第47話 孤児院近傍の戦い
転生111日目の昼。
俺は分身をもう1体出して、顔が分からないように布などで隠させた。そして、孤児院近くで戦っている分身の元へ援軍として2人して向かった。
本体の俺は、既に顔を晒している。【グリフォンの翼】の驚異が無いので、分身さえバレなければ良いと思っている。
現場へ着くと、町壁を越えてモンスターが町へ入り込んでいた。明らかに防衛する冒険者の数が足りていなかった。
分身は町へ入って来たモンスターの処理で手一杯だった。そして、侵入するモンスターを止められる者はこの場にいなかった。
そこへ俺達2人が到着した。
「援軍に来たぞ!」
「助かった。って、2人だけか。もっと援軍が必要だ!そこのお前、すぐにギルドへ行って来い!」
「はい!」
男の指示でギルドへ向かって走り出そうとする冒険者がいる。
「いや、ここは俺達2人で十分だ。とりあえず、ここのモンスターを片付けたら、壁を塞ぐぞ!その準備をしておけ!」
「何言ってんだ!この数を2人でどうにか出来るか!そいつの言うことは放っておけ!すぐにギルドへ向かえ。」
そう言って、この辺りのリーダー的な冒険者は、俺達の事をいないものして指示を出し始めた。
まあ、若い男が急に大口を叩いたらそうなるか・・・。やっぱり、実力で示すしかないか。
「じゃあ、行くぞ!」
「おう。いっちょやったるか!」
俺達は互いに合図して、モンスターの方へ向かって走り出した。
「ねえ、あの子達行っちゃったわよ!?いいの?」
「もう放っておけ。ああいう口だけの若い奴は、少し痛い目を見ないと治らん。ヤバそうなら、少し手助けしてやってくれ!」
「・・・はいはい。何だかんだ言って、面倒見が良いんだから。」
レッドウルフとネピタイガーの集団が飛び掛かってくる。俺は剣を片手にクルッと一回転する。
ボトボトボトッ。
10匹以上のレッドウルフ達が真っ二つに切られて、地面に落ちた。
次に分身の俺に対して、オーク3匹が突進してくる。分身の俺はジグザグに移動して、オークの突進を躱しならが通り過ぎる。すると、オークが真っ二つになり、3匹とも崩れ落ちた。
そして、町中へ入って行きそうなモンスター達に遠距離からファイアアローを2人して合計20本ほど放った。
17体のゴブリンなどのモンスターに命中し、燃え上がる。
ここまで1分ほどの出来事である。
周りの冒険者達が俺達2人の戦いを見て呆然としている。
「何が起きたんだ?」
「レッドウルフ達が一瞬にして、真っ二つだぞ。アイツ何をしたんだ・・・。」
「あっちのヤツが相手にしてたオークも気づいたら、真っ二つだったぞ!!」
「それに、何んて数のファイアアローだよ。あんな離れた距離なのに20体くらいは殺ったんじゃないか?」
「と、とにかくすげーよ!」
「「「うおーーー!」」」
やっぱり、有言実行しないと誰もついて来ないよな。
「残りは、お前たちがやっつけてくれ。俺達は壁からのモンスターの侵入を防ぐ!」
「・・・ねえ。あいつら本当に凄いよ。これならこのまま、壁を一時的に仮復旧できるよ!!」
そして、リーダーが冷静に指示を出す。
「・・・よーし。モンスターを倒すのは、あいつらに任せて、まずは町壁を塞ぐ準備をしろ!」
冒険者の皆が希望を見出し、動き出そうとした矢先・・・。
ワオーーーン。
あの黒い毛並みの忌々しいヤツが町壁の上に出現したのだった。かつての俺が全く敵わなかった強敵だ。
「ブ、ブ、ブラックウルフだーーー!!」
一人の冒険者が、その存在に気づき大声をあげた。
さっき迄のお祭りムードが一気に冷める。そして、更に絶望を煽るようにそれは現れた。
ブラックウルフの後ろから更に2匹の黒い毛並みのウルフが現れたのだった。合計3匹のブラックウルフの群れだった。
ブラックウルフ達は、俺達のことをゴミでも見るかのような目で見下ろしてきた。
また、あの目かよ。気に食わない。
「おい、犬っころ。そんな高いところにいないで降りてこい。さっさとブチのめしてやるから掛かって来い。」
ブラックウルフには理解できていないだろうが、挑発するように投げかけた。
ブラックウルフは雰囲気で嫌なことを言われたと察したのか、3匹とも牙を剥き出しにして威嚇してきた。
次の瞬間、3匹の姿が消える。
気づくと俺の左右と正面からブラックウルフが現れて攻撃を仕掛けてきていた。
「・・・この程度か。」
俺はその場からほとんど動かずに最小限の動作で3匹の攻撃を全ていなす。
1分ほど経っても、ブラックウルフ3匹の攻撃は俺に1度も当たらなかった。その間、俺達の残像と戦闘の音だけが鳴り響いていた。
「だいたいの攻撃パターンは分かった。もう、終わりにするか。」
ドゴン。バゴン。ズゴン。
3発の大きな音が鳴り響く。
俺がブラックウルフ達を地面に叩き付けた音だ。上段から下段へ向かって振り下ろした拳で3匹のブラックウルフの頭蓋骨を粉砕させた。
ブラックウルフとの戦いに完全勝利である。俺はあの時より、かなり強くなったんだな・・・。改めて確信を得ると同時に余韻に浸っていると、冒険者達の歓喜の声が上がった!
「「「うおおおおおーーーーーーー。」」」
「何だよあの一方的な戦いは!」
「俺なんて何も見えなかったぞ。」
強敵を一方的に倒して、冒険者達の士気が上がった。
「うるさいのは放っておいて、俺達は外のモンスター達を片付けようぜ!」
「そうするか。了解!!」
「それにしても、俺達って結構強くなったんだな。」
「数ヶ月前は、ブラックウルフ相手に全然敵わなかったのにな。」
「それは言えてる。」
自分達3人でそんな会話をしながら、町壁の外のモンスター駆除へ向かった。
・・・・
俺はこの戦いの最中で、勿体ない感情からどうやれば、モンスター素材を回収出来ないか考えていた。
そして、やっとその答えに辿り着いた!!
名付けて、魔法のポーチ作戦だ!!
ありきたりな事だが、なぜ今まで思いつかなかったのだろう。
ただの小さなポーチを魔法のポーチだと言って、そのポーチにモノが収納できると説明すれば良いのだ。更に物を取り出せるのは、俺だけと付け加えておけば、ポーチを盗まれても嘘だとバレない。
しかも、この前、運び屋スキルに時間停止機能を付属することが出来た。日本人だったときの記憶がスキル化(ネコニンジャ)するならと思い出し、試しに実行してみたら出来てしまった。
実際にまだこの時間停止機能を付属してから数日しか経過していない。そのため、完全に時間停止されるかのまだ検証中だ。
取り敢えず、氷を収納して検証しているが、1週間以上は溶けずに保存できている。また、逆に温かい食べ物も検証しているが、同様な結果だ。
こういった事から、今回討伐したモンスターを人目が付かない所で、どんどん
こんな簡単なことなぜ今まで気づかなかったんだ・・・。
まあ、弱い時にそんなポーチを持ってたら、命を狙われるからやらなくて正解か・・・。
ってことは、あまり大々的には行わないほうが良い。程々が大事だね。
って事で、町壁の外でモンスターをバッタバッタと倒した。高く売れそうなモンスターは即収納していった。
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