第35話 お風呂タイム 湯浅真理

お風呂から艶のある陽子ちゃんの声が聞こえてくる。


ベッドの上で寝ているけど...そうね、そうだよね、手も無い歩けない私達なんか《そう言う目的》以外で買う訳無いよね。


何度、舌を噛んで死のうと思ったか解らない。


だけど弱くて勇気の無い私には出来なかった。


恐らく、陽子ちゃんは自分だけならさっさとそうして自殺したと思う。


私の事を考えて陽子ちゃんは死ななかった、いや死ねなかったんだと思う。


あの子、は優しいからね。


私は、周りをキョロキョロ見回した。


シャワーとお湯の音がして、そこからは艶やかな陽子ちゃんの声がしてきている。



こんな体じゃ、もうこう生き方しか出来ない、生涯性奴隷として生きていくしかない。


檻の中で助けを求めた...多分幻想でも見たのかな、私が前の世界で読んでいた、アダルト小説の神様みたいな男の子が見えた気がした。


あんなのは幻想だよ、助けを求めて私が見た夢だ。


現実の男なんて虫以下、気持ち悪い生き物、もう誰にも触られたくない。


男なんて、男なんて、ゴミ、クズ、真面な奴なんて居ない。


ただ、ただ、女が抱きたいだけのクズだ。


「すん、すんぐすっ、ぐすっ」


多分、あそこで陽子ちゃんとしている男だってきっと気持ち悪い奴に違いないよね。


気分次第で自分が満足したいだけに女を抱いて、何回もされて擦れて血が出て痛いのに構わないで腰を振るゴミ。


そして、気分次第で暴力を振るって笑っているクズしか居ない...知っているわ...もう解ったから。


だけど...多分私達を買ってくれたのは...かなりましなクズだと思う。


少なくとも、お風呂に入れて貰えるようだし...まぁその分激しいんだと思うけど。


同じ女だから解るわ、あの声は酷い事はされていない、えーと喘ぎ声....酷い事されていない?


横であんな声上げていた陽子ちゃんは聞いた事も見たことも無い。


何かな...まぁどっちにしても、体目当てに女を買う、クズには違いないよね。


だけど、多分このクズは凄くましな部類なのかも知れない。


ちゃんとベッドに寝かせてくれるし、毛布迄掛けてくれているようだし。


そういえばキスされたような、まぁこんな肉便器奴隷にキスなんてしないわ。


そうあくまで性処理便器...苦い...薬草なのかな。


と言う事はキスは夢でなく、薬を飲ませてくれたの?


良いクズなのかな...私の人生はもう性処理便器確定、これはどうしようもない...なら少しでも環境の良い場所にいたい。


少なくともこのクズは、今迄のクズの中で一番良い。


媚びないと...


「すん、すんぐすっぐすっ」


媚びないと、泣いてちゃ駄目だ。


「すん、すんうぇーーっぐすっ、げええええええっ」


駄目だ、媚びないといけないのに吐いちゃった...不味い、不味い殴られる、怖い怖い怖い。



お湯の音が止まった。


不味い、どうにかしないと...食べていれば、食べてれば許して貰えるかな...私は吐いた物を舐め始めた。


大丈夫、前にも何回もした、はやく、はやく綺麗にしないと。



「そんな事しなくて良いよ、具合が悪かったんだよね、大丈夫」


聞き違いかな...バスタオルを巻いた陽子ちゃんをお姫様抱っこしたランディウス様みたいな男の子がいた。


幻覚? 自分に手が合ったらきっと目を擦っている。



「三浦さん、ちょっと待って、手際悪くてごめん、固いけどちょっと床に置くね」


「気にしないで下さい💛礼二様」


あれれ...嫌嫌じゃない、なんで陽子ちゃんメスみたいな顔してんの?



クズだと思ったのに、凄く綺麗、神の子ランディウス様が本当に存在していたら多分こんな感じだ。


多分、中身はクズの筈...あはははっ中身がクズでも器が良ければ、ましに思えるのね。



綺麗なクズはシーツを交換するとその上に陽子ちゃんを寝かして毛布を掛けていた。


「少し休んだ方が良いよ」


「はい💛 礼二様、真理ちゃん、この人は全然違うから安心して良いよ」



安心なんて出来ない、確かに容姿は良いけど中身は同じだ。


ただ女が抱きたいだけでしょう。


えっ、お姫様抱っこ...なんだか凄く優しい。


騙されちゃ駄目...どうせ、どうせ。



「はい、口あけて、気持ち悪いでしょう?」


そういうとランディウス様に似たクズは私の口に指をいれシャワーで流してくれた。


しかも口の周りから胸にかけて綺麗にしてくれた。


「あの、そのね」


こんな事された事が無い、前は口に突っ込まれて苦しくて吐いたら、綺麗にしろと食べさせられて、何回も吐きながら食べさせられた。


「あっそうだ、自己紹介がまだだったね、僕の名前は礼二って言います、苗字は捨てました」


「私は湯浅真理って言います...」


《まぁ、知ってはいるんだけどね、今の僕は完全に別人からね》


ちゃんと名前で呼んでくれるんだ《肉便器》とか《便所》じゃなくて...


「それじゃ、頭からね」


優しいな、4回も頭を流してくれて、虫までついていたのに嫌な顔しないで...洗ったのどの位ぶりかな?凄く気持ち良い。


「今度は体ね、横になって」


「解りました...これで良いですか」


「うん、大丈夫」


石鹸つけて手で洗うんだ、たしかに、あかすりとかじゃ傷だらけだから痛いから仕方ないかな。


「あっあああっあはんっんっああっ」


駄目、なにこれ、クズたちと違う、絶対に違うよ~ 触られるだけで、なんで、なんでこんなになるのよ。


「ごめん、擽ったかったかな」


「ううん、そんな事ない、そんな事無いですよ、ハァハァハァ~」


《やっぱり、何か薬とか飲まされているのかな、様子がおかしい》


何なのかな、これ、全然違う、全然違う、今迄のとは全然違う...今迄は苦痛しかなかったのに..これはうっとりするほど気持ち良い。


「あの、少し声を押さえてくれるかな」


《三浦さんもそうだけど、不味いってこれ、正常な男だと体が反応しちゃうよ》


「うっうん、解ったうん、うんうふううん」


《流されない様に気をつけながら、体を洗った、かなり汚いし、股間のデリーケートな所からお尻の穴まで洗わなくちゃ綺麗に出来ない》


嘘、汚いとか汚物みたいな言い方されていた、私のそんな所まで触って洗ってくれるの..ほんとに汚いのに、あああっ駄目だ。



「あん、ああんあっあっふぅーハァハァ、ああああーーーーっ」


全然違うよ、これ、これが多分私がこの世界に来る前に好きだった小説の世界...はぁはぁ駄目だよ、頭の中が可笑しくなる。


体が嬉しくて、嬉しくて顔が赤くなっちゃうよ...しかも駄目だ目が合わせられない、こんな凄い美少年が、私の汚い所を指をつかって綺麗にしていくなんて...ばっちいのに..



「あの」


《さっきから、体がピクピクして洗いにくい》


「あっ.....ごめん、良かったら私も何かしてあげようか? 口が良いかな? 上手く動けないけどしたいなら、自由に使ってくだ...さい」


何を言っているのか解らない、私の体は何百人の相手をして何千回と犯されている。


だけど、私は一つだけしなかった事があるのよ...それは幾ら殴られても酷い目に遭っても自分からは誘ったり、自分からした事はないよ。


それだけが最後の意地だった。


だけど、駄目、こんなに優しく、宝物みたいな触られ方したら...それを差し出したくなっちゃう。



「無理しなくて大丈夫だよ」


「無理なんてしてないから、本当に...それに辛いでしょう」


「だけど...」


「そうか、沢山の男に抱かれた中古女なんて抱きたくないよね? 手も無いし気持ち悪いよね」


「そんな事無いよ、凄く可愛いと思う」


可愛い、そんな事言われるだけで、顔が凄く真っ赤になっちゃう。


「可愛い? それなら良いじゃない」


「今の真理さんは傷ついているんじゃないかな? そうだな、これから一緒に生活して傷が癒えた時に言って欲しいな」


なにこれ、全く別の生き物じゃないかな? 男は全てクズ、そう思っていたけど、礼二さんは別...うん神様とゴキブリ位差がある...


勿論、礼二さんが神...なんでこんな優しいのよ、こんなゴミみたいな女と一緒に生活してくれてるって言うの? 性処理に使わないなら只のお荷物抱え込んだだけなんだよ、本当に良いの?


駄目じゃんもう...全く。



「それじゃ湯船に入ろうか?」


「うん、礼二さんあたっているよ」


「ごめん」


「良いよ、私は何時でも準備OKだから、その気になったらいつでも声かけて」


「傷が癒えたらね」


あはははっ、私って凄く現金で強かったのかな。


まさか、あんな地獄の様な記憶が、もう幸せに変わっちゃうなんて...うん凄く幸せ。


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