一番集まって来る所にいた方が、対処が迅速にできる。その為、冒険者ギルドにいる。


今のところ北地区が最もスタンピードの被害を受けている。ただ、冒険者が多数いるので今の所どうにか抑え込めている。


モード町のスタンピードと比べると規模が小さいからだろう。



後は、南側から小規模だろうがスタンピードの余波が来る。これを対処しきれば安泰だ。


そんな事を考えていると、長身の白髪混じりの40代半ばのガタイの良い男から声を掛けられた。


「そこのお前!お前だよ。」


「あ、俺か?」


「そうだ! 孤児院近くの壁を塞いだのは、お前だろう?」


「あ〜、それなら俺も手伝ったな。」


「あのギラムが、お前の事を若いのに中々やると言ってたぞ。そこで、ちと南側を手伝いに行って来い!」


「・・・(誰だ?)。」


見た目は上役で、話しっぷりも上から目線の命令口調なので、ギルド長っぽいけど・・・。エドの記憶にもいないし…どうしよう。


「あからさまに誰だコイツって顔をするな。一応、これでもここのギルド長をしいてるローンだ!という事で、行ってもらうぞ。」


「あ、あ〜、って本当?」


俺は近くにいた受付嬢へ疑問を投げかけたら、本当にそうだった。ここのトップからの指示なら仕方ない。


「で、俺は具体的に何をすれば良い?」


「うむ。わしの読みだともうすぐモード町のスタンピードの余波がここまで来るはずだ。その波がどの辺りまで迫っているのか、探って来てほしい。かなり危険な依頼だが、大丈夫か?」


「・・・探るだけで良いのか?」


「うむ。そのつもりだが、他に何か気になる事があるのか?」


「いや、モンスターの数を減らさなくて良いかと気になってな。」


「っふ、流石にそんな自殺行為な事は頼めん。」


「では、聞き方を変える・・・。俺には偵察と合わせて、モンスターの数を減らしながら無事に帰還する事が出来るがやらなくて良いのか?」


「・・・・・それは、本当なんだな?」


「ああ、簡単ではないが、十分可能だ。」


ローンが俺の目を真っ直ぐに見てくる。


「・・・・・だったらやって見ろ。無事に帰って来たら、その成果によっては、ランクアップも考えてやる!だが、決して無理はするな。後ろには俺達が居るんだからな!」


「おお、それは本当か!?言質は取ったぞ!」


俺は、笑みを浮かべてローンへ食い気味に近寄る。


「な、何だこいつ急に喜びおって。」


「成果によってランクアップしてくれるって話だからな!」


「ああ、成果に似合ったランクアップをさせてやる。(どう頑張っても、この任務で、銀プレートから金プレートには届かんだろ。)」


ランクアップをしてくれるんだな!(銅プレートから一気に金プレートも目指せるかな!?)」


「ああ、ところでお前さんの名前は?」


「そうだったな。俺はエド。銅プレートだ!」


「っえ!銅プレートだと!だったらこんな危険な任務は無しだ!!」


「いや、問題ない。冒険者は実力が全てだろ!!犬っころ(ブラックウルフ)なら、何匹来ようが大丈夫だ。ただ、ここへ来る前に黒い犬っころ(ブラックウルフの上位種)は・・・確かにヤバかった。」


「銅プレーとだろうが、確かに冒険者は実力が全てだからな・・・。まあ、ギラムが推しておったんで犬っころ(ウルフ)相手なら大丈夫そうだろう。ただし、黒い(ブラックウルフ)のが出たら即逃げるんだぞ!! その時は、わしが何とかしよう。」


「ギルド長は、黒い犬っころ(ブラックウルフの上位種)を相手にできるのか?」


「ああ、昔はサシでもどうにか出来たわい!」


マジかよ・・・。確かに強者の気配は感じるが、そこまでの気配は感じ取れないが・・・。


「・・・わかった。その時はよろしく頼む。」



俺は、改めて気合を入れて冒険者ギルドを後にした。



・・・・



アイスラン町から南へ飛ばして走って2時間後。モード側のスタンピードの波と思われるモンスター集団と遭遇した。


ゴブリン、オーク、レッドウルフ、リザードマンなど混合の集団だ。数も200体はいるだろう。


後方にも多数の気配がするので、間違いない。ここがスタンピードの先頭だろう。


「金プレート目指して、いっちょがんばりますか!」





◆◇◆◇◆◇



転生111日目の夜。


<モード町の分身視点>


スタンピードが開始して約6日間。今朝方になって、モンスターの発生量がガクッと減った。終了の兆しが見えたのである。


そして、夕方には日常を取り戻していた。


冒険者ギルドでも、ある一部の周辺町村の情報収集班を除いてお祭り騒ぎである。ギルドホールおよびギルド周辺の道端で、大々的に祝勝会が始まっていた。


そして、金プレートと銀プレート重鎮だけが入れるVIPスペースが暗黙ルールの基に設置されていた。



そして、俺はと言うと・・・。


東地区で冒険者と騎士団の両方を常にフォローして、危ない場面を何度も救っていた。お世辞にも、俺がいなけれがもっと多大な被害が出ていたと思う。


そのため、なぜか冒険者のVIPスペースに銅プレートの俺が入って、和気藹々と皆と楽しんでいる。


しかも、俺には常にギルド受付嬢の可愛い所が、順繰り順繰り交代で付いて結構楽しくやっていた。


(ギルド受付嬢は、エドと食事できる権利をじゃんけんで決めていた。エドは、若く、イケメン、高身長、今回の一番の立役者。四拍子も揃っている。優良物件である。)



しかし、東地区以外の若い冒険者からしてみれば大不満である。なぜ銅プレートの若造がVIPスペースでワイワイ楽しんでいるのかと。


しかも、イケメンで受付嬢からもチヤホヤされている。その状況が更に不満に拍車を掛ける。


東地区で活躍をしたと聞いているが、実際に目にしていない。納得がいかない。




そして、俺がトイレに立ったときに事件が起こった・・・。


エドを気に食わないと思っていた7〜8人の男共が、トイレまでエドを追って入ってきた。


ジョーーーー。


「ふ〜、スッキリするわ。結構出るなー。」


ドカッ。


ケツを蹴られる感覚を受けた。


後ろを見ると8人ほどの男共がヘラヘラしならが、俺を見ていた。そして、もう一度俺のケツを蹴っ飛ばしてきた。明らかに故意である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る