第53話 決着


俺とブラックウルフ亜種との第二回戦が始まった。


相手は俺の言葉に反応して怒りを露わにしたいる。何って言っているか理解出来ないだろうが、侮辱されたと認識したようだ。


「ヴヴゥー」


牙が剥き出しになって威嚇してくる。



まずは小手調として、ファイアアロー5本を放つ。


ブラックウルフ亜種はその攻撃を容易く躱しながらこちらへ近づいてくる。俺の目の前まで来ると喉元目掛けて噛みついて来た。


「(結構速いな…。)」


俺は紙一重でその攻撃を躱す。と同時にブラックウルフ亜種の首元目掛けて剣を下から上に振り上げた。


ブラックウルフ亜種は、その攻撃を躱すが…毛が数本切れてパラパラと落ちる。毛が地面へ着くまでの一瞬の間に、ブラックウルフ亜種は体制を整えて左右の爪で攻撃をしてくる。


俺も剣で爪の攻撃を弾く。互いに十数手の攻撃を交わした後に距離を取った。


「(思ったよりもやるな。まだ、あっちも余裕がありそうだ。)」


少し本気を出すか!


俺は先程以上の力を発揮して、ブラックウルフ亜種に向かって行く。剣を振るスピードも先程よりも3割程速い。


ブラックウルフ亜種は俺の剣をギリギリで躱すが、蹴りに反応出来ずに腹に受けてしまう。


そこから、打撃を織り交ぜた俺の攻撃は、ブラックウルフ亜種に面白い様にヒットする。


ただ、ブラックウルフ亜種は致命傷となるであろう剣攻撃を確実に躱して、打撃だけをくらっている。俺の攻撃をまだ冷静に対処しているようだ。ヤツの目が死んでいない。


「(流石、亜種ってところか。だが、そろそろ終わりにするかな……。)」


俺はを出して、トドメを刺しに動く。


俺の剣が更に早くなり、ブラックウルフ亜種の首筋目掛けて向かって行く……。


が、その時、ブラックウルフ亜種の体から陽炎な蒸気が発生し体が少し揺らいだ。ブラックウルフ亜種の姿が目の前から消える。


嫌な予感がして直ぐに後ろへ飛び退くと俺の胸に痛みが走る。ヤツの爪痕が薄らと残って血が出ていた。


「(これはかなり速いな…。)」


ブラックウルフ亜種は『今度はこちらの番だ』と言っているかのように嫌な笑い顔を浮かべ、こちらを見下している。


そして、そこから見えないブラックウルフ亜種の怒涛の攻撃が始まった。


俺はブラックウルフ亜種の攻撃を何とか致命傷を受けずにさばくので精一杯だった。


時間が経つにつれて次々と俺の体に生傷が付いて行く。回復も同時にしながら戦っているが、ダメージ量が回復量を上回っている…。


このままじゃマズイな……。


俺は地面へ向けて右手を掲げて、ファイアボールを2発放つ。大爆発とともに砂埃がそこら中に舞い散った。そのスキに俺はブラックウルフ亜種から距離を取った。




そして、現状を打破するために細かな事は考えず、分身をすべて消し去った。その瞬間、力が湧いて来るのがわかった。


「ふふふふぅ。」


俺は更にもう一段階ギアを上げたのだった。



土埃が舞い散る中からブラックウルフ亜種が飛び出て来るのを目視できた。そして、俺はヤツに並走するように移動する、と簡単にできてしまった。


先程まで全然捉えられなかったブラックウルフ亜種の動きを簡単に捉えられた。左の拳でヤツを殴る、蹴りを入れる。次々と面白いように攻撃が決まる。


また、攻守が逆転してしまった。


一方的だった。俺が自分の強さに余裕を見せて少し油断したスキに最後の足掻きとヤツが動いた。


ブラックウルフ亜種は、大きく息を吸い込み、その息を吐き出すと黒いエネルギー波を近距離から吐き出した。


「っっな!…って。」


この攻撃はすでに一度見ていたので、予備動作の段階で予想はついていた。俺はエネルギー波を難なく躱して、ブラックウルフ亜種の首を刎ねた。


これにて討伐完了だ。


そして、リーダーと化していたブラックウルフ亜種の死がスタンピード全体に広がると、モード町近郊で発生したスタンピードは、解散した。



それと時間を同じくして、北のダンジョンから発生したスタンピードも解散したのだった。


「何か関連性が………って、まあ俺が考えることでもないか。」


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