【石のやっさん 旧作】どうしても女神様からジョブもチートも貰えない僕は、他の女神様の計らいで平穏に過ごします、魔王? 勇者? あははっ僕には無関係ですね!
石のやっさん
第1話 貰いたくても貰えない...
僕たちはいつもの様に授業を受けていた。
どこにでもある何時もの光景。
この学校は進学校ではない、かといって不良校でもない。
皆んなは、普通に授業を静かに受けている。
そして、授業が終わり昼休みがきた。
仲の良い者同士が集まって昼飯を食って、その後は仲の良い者同士で集まって楽しそうに話をしている。
僕はというと弁当を急いで食べると、教科書を枕に寝ていた。
別に虐めにあっている訳でもない。
仲間外れにあっている訳でも無い。
みんなは僕の事情を知っているので放って置いてくれているだけだ。
「なぁ、黒木が寝ているぜ、静かにしてやろうよ」
「黒木君、大変だもんね...あっちにいこうよ」
そう、あくまで僕の睡眠を妨げないようにしてくれているだけだ。
何故、そうしてくれているのか?
それは、僕が苦学生だからだ。
僕の両親は、災害で死んだ。
幸いな事に、田舎の祖父母に引き取って貰えたけど、このご時世、普通の老人は暮らすので精一杯だ。
二人は優しく僕に接してくれる...だがお金の余裕は無い。
「「お金の事は心配しなくて良いぞ(のよ)」」
そうは言ってくれるけど、家計が苦しいのは解りきった事だ。
年金暮らしできついのに高校に行かせてくれる。
そして、足りないお金を稼ぐためにバイトやパートをしている祖父母。
少しでもお金を稼いで楽をさせてあげたい。
だから、僕は高校に通いながら働く事にした。
僕は「高校を辞めて働く」と言ったが、祖父に怒られた。
そして「働くのは良いが、高校は卒業しなさい」そう祖母に言われ今に到る。
最初は皆が僕に話し掛けてくれていたし、遊びにも誘ってくれていた。
だが、僕の事情が解ると、今の様になった。
みんなは僕に優しい。
僕が放課後、倉庫整理の夜勤で働いている事を知った結果、勝手に担任とクラス委員が話して、僕は放課後に残らなくてはならない日直は免除された。
同じく、放課後に残る掃除当番も免除だ。
そして、僕が少しでも休めるようにうちのクラスの人間の多くは、休み時間なのに騒がない。
正直済まない気分で一杯だ。
だが、そう思う
多少体がきつくても義務である、日直や当番をしたかった。
義務を果たして普通の生活を送りたかった。
だれもが僕に優しい...その反面....
《皆んなから可哀想な子》そう思われているような気がして仕方が無い。
だから...僕は友人1人出来ずに孤独だと思うようになった。
そんな僕にも1人だけ友達? 友神?が居て密かな楽しみがある。
それは、この街から自転車で少しいった所にある、廃村の祠にお祈りする事だ。
此処の祠には「くくり姫」という神様が祭られていて、何故か僕には声が聞こえる。
姿はぼんやりとしか見えないが...恐らくは凄い綺麗な少女のような気がする。
僕に霊能力が無いのか...それとも他にお参りする人が居ないのか...時間は僅か数分。
それも耳を澄まさなければ聞こえない程の声で...片言の声が聞こえるだけだ...
「ありがとう」とか「きみは優しいね」とか...
まぁ幻覚や幻聴かも知れないけど...別に良い...だって僕には聞こえるのだから。
その日もいつものように教室で寝ていた。
昨日の倉庫整理は大物が多くて疲れた。
そのせいで熟睡していたようだ。
だがこの日はいつもと違っていた。
「黒木、起きろ」
「黒木くんで最後だから早く女神様の所にいって」
「えっ女神様? くくり姫! 何が...」
「黒木が寝ているときに異世界の召喚で呼ばれたんだ、そして今は異世界に行く前に女神様が異世界で生きる為のジョブとスキルをくれるって。」
「冗談は...」
僕は周りを見渡した。 白くて何もない空間のようだ。
嘘ではない、僕をだますためにこんな大掛かりな事はしないだろう。
「それじゃ、先に行くぞ、お前もジョブとスキルを貰ったら来いよ」
そういうと彼らは走っていってしまった。
どうやら、ジョブとスキルを貰った者から先に転移していくみたいだ。
僕は、女神様らしい女性のいる列に並んだ。
くくり姫じゃ無いよな...くくり姫が和の神様だとすると、此処の女神様は...洋風の神様だ。
次々にジョブとスキルを貰っていく中、いよいよ最後の僕の番がきた。
「貴方は異世界で生きる為にどんなジョブが欲しい?どんなスキルが欲しいのかしら...望みなさい...全ては叶えられませんが、この女神イシュタスが...」
頭の中にくくり姫の顔が浮かんだ...
くくり姫はきっと...この女神イシュタスより神格は下だと思う...まして異世界じゃ助けてくれないだろう。
だけど、あの神様の信者? 友達は僕しか居ない..
だから...うん、裏切れないよ...僕にとって唯一の友達で神様なんだから...
「あの、女神さま...どうしても異世界に行かなくてはなりませんか...何も要らないから返してくれませんか....」
「ごめんなさい...それは出来ないの...」
「何でですか?」
「異世界で魔王が現れ困っている、そしてその国の王族が勇者召喚をして君たちを呼ぼうとした...解る?」
「何となく小説とかで読んだ話に似ています」
「うん、同じような小説が最近はあるよね! まさにそれ! それで私は女神イシュタスって言うんだけど、そのまま行ってもただ死ぬだけだから、向こうで戦ったり暮らせるようにジョブとスキルをあげているのよ...」
「そうですか」
「だから、貴方も彼方で活躍出来るように...ジョブとスキルをあげるわ...望むなら勇者、賢者、剣聖 聖女 以外何でもなれるわ...さぁ望みなさい」
「あの、それじゃ..要りません」
「えーと要らないって言ったの?聞き違いよね?」
「要らないって言いました...」
「どうしてよ! 危ない世界なのよ? 能力も持たずに行ったら死ぬわよ!」
仕方ないじゃないか...くくり姫の寂しい顔が浮かぶんだから...
貴方は沢山の信者が居て...能力もあるだろうね...
だけど、くくり姫には僕だけしか居ない...
「僕は貴方からジョブもスキルも貰わない、どうしても、元の世界に戻すのは?難しいですか」
「この魔法はクラス全員に掛かっているから無理だわ...」
「そうですか...じゃぁ僕だけ何もない状態で送り込んで下さい」
「あの、どうしても、そうしろと言うのですか? 女神である私に貴方を見殺しにしろと!」
「良いですよ...僕が行かないと勇者が召喚できなくて国が困るんですよね? 僕が我慢すれば...それで助かるんでしょう?...行きますよ...ただどうしても僕は貴方から、何も受け取らない!」
「仕方ありません...そこ迄言うのなら...そうするしか無いでしょう...他に何も出来ませんが、死んだらその魂だけは元の世界に返します...約束します...だけど、何も与えないという事は言葉も通じない...それで良いのですね...死にますよ」
「それで結構です」
「そう、女神の祝福も要らない! 貴方は私の使徒じゃない...そういう事なのですよ? 良いのですね」
「死んだら元の世界に魂だけでも返してくれる...それで結構です」
「黒木、礼二...それでは異世界にお送りします」
こうしてクラスの最後の1人として僕は異世界へと転移した。
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