第46話 情報の照合


転生109日目の夜。


分身の俺は、食事の後にサリナさんの宿に潜り込んだ。


宿を取るのを失念していたが、逆に正解だった。宿に追加料金を払って、サリナさんの部屋に泊まる事にしたのだ。



ベッドの中のサリナさんは強すぎた。良い勝負をしていたが、結局僅差で俺の負け。


5勝5敗まで一進一退の攻防が続いたのだが、最後の最後で先に俺がイッてしまった。


5回も敗北したのは、初めての経験である。そこまで、良く出るもんだな…。若さって凄い。




まあ、目的の情報はバッチリ取れた。

酒場の情報とほぼ同じだが、新情報も得た。


1つ目は、冒険者ギルドがちゃんと機能していると言うことだ。


モード町と同じ様に武器や食料の確保。更に町壁の外側へ防衛ラインの設置を進めている。


一方で厄介なのは、領主の動きだ。騎士団を私利私欲のために使用し、領主の館を警備させているようだ。町壁の外側の防衛は、冒険者ギルドへ任せっきり。領地内の警備は通常運転だった。領民からかなりの不満が出ている。


もちろん、冒険者ギルドから領主へクレームを出しているが、相手にされてないらしい。流石、ダメ領主である。





2つ目は 【グリフォンの翼】の話しだ。彼らは、俺が抜けた3〜4ヶ月前頃から依頼の失敗が続いているらしい。新規のPTメンバーを入れても、定着せずに1回の遠征ですぐ解散する始末。それが3〜4回続くと、周りの冒険者から相手にされなくなったらしい。


そして、既にホタン達はPTハウスを追い出されて、相部屋のボロ宿を拠点としているようだ。


(まあ、エドがいかにアイツ等を支えていたのかこれで分かっただろう!これまで美味しい汁を啜っていたのだから、当然の報いである。)


だが、ここまで実力が無かったのかと呆れてしまう。自分達で客観的に状況を分析して、立て直すことぐらい幾らでもやりようがあっただろうに…。


これで、【グリフォンの翼】を気にする事は無いだろう。




3つ目は、ダンジョンで怪しいを見たとの話しだ。フード付きのマントを羽織っていたらしい。


この手の情報は、後日、冒険者ギルドへ行った際に入手した。ダンジョンで怪しいフード付きのマントを羽織ったを見たとの多数の情報が上がっていた。


怪しい奴は、ソロでダンジョンの深い階層まで潜っているとの事だった。命が軽いこの世界で、ソロでダンジョン攻略を果たしてするだろうか?


俺意外はあまり居ないだろう。


金プレート冒険者でも、俺の様な便利スキルを所持してないと難しいだろう。


戦闘だけできても、食料が無くて困る。怪我をした場合はポーションも必要だ。夜は交代で休憩を取る事も出来ない。戦利品も持ち歩くのに単独だと限界がある。デメリットしか考えられない。



これらの情報を得られただけでもサリナさんとの出会いに価値はあった。スタンピードの対応で忙しい最中なのにこんな事していて良いのかと思うが…。




◇◆◇◆◇◆




転生111日目の早朝。



そして、この日、想定外のダンジョンのスタンピードが起こったのだ。


町の南側からでは無く、北側からモンスターの大群が押し寄せて来ていた。予定より、早いモンスターの到来。且つ方向も想定外だったので、町では混乱が起こっていた。


しかも、早朝とのこともあり、緊急警報の鐘が町中で響き渡る。住民達も予想外の事態に「町中にモンスターが侵入した」などの誤報も飛び交い大混乱だ。



・・・


町中に緊急警報の鐘がなる中。冒険者ギルドを訪問する。ここの情報が正確で一番信憑性が高いと判断したからだ。


冒険者ギルドは、想定外のスタンダードが発生して切羽詰まっているため、猫の手でも借りたいようだ。


エドのイケメン力を最大限に活用して、受付嬢から情報を得る。昔のエドは163cmと小柄で、髪が長くボサボサだった。今は、175cmで短髪の爽やかイケメンである。


流石エド。受付嬢は少し緊張した様子で、北のダンジョンからスタンピードが発生した事を丁寧に教えてくれた。



とりあえず、北の状況を確認しに現場へむかう。住民は混乱しているが、冒険者ギルドはしっかりしていた。


騎士団へ指示を出し町門を閉める。防衛体制を敷き直し、北地区へ戦力を集中するような対応を取った。


分身の俺は、すぐにこの状況を本体の俺に知らせる手を考え…へ着いた。



建物のドアを開けると、メリーさんと子供達、更にシドが食堂に集まっていた。


そう、孤児院へ着いたのだった。理由は、そうあのためだ。


「エド!帰って来てくれたの!緊急警報が鳴り響いているけど、大丈夫なの?」


「メリーさん、今はゆっくり話してられないんだ。とりあえず、今すぐに危険な状況にはならないから安心して!とりあえず、子供達と孤児院で待機していてくれ。それが一番安全だから。」


「分かったわ。良い皆んな、決して外には出ちゃダメよ。大きい子が小さい子の面倒を見て頂戴。」


「「「はーい(うん)。」」」


メリーさんが孤児たちに指示を出して、皆を落ち着かせる。


そして、分身の俺はというと、シドと向き合っていた。


「シド、今すぐ召喚を解除してくれ!そうすれば、本体の俺は必ず何かしらの手を打つはずだ。まずは、アイスラン町がピンチの状況を伝えないと!」


分身の俺では、間近に居ようが召喚獣を自由に出し入れできない。分身スキルも使えない。そういう仕様なので仕方ない。


そのため、孤児院まで来て、直接シキへ指示を出したのだ。


シキは頷くと煙の様に姿を消した。

これが、シキの召喚が解けた理由だった。




この後、トリートを孤児院へ連れ帰って来て、町の状況を説明した。そうこうしている間に本体の俺が、孤児院へ到着。


俺は、孤児院に入って来た本体の俺に対して、混乱に乗じて悪さを働くヤツだと勘違いして殴り掛かったという訳だ。





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