第78話 【最終話】日本の様な平和な世界を...

凄い高揚感に襲われた。


何でも出来るんじゃないか?


本当にそう思える、そしてそれは気持ちだけでなく、事実出来るんじゃないか、そう思う。


くくり姫が作ってくれた料理は何だったのかな?


凄い料理だった...


しかも神力が増しただけでなく、何故だかとんでもない知識まで流れ込んできた。


「くくり姫様、この料理はいったい何だったんですか?」


「私が愛情たっぷり込めた料理よ、ただそれだけよ」


「だけど、何故だか凄く力が漲っている気がする...今なら何でも出来そうな万能感があります」


「そう、それは良かったわ...だけどそれは恐らく貴方が魔族の神になったからね」


《料理の材料は...いう必要は無いわね》


「それって...」


「これは礼二がいけないのよ? 貴方が魔族も守っているみたいな事言うから、邪神から貴方に神を乗り換えたんじゃないかな?」


「神を乗り換える?」


「だって魔族からしたら仕方ないじゃない、人間が襲えないから生贄が出せないんだもん、苦肉の策ね」


「それで神になったら、何をすれば良いの?」


「さぁ、そのうち祈ってくるから、真摯に相談でも乗れば良いんじゃない?」


「そうか...そうだね」


「それでね、この世界の女神は私で、邪神は貴方、世界はもう二人の物だから結婚しない?」


「え~と、良いけど...」


「まぁ礼二は人間として面倒見なくちゃいけない子が居るのよね? だったらそうね...100年間は人間界で暮らすのを許してあげるわ、その後は此処で一緒に暮らそう?どうかな?」


確かにそれなら問題は無いな、三人も最後までしっかり面倒もみれるし、うん問題無い。


「うん、それなら...寧ろお願い致します」


「ありがとう、礼二」



くくり姫の行動は凄く早かった。


僕が答えたら直ぐに【神託】で全世界に婚約の事を伝えた。


しかも魔族に対しても正式に僕が邪神を引き継ぐ事まで添えて。


二人で世界を治めていくと言う事は、今迄は一神教と言いながら、実質は魔族は邪神、人類は女神と別れていたがこれからは信仰の全てが統一されて行く事になる。


「それじゃ、礼二またね」


「うん、また」


これで100年間もう会えないのかと思ったらそう言う事では無いらしい。


僕も神だから、何時でも会う事は可能だ。


簡単に言えば、人間の寿命分、自由をくれたそういう事だ。


嫌な言い方であれば本妻が期間限定で愛人を認めた様な物なのかも知れない。



神界から戻って来た。


活動場所を王国から聖教国に移し中央教会に引っ越す為の準備で大忙しだ。


此処にはもう、水上さんも平城さんも居ない。


彼女達は記憶を消して日本に戻す事にくくり姫と話し合い決まった。


ここでの記憶は辛い事ばかりだから、消してしまった方が良いに決まっている。


会うと別れが辛そうだから、きっとくくり姫が気を回して送還してくれたのだと思う。



僕は、三浦さん、湯浅さん、東郷さんを部屋に集めた。


「礼二さん久しぶりです」


「礼二様、忙しいのは解りますが、もう少しお時間を下さると嬉しいです」


「今日は、どうしたのかな? 二人きりじゃ無いんだね」



三人を集めたののは理由がある。


邪神の力を手に入れた僕は今迄出来ない事も出来る筈だ。


手足を生やせる様な神は意外な事に居なかったが...不思議な事に悪魔や邪な存在には居た。


手足を人間に売りつける悪魔や無理やり足をつける婆さん。


その根源んたる邪神に自分より身分が遙かに劣る者が出来る事が出来ない事は無いと思った。


「ちょっと恥ずかしい思いをさせるけど、ごめんね」


「礼二さん、まさか、4人でしようって言うんですか、ちょっと恥ずかしいです、抵抗はあります...ですが、したいなら仕方ありません」


「礼二様、あのぉ凄く恥ずかしい...解りました、ただ凄く本当に恥ずかしいんで目を目を瞑らせて下さい」


「流石にこんな経験は無いけど? 4人ってどうすれば良いのかな...本当にわかんないから教えてくれる」


僕は三人の義手や義足を外して下着姿にした。


そのまま三人を見ながら、彼女達の腕や足をひとりずつイメージする。


「礼二さん、このまま放置はハァハァ...寂しいんですけど」


「あの、これは放置プレイなんですか? ああん、どうすれば良いんですか」


「この状態でおねだりすれば良いのかな? ハァハァ..ちょうだい...」



頭の中がピンクになるのを我慢して集中しなくちゃ《大丈夫、僕は出来る子なんだから》、暫くイメージを実体化。


そうすると、女性の手足が空中から落ちて来た。


此処までは成功したようだ。


しかし、もう少しスムーズに手足を生やすとか出来ないのか?


漫画の中の某天使長は簡単に手足を生やしていたのに...



落ちて来た手足を、どれが誰の分か整理して4本づつ組み合わせる。


肌の色や長さはどうしても僕のイメージだから少し違うけど仕方ない。


一応、当人に聞かなくちゃいけない。


「手足...いるか! ごめん、何か嫌な言い方だけど、態々聞かないといけないみたい...ちゃんと答えてね」



「礼二さん、ありがとうございます、下さい」


「礼二様、要ります」


「まさか、本当に、また手足が元に戻るの、ありがとう」



「だけど、一瞬で済むからごめんね...許して」


「「「えっ」」」


出現した腕や足は根元から、だから残った部分を一回全部千切って切断面を綺麗にしなくちゃならない。



「まずは、三浦さんから、はい」


「あの、礼二さん...何で手を...うんぐっ」


「これから僕は凄く痛い思いをさせるからね、痛かったら遠慮なく噛んで、嫌な事も思い出すかも知れないしね」


「うぐっ」


僕は草薙の剣を使い腕と足の残った部分を切除した、もう一度斬られるのだから痛いと思う。


元は悪魔の儀式だから仕方ない...多分手足を失った事も思い出すかも知れないし、痛さも凄いと思う。


だから、少しでも僕も痛みを味わう為に手を差し出した。


「うぐうううううっあむっ」


彼女は優しい、噛まない様に口に力を入れない様にしている。


そのまま、新しい4本の手足を片手で繋いでいったら黒い靄の様な物が出てきて繋がった様だ。


「終わったよ...暫く休んでいてね」


「ハァハァハァ...はい...」



「それじゃ湯浅さん」


「私は手は噛まないよ...血が滲んでいるから、私の為にしてくれるのに礼二様の体を傷つけるなんて出来ないから」


「解った」


「ううううっーーーん」


歯を食いしばって必死に耐えている。


同じ様に草薙の剣で残った手足の部分を切断して新しい手足を繋いだ。


三浦さんで慣れたせいか、案外素早く済ます事が出来た。


「良く頑張ったね」


「有難うございます、礼二様....ほんとうにありがとう」



「それじゃ東郷さん」


「私は、そうだキスが良いや..はいうぐっ」


何だか、東郷さんらしい。


そのままキスをしながら、両手で東郷さんの片手と両足を切断、手が無い部分も傷をつけ、新しい手足を繋いだ。


「ぷはっ、終わったよ」


「ううん、もう終わり...ハァハァ」



しかし、この部屋見た感じスプラッタだな....手足の肉片に血だらけの下着姿の少女。


まるで惨劇の後みたいだな。



「礼二さん、この手足...まるで夢みたいです、有難うございます」


「礼二様、ありがとう」


「まさか、もう一度五体満足になれるなんて、思わなかった...ありがとう」



「うっ、どう致しまして!」


何だろう、何だか随分悩ましい感じで、まるで猫みたいな感じに三人がにじり寄ってきた。


「あの、今迄は手足がないからして貰ってばかりだったけど、今日からは私からしてあげるね」


「今迄して頂いた分、今度は私が奉仕してあげますね」


「そうね、他のお世話もしてあげるね」



結局押し倒されて、この日は今迄とは逆に三人から、思う存分されてしまった。


多分、今迄は手足が不自由だった為に出来なかった事が出来るのが嬉しいのか、信じられない程の事をされてしまった。


今迄は僕がしてあげていた事を逆に彼女達がしてくれる。


自分が何もしない...そういう事は今迄無かった、だけど、これは凄い。


自分の上に女の子が跨り腰を振るうなんて...まるでAVの様だ。


そのまま流されて気がついたら夕方になっていた。


「う~ん凄く満足、手足があるってこんなにも違うんだね」


「これからは私からもさせて貰うわね」


「う~ん本当に最高」


自分の存在意義が解る、自分の中に存在するくくり姫から貰った力のせいかもしれない。


三人の笑顔が、本当に幸せなのが良く解った。



「手足が戻ったからって日本に返すのは止めて下さいね」


「もう私にとって礼二様は家族なんて比べ物にならない存在なんですからね」


「そうだよ、まぁ私にとって向こうは禄でも無い世界だからこのまま宜しくね」



くくり姫から話も聞いているし、自分を本気で好きな人間と別れる必要は無い。


ただ、それが自分の体のせいだと思うと...少し悲しい。


「解ったよ、そんな事しないと約束する」


「「「ありがとう」」」



しかし、良かった、彼女達の手足を治してあげる事が出来て...


多分、これは今限定の僕の能力だ。


この世界の邪神であっても、世界が日本に括られたら、くくり姫の様な日本の神になる様な気がする。


魔族が信仰した【礼二の尊】はくくり姫が括った事に対する感謝によるところが多い。


そう考えたらいずれ、邪神の力も変っていく可能性が高い。


イシュタスにできてくくり姫には出来ない事も多い事から、解らないが信仰によって能力は変わってしまう可能性が高い。


だから、この能力は今だけかも知れない。


だから万が一に備えて、直ぐにする必要があった。




そして、問題なのが、これからの100年だ。


くくり姫が100年経ったら僕と結婚する事を神託で伝えた時に他にも伝えた事がある。


この100年間は人としても僕が生活すると言う事を伝え、そしてその期間に限り《人としての恋愛、婚姻をくくり姫が許す》という事だった。


これは恐らく、サナや三浦さんや湯浅さん、東郷さんが僕と付き合っている事で迫害されない為なのかも知れない。


だが、このせいで...



「神:礼二の尊様、私の孫は嫁に如何ですかな?信仰深く凄く可愛い娘です、沢山の貴族からも婚姻の申し込みがありましたが、全て断っております」



「お久しぶりですね、神:礼二様、マリンです、最早王女ではありませんが、良かったら娶って貰えませんか?」



こんな感じに沢山の婚姻話しが持ち上がってしまった。



正直言えばもう今の三人で充分だ、確かに僕にはSEXの神力があり幾らでも相手は出来る。


しかも、くくり姫の話では【抱いてしまえばどんな女性も好きになって貰える】だが逆を返せば、抱いてしまったら最後別れる事は無い。


だからこそ慎重にしなければならない、しかも時間は有限、一度そういう行為に嵌るとかなりの時間を使ってしまう。


沢山の嫁を貰ったら、多分他の事が出来なくなってしまう。


凄く残念だがこれ以上増やす事は保留だ。





【魔王.魔族SIDE】


成程、神になったからこういう事になるのか?


祈りが届き力が貰える、そのおかげで三人を救う事が出来た、その代わりこう言う事にもなるんだ。


呼びかけに答えたらこの場所に来てしまった。


「見知らぬ神殿だ」


多分これが顕現という事なのだろう。


「神:レージ様、顕現して下さるなんて、至極の極みです」


魔王が居て、四天王が居る。


そしてその前で杖を持ち祈っているのが恐らく神官なのだろう。


神なのだから威厳を持たなければならない。


「そうだね、それで何か問題が起きた?、私は神になって間もない、何かあれば聞かせて欲しい」


「はい、神:礼二様は我々に何を望みますか?」


どういう事だ...


「特に何も望まないな、しいて言うならただ拝んでくれればそれで良い」


「あの、生贄とか望まないのでしょうか?」


「特には必要ない、逆に魔族は私に何を望むのでしょうか?」



「我々の望みですか?」


「そうだ、神を祀る以上は何か願いがあるんじゃないか?」


「魔族の願いと言うならば、人間の様な生活を送りたい、そういう希望は長年ありますが...」



「何故」


「人間は明るく光の中で生き、我ら魔族は暗い闇の中で生きる、それが納得できないから我々は...」


「人を嫌っていると...」


「我らとて人間の様に生きたい、それが敵わぬから闇に生きているのだ」


待てよ...今迄は邪神と女神が争う世界だった。


だが、くくり姫と僕は仲が良い。


そして、この世界は日本化が進んでいる。


日本には魔物や魔王は居ない...妖怪等は居るのかも知れないが、僕は見たことが無い...


それじゃ...もし魔族を【括ったら】どうなるのか。


今の僕は魔族の神だ、もしかしたら魔族の希望を叶える事が出来るのでは無いか?


「魔王よ、ならば人間になってみたらどうだ、但し人間は寿命が短い、貴方が知らない苦労もある、それでも憧れるのか?」


「それは我々が人間に成れる、そう言う事でしょうか?」


「解らない、だがもし望むならやってみようと思う...だが成功するかどうか解らない、もしかしたら犠牲がでて終わりかもしれない」


「ならば是非」


「魔王のお前が犠牲に成ってどうする? そう言うのは俺の仕事だ」


「マーモン、お前」


「俺は神:レージに牙をむいた男だ、だから此処で罪を精算したい」


信仰が僕に向っているからか【括りますか】その表示が出ている。


だが、括った後の事が解らない...もし妖怪にでもなったらどうして良いか解らない...


まさか、魔王を括ったらぬらりひょんにでもなったら困る。



「マーモン、これは賭けだ、それでも良いのか?」


「俺は、神:レージを信じている、死のうが文句は言わない」


「解った」



【マーモンを括りますか】


【括る】



「体が熱い..何だこれは」


上手く言った様だ...人間になるとこうなるのか? 騎士団団長の様な感じの姿だ。


「成功したようだ」


「まさか、本当に人間になるとは」


「これで大丈夫なようですね...ただ、人になると言う事は人の理に縛られる」


恐らく人間になってしまったら、お互いに傷つける事も可能だ。


ならば、人間の世界から【常識人】を連れてきて世の中の事を教えなくてはならない。



「今直ぐ、人間にする事は可能だが...人は魔物と違う、その常識を覚えるまで此処から出ないで欲しい、それは守って欲しい」



結局、全ての魔族を人間にしてしまった。


ちなみに、魔族だけでなく魔物も人型の物は括れた、人型で無い者は日本にいる一番近い生物になった。


ここ魔国にロマーニやシスター達に在住してもらい、人の常識を数年に渡り教えて人の社会の常識を覚えたら各国に自由に出かけて良いと許可を出す事にした。



そして、数年がたった。


今では魔族はすっかり人間に溶け込み、普通の人間として暮らしている。


まぁ元魔族というだけで、全員が最早人間だ。


世界はドンドン日本化が進んで行く、今もし日本人がこの世界に来て見たとしたら、タイムスリップして過去に行ったか、並行した世界に迷いいこんだとしか思わないだろう。



まだスマホは無いけど黒電話はいつの間にか普及していた。


テレビは無いけどラジオはいつの間にか出来ていた...まぁ放送局がまだ1つしかないが。


まだ5階建ての建物までしかないが団地の様な建物が出来て来た。


僕が、くくり姫と暮らすまでの100年で何処まで日本化が進むのか楽しみだ


まぁ僕には永遠の時間がある。


いつかこの世界に大きな遊園地や東京タワーや高層ビルが出来るのが楽しみだ。


もう魔族も全員括ったから僕の仕事は殆ど無い。


この日本の様な異世界で楽しみながら生きて行こうと思う。


「礼二」


「礼二さん」


「礼二様」


「礼二さん」



今日も平和で楽しい【日本】に括られた日々が始まる。



異世界に胸を弾ませるのも良い。


勇者に憧れるのも良いかも知れない...だが文明の遅れた世界。


人身売買が行われる様な世界には想像もつかない恐怖で満ちている。



少なくとも僕は...そんな世界より日本の方が、安全で暮らしやすいと思う。



だから、僕は くくり姫と共にこの世界を日本の様に平和な世界にして行く。


それが神になった僕の目標だ。



                               【FIN】



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