第59話 絶望と悲しみ 第二章終わり
祥吾たち勇者が旅立ってから2週間が過ぎた。
旅に出た祥吾たちは城塞都市ギルガムに向っていた。
ギルガムは四方を大きな塀に囲まれた城塞都市だ。
そして、その入り口には巨大なミスリルゴーレムが2体居て警護している。
此処を拠点にしてレベル上げをしていくそう言う予定だった。
祥吾たちがギルガムに着いた時、明かに異変があった。
本来なら年に入るまで検閲の為行列が出来ている筈だが、それが無い。
しかも、ミスリルゴーレムが破壊されていた。
「何があったんだ...」
大魔導士隊の一人が言った。
どう見てもそこはゴーストタウンにしか見えなかった。
ここは王都に次ぐ巨大都市、こんな静かな訳は無い。
恐る恐る中に入り進んでいった。
すると街は破壊され尽くされていた。
「おい、これがギルガムだって言うのかは? どうみても誰も住んで無いぞ」
「私にもそう見えるわ」
城塞都市の門が閉まった。
「ようこそ勇者殿、我は魔族四天王の一人、マーモンがお相手いたそう、我とお前ではハンデがある、全員で掛かって来るが良い」
「勇者様が出る事はない、我ら魔導士隊6名がお相手いたそう」
「ならば準備が出来たら掛かって来るが良い」
6名が杖を取り出し、六芒星の方向に距離をとる。
この距離からの遠距離攻撃、相手が1人であれば確実の葬り去れる彼らの自慢の戦法だ。
「成程、距離をとったか?」
「行くぞ、炎で纏めるぞ」
「「「「「了解」」」」」
「「「「「「灼熱地獄炎」」」」」」
6人全員で一つの魔法を放つ、彼等最大の魔法。
オーガ亜種ですら消し炭になる...最強呪文...
「人間にしては、確かに凄いな、悪魔神官クラスって事か? それではこちらから行くぞ」
マーモンが動いた。
身長は2m50位、まるで巌の様に鍛えられた体なのに風の様に走り出した。
もし時間を計れば僅か数秒...
一番最初にマーモンの手が頭に触れた者はそのまま、頭が千切れるように体が飛んでいった。
マーモンの蹴りが当たった者はそのまま胴体が真っ二つに千切れて別れて明後日に飛んでいった。
「こんな物か実に詰まらない」
そう言うとマーモンは手を無造作に振り回した。
残り四人はその手に触れた瞬間...あたった部分から先が引き千切れるように飛び散った。
ビチャ、ビチャ、ビチャーーーツ
一番近い表現は、木刀で豆腐を殴った、だから簡単に壊れた。
それが一番近いかも知れない。
一瞬で最強の魔導士部隊は肉片になってしまった。
それを見た、戦闘ヒーラー4人はホーリーの呪文を唱えて勇者である祥吾と剣聖である梓に結界を張った。
「さぁ勇者様、今です」
「祥吾ーーーっ」
意外にも動けない祥吾に対して梓は動けていた。
剣聖は切り込み隊長の役もある...もしかしたらジョブの恩恵もあったのかも知れない。
「斬鉄斬りーーーーっ」
鉄を斬る、剣聖の必殺技が決まる...だが。
「確かに鋼鉄なら斬れるかも知れぬ、だが我の体はオリハルコンより固いらしい...効かぬよ」
「そんなっ」
マーモンは梓の剣の柄を手ごと掴んだ、そしてそのまま振った。
それだけで梓の腕は肩の付け根から千切れて飛んでいった。
「ぎぁややややややややーーーーっ私の腕ーーっ」
「梓さまーーっ」
戦闘ヒーラーがハイヒールを掛ける。
もし手が近くにあれば繋ぐ事が出来たが、手ははるか遠くだ、命を救うには仕方ない事だった。
「邪魔だ」
そうマーモンは言うと二人の戦闘ヒーラーを蹴飛ばした。
その瞬間内臓が飛び出し、2人は絶命した。
梓は反撃しようとしたが...
「腕も、剣も無い..嘘っーーーっ、助けて祥吾っーーー」
此処でようやく祥吾が動き出した。
だが、遅かった、マーモンは軽く飛び上がるとそのまま梓の両足を踏んづけた。
その瞬間、梓の両足が膝から下が千切れた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁーーーっ、足、私の足ーーーーーーっ」
「本来、我は人肉は好まぬ、だが強者の肉は体に宿る、そういう考えが我が一族にはあった、お前にはその栄誉を与えよう」
そういうとマーモンは梓の足を片方とり、食べだした。
「あっあっ...私の足、返してーーっ、返してよ、足」
まるで動物園の白クマが肉を齧るように梓の足の肉を食べていたマーモンがその足を放り投げた。
片足だけでなく、両足共に肉が削り取られていた。
戦闘ヒーラーの一人が梓に駆け寄り、ハイヒールを掛けた。
「勇者より勇気を持つ者よ、敬意を払おう、楽に殺してやろう」
そう言うとヒーラーの首を持ちそのまま握りつぶし耳を千切って食べた。
「勇者様、早く、早く戦って下さい」
片手しかない梓を見て、祥吾はガタガタ震えていた。
「祥吾、祥吾ーーーっ助けてっ、助けてって言っているのよーーーーっ何しているの? 早くーーっ」
「勇者様っーー早く、ぐふっ」
飛んできた石で戦闘ヒーラーの頭が潰れた」
「最早、戦える者はお前しかいない、まだ震えているようだな、お前は勇者にあらず」
「助けてっ..助けて...」
片手しか動かない状態で梓は這いずりまわっていた」
「ふんっゴミが」
「ゴミだと? 俺は勇者だっーーーーっ」
「勇者だと? お前の様に弱い勇者は見たこと無いわ」
マーモンの腕が祥吾のお腹から生えていた。
祥吾の死体と梓を担ぎ上げるとマーモンは鎖で門の上に縛り上げ飾った。
「たす、助けて、助けてーーーっ」
「勇者や剣聖は世界に愛されているのだろう? ならば誰かがおろしに来るだろう...その為に生かしておいたのだ、最も俺が戦い足りないからだがなっ」
《水上さん、意地汚いって思ってごめんなさい》《平城さん逃げたって思ってごめんなさい》貴方達が正しかったよ...
鎖で吊るされながら梓は思った。
【第二章 終わり】
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