成長編

第4話 二重スキル


「まずは、どうするかなぁー。」


本当に転生何てことになってしまい正直戸惑っている。転生者はラノベだとチートスキルとかを持ってるはず?なんだが・・・そんな神様と遭うようなイベント無かったし。


「ステータス画面。ステータスオープン。表示。キャラ設定。スキル。スキル表示。鑑定。サーチ。調べる。・・・・・・・。」


数十分・・・一心不乱に考えられる言葉を叫んだが、全く何も起こらなかった。変化といえば、ちょっと喉が乾いたくらいだ。



ってことだが、チートスキルを得ていない転生者なんて、どうやって生きて行けば良いんだ?転生早々に詰んだ感じか・・・。


あと考えられる定番は、科学の力を生かして、この世界で一儲け?とかだな。ただ、残念なことにその手の知識があまり無い。


各機器・装置の構造などは、イメージが付くが、肝となるような心臓部の構造は・・・試行錯誤が必要そうだし、金も伝手も無い今は無理だ。


力が無いのにそんな知識を誰かに知られたら、捕まって奴隷にされて死ぬまでこき使われそうだし・・・時期尚早だな。




エドの記憶を振り返ると、俺はエドだから、召喚スキルが使えるはずだ。まず、やることは、協会で召喚獣ガチャ引きだな。


今は『忘却の騎士』が召喚出来ない。回数的な要素は無いと考えると、召喚獣がダメージを受けていて回復するまで使用不可って感じかな。


後は、これからの生活を支えるために収入源の確保だ。それと衣食住の確保だよな。最悪、エドには悪いがを頼るってことも頭の隅に置いておく。


エドだったら、絶対に生まれ育った貧しい孤児院に負担を掛けるような選択はしないだろうな。まあ、そこは使えるものは何でも使って生きてやるさ。第2の人生なのに、スキルがありモンスターとかいる世界に送り込まれるなんでハードモードだよ。



あと、気をつける事は、やっぱりエドが生きていることが、ホタン達に知られるとマズイよな・・・。


態々【グリフォンの翼】のクソヤロー共がエドが死亡したなんて言いふらして無いだろうが。


だからといって、冒険者ギルドへ顔を出したら、何処からかアイツラにエドが生きてるってことが知られる可能性がある。そうなったら、勝ち目が無く今度こそ殺され兼ねない。一度エドを殺しているのだから、もう躊躇しないだろう。


ってなると、早々に旅の準備を整えて、拠点をアイスラン町から何処か他へ移し、そこで衣食住の確保って感じかな。それだと、次の居住する候補地も決めなくちゃいけないな。



それで、直近のやる事をまとめると。


①召喚獣ガチャ

②収入源の確保

③衣食住の確保

④目立たず旅路の準備

⑤拠点先の候補地調査




やることが大体まとまったので、今までに無いくらい慎重に周囲を警戒しながら、西の森からエドの記憶を元にアイスラン町へ戻った。


正直、かなりビビりながらゆっくり移動したが、モンスターに出会う事は無かった。かなりラッキーだった。


(実は、ホタン達が数十分前に通った道だったため、モンスターは排除され居ないだけだった。思わぬところでホタン達に助けられた形となった。)




アイスラン町に着くとフードを被ってそのまま目立たないように協会を目指した。エドの記憶があるのが大きい。これによって、この世界の最低限の知識は手に入った。


ただ、これが転生のチートボーナスだったらがっかりだ。チートでも何でもない。これで、他の異世界人達と同じ基準に立っただけだ。


いや、遠藤晴彦である俺の現代知識は、チートだな・・・でも、それだけだったら無双やハーレムなど定番の展開を選択すら出来ないので悲しい。


そうこう考えているうちに俺は協会に入り教壇の前で召喚獣ガチャを引くために祈りを捧げた。


映画のワンシーン見たく両膝をついて両手を合わせて目を瞑っている。


「神様・・・転生チートスキルが駄目なら、俺が生きて聞く力を下さいよ。お願いします。」


その時、俺の祈りが神様へ届いたのか・・・


『憑依スキルを取得しました。』


『召喚獣は後12日後に獲得できます。』


『召喚獣『忘却の騎士』の傷が回復しました。召喚が可能です。』


「っぉお!!何か色々と聞こえてきたぞ!憑依スキルって何だ?あと、召喚獣の傷が回復したのか。ゲームみたいに協会で手に入れたから協会で傷を回復できるのか。」


エドの知識でも知り得なかった事を色々と知ることができた。っと、デジャブだな。俺が声を出して独り言をいっていたので、周りからの視線が痛い・・・。


すぐさま片手で自分の口を押さえて、周りに謝罪のため頭を多少下げながら協会を後にした。




一度協会を出たが、ゆっくり且つ静かな場所で考える必要があり・・・・再度協会の中へ入るのだった。最後尾の隅の席に座り一息つく。


協会はそこへ用事が無ければほぼ人は訪れない。普通に神様への祈りを捧げるなどの場合、また、エドのように召喚獣ガチャを行う場合。この2通りが一般的である。間違っても冒険者なんかが訪れることは無い。


そのため、俺が静かに色々と考えるにはもってこいの場所であった。




所持金は、銀貨1枚だけだな・・・。カバンに入れてあった財布がなくなっているが、靴に非常時に備えて銀貨1枚だけ隠してあった。とりあえず、この金で今日の宿代と食事は何とかなる。


残り銅貨70枚ほどで、調味料と素材剥ぎ取り用のナイフと携帯食を可能な限り確保する。そして、資金稼ぎは、エドと同じように西の森で薬草採取と新規にモンスターの素材販売をおこなおう。


生き物の解体なんてやったこと無いが、エドの記憶があり、やり方は知っている。俺の気力が持つかどうかがポイントだな。


「・・・やっていけるかな。」


協会の中でボソリと言葉を溢してしまった。最悪、そのままモンスターを持ち込む手もあるが、大量に持って歩くと目立つだろうな・・・。



薬草と剥ぎ取った素材を売る店は大体目処を付けてある。冒険者ギルドは目立つので、少し安くなるが、そこら辺の商店を回って小分けにして売るのがベストだろう。


もしくは、薬草なら製薬ギルドへ直持ち込むのもありだな。まあ、その辺りの判断は様子を見ながら決めれば良いか。




あと、一番気になっているのが、憑依スキルである。しかし、流石にここで実験する訳にはいかないので、後回しだな・・・。


ってことで、大体整理出来たな。


①召喚獣ガチャ ⇒12日後

②収入源 ⇒目処立った

③衣食住 ⇒目処立った

④旅路の準備 ⇒目処立った

⑤拠点先の候補地調査 ⇒未達成

⑥憑依スキル ⇒未達成



腹も減ったので、今まで通っていた店舗周辺へは顔を出さずに違う方面へ向けて足を進めるのであった。








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