第18話 戦闘訓練
転生33日目の昼前。
俺は冒険者ギルドにいる。
何故かと言うと、『忘却の騎士』の身分証が欲しく、冒険者登録を行うためだ。
俺は『忘却の騎士』が背負っているショルダー式の鞄の中にいる。冒険者ギルドに姿を見せたく無いので、苦肉の策だ。
『忘却の騎士』を受付まで進めさせる。俺は鞄に穴を開けて外を見ている。これで、『忘却の騎士』へ指示が出せる。
受付嬢が近寄ってくる。
「いらっしゃいませ。お見掛けしないですが、アイスラン町は初めてですか?」
「・・・(コクリ)。」
「冒険者カードをご提示下さい。」
「・・・(顔を横に振る、フリフリ。)」
受付嬢は、戸惑っている。
「冒険者カードの紛失ということでしょうか?」
「・・・(顔を横に振る、フリフリ。)」
『忘却の騎士』が懐から紙を出して受付嬢へ渡す。すると、「っえ!」っと声を出して、そのまま手続きを進めた。
「冒険者登録ですね・・・分かりました。手数料として銀貨1枚いただきますがよろしいでしょうか?」
「・・・(コクリ)。」
銀貨1枚を受付嬢へ渡す。暫くすると、受付嬢が新規の冒険者カードを持って戻ってきた。
「これがシキさんの冒険者カードです。冒険者ギルドの規則を簡単に説明しましょうか?」
「・・・(顔を横に振る、フリフリ。)」
受付嬢はちょっとホッとした表情をしている。無言の大男の相手など気味悪くてしたくないのだろう。
「また、何かありましたらお越しください。」
変なイベントが発生しなくて良かった。人が居ない時間帯を狙って来てよかった。
そのまま下級冒険者が通う東の森へ向かっていく。必然的に俺も一緒に東の森へ行くことになる。この辺りになると、ゴブリンが出てくる。
ラノベでゴブリンと言えば雑魚扱いだが、決して雑魚では無い。
人型のモンスターで低いが知能もある。力は一般の人間よりは強く。武器を使って攻撃をしてくる。普通に考えても人間より厄介だ。
更にゴブリンは普段、数人単位で行動しており、1人で行動することは稀である。最も厄介なのが、集団で襲って来る場合だ。
この世界で最も村を破壊させた割合が多いのがゴブリンの集団と言われている。ゴブリンは自分たちでも増えるが、他種族の雌と交尾を行い増える。
なお、凄まじいのはその繁殖能力の高さだ。子供が宿ると、僅か20日ほどで出産へ至る。そして、その子供は約30日ほどで成人となり繁殖行動が可能となる。雌さえいれば、爆発的に増えるのである。
俺は鞄から出ると、まずは身体強化スキルの効果確認である。
ファイアボール6発+ファイアアロー4発。岩の重量上げ90kgは余裕、130kgが限界。垂直跳びは120cm。
3日前と比べて、魔力量は変わってないようだが、身体強化スキルの能力が上がっていた。強敵と戦って死の淵から回復したので、ちょっとスキルが強化されたのだろう。(勝手な憶測だが実は当たっていた。)
そして、今日からは人型モンスターであるゴブリンとの戦闘訓練に入る。
この前みたいに盗賊と戦闘や冒険者とのイザコザなどが今後増えて来るだろうとの想定の基だ。
<奇襲①魔法編>
目の前には3匹のゴブリンが何やらラビットを巡って言い争いをしているようだった。それぞれ、剣、槍、棍棒を持っている。
まずは、魔法から試してみる。ファイアアローを同時に3本放つ。1匹は頭を貫き1発で仕留め、残りは背中と肩に突き刺さって藻搔いている。
ファイアボールを2発放つ。それぞれのゴブリンに直撃すると、直撃部位が30cmほど吹き飛び絶命した。
結果、楽勝で呆気なかった。
<奇襲②接近戦編>
今度はゴブリンが4匹相手だ。前の状況と類似している。獲物に群がって捕食している状況だ。ターゲットが何か気を取られている状況を想定。
投げようナイフ2本を抜き、左右の手でそれをゴブリンの足へ目掛けて投げつける。
グサ。グサ。
「「ギギィィギーー。」」
ゴブリン2匹は足にナイフが直撃し、尻もちを付いて藻搔いている。それと同時に俺はショートソードを抜いて転げ回っているゴブリン2匹の首を跳ねていく。
残りのゴブリン2匹は状況が飲み込めて居ないのかゆっくりと周りを見渡すと、仲間が首を跳ねられているのが目に飛び込む。ゴブリンは武器を拾い、慌てて俺の方へ向きかえる。
だが、既にゴブリン2匹は俺の間合いに入っており、次の瞬間に俺によって切り捨てられた。
結果、ゴブリンの反応が遅すぎて楽勝だった。
<対面①魔法編>
20m先には、3匹のゴブリンがいる。勿論、相手はこっちに気づいており、臨戦体制だ。
ゴブリン達は3人同時にこちらへ向かって襲いかかってきた。俺はファイアボールを2つゴブリンたちへ放つ。1つはゴブリンの頭を吹き飛ばす、もう1つは腹へ命中し、直径30cmほどの穴を開ける。どちらも、倒れて動かなくなった。
残りのゴブリンへ狙いを付けてファイアボールを放つと、狙い通りに頭へ命中した。ゴブリンはバタリと倒れて動かなくなった。
結果、向かってくるので楽勝だった。
<対面②近接戦編>
10m先に3匹のゴブリンがいる。これまた、相手は俺を認識しており、各自武器を持って襲いかかってくる。襲いかかってくるのは、どのゴブリンも基本一緒だ。
垂直跳び120cmの脚力だ。常人の2〜3倍で、俺からもゴブリンとの間合いを詰める。先頭のゴブリンが剣を振り下ろす間に首を跳ねる。2番目のゴブリンの棍棒が俺の目の前まで迫ってくる。
が、その棍棒を紙一重で躱して、胴体を真っ二つにする。肉と骨を断つ時にショートソードへその重みが掛かるが、楽々と振り抜く事ができた。
最後のゴブリンは勢いを殺し身構える。左手に銅の盾を装備し、右手には俺と同じショートソードだ。
俺は、投げナイフをゴブリンの太腿目掛けて投げつける。勢い良く飛んでいくナイフが、ゴブリンの太腿に深く突き刺さる。大きく出来たその隙きに一瞬で間合いを詰めて、前屈みに足を抱えているゴブリンを一刀両断した。
結論、3匹程度なら楽勝だった。
この日俺は、ゴブリンを数十匹というほど狩りまくった。何と討伐部位の右耳を数えただけで合計27匹だった。頭を吹き飛ばして、討伐部位を回収出来なかったゴブリンもいるので、倒した数はそれ以上だ。
『忘却の騎士』は、タンクさんへ売却するようにウルフを5匹倒している。もっと倒す時間はあったが、倒し過ぎても持ち帰れない。適度に狩っておく。
ゴブリンは、この世界では害虫なので、絶滅してくれた方が良い存在だ。害でしか無いので、いくら倒してもOKだ。俺の認識ではそうなっている。
夕方近くなったので、俺と『忘却の騎士』は、アイスラン町へ向かって帰るのだった。
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