第75話 くくり姫と

復活したくくり姫は一度だけ顕現してみせた。


この世界の何処からでも見える様に、人々を日本という桃源郷の様な世界に【括る】事を宣言した。


今迄が不幸過ぎた世界の人は、その姿に感動して涙した。



僕はと言うとまたくくり姫の作った神界に来ていた。



「本当に暇ね」


くくり姫は畳に座布団を敷いて座りお茶を飲んでいた。


「そうですね」


呑気に僕もお茶を飲んでいたが、不思議に思った事がある。


「くくり姫様、此処って神界ですよね、人が入れる場所なんですか?」


「何言っているのよ、此処は私が作った世界よ、人所か他の神も入って来れないわよ」



人、神...入れない? なら何故僕は入って来れるのだろうか。



「あの。くくり姫様、なら何で僕は入って来れるのでしょうか?」


「(様)はつけないで良いわ此処では、貴方は私の男なんだから、だって、貴方はもう殆ど人間じゃないわ」


「嫌だな、僕は人間ですよ」



「あ~やっぱり気がついて無かったんだ」



くくり姫が言うには、僕と交わった時にこの容姿をくれたそうだ、そして僕が安全に暮らせるようにと【括って】くれた。


そこ迄は解るけど...



「あのね、容姿をあげたという事はその容姿になる様に私の体をあげたという事なのよ...つまりその体は人間と神が交わった感じの体なのよ」


「そうなんですね」


「此処は私も解らないけど、この世界は神にとって恵まれた世界なのね、それで終わった筈なのに、貴方の体の中で【くくり姫】の能力は次第に力を取り戻していったのよ...下手すれば日本に居た時の私以上の力をね」


「えーと、それは、どういう事?」


「簡単に言うなら、今の礼二は半人半神しかも、私の体から作られているから、此処にも自由に入れるって事なのよ」


半人半神ってヘラクレスみたいな者なのか...そんな大それた話し、あるわけ無い。


「あのさぁ、礼二、何を考えているか解らないけど、普通の人間が【括る】なんて事出来ないと思わない? こんな事、安倍晴明だって出来ないわ」


「確かにそうかも知れない...確かに括るって凄い事だ」


「そうよ、その分じゃもう一つの能力も知らなそうね」


他にも何か出来たのか? 気がつかなかった。



「まぁ、余り言いたくはないけど【その体はくくり姫の力が宿っている】今の私の体はイシュタスの体がベースだからもう、無いけどね」


《もう振り切れているけど、何だか恥ずかしいわね》


「それはどんな力ですか」


「デリカシー無さすぎ、まぁ良いわ、礼二だし。 その体は悪神が幾ら抱いても飽きない位の体なのよ? 神と呼ばれる者が何百年と他の女の事が考えられない位に嵌る程の快感を与え続ける程のね...簡単に言うなら、それが本来のくくり姫の能力なの」


凄く悲しい事だけど、そういう女神だった。


「そういうのは良いからね、今の私は、その貴方が好きだから...言いたいのは、今の礼二はそう、SEX(まぐわい)については神を含んで無双できる位凄いって事よ」


「まさか」


流石にそれは無いと思う。



「それは無いって事は無いわ、神って自分の持つ能力はほぼ無敵なのよ、例えばギリシャ神話にエローズという恋愛の神が出て来るでしょう、あの矢には他の神々ですら逆らえず、嫌いな相手でも好きになってしまう...それと同じ。貴方の場合はその体を使ってSEXするなら女神だって嵌ってしまうわ」



「あの、それって...」


「あはははっ、男の夢ね、貴方には強姦罪はないわ、だって貴方に抱かれたら、貴方を好きになり自分から求めてくるんだからね、性欲が尽きるまでずうっと...まぁ礼二は根が善人だからそんな事しないだろうけど」


可笑しい、僕にそんな力があるなんて思えない。


「あのさぁ、礼二、女の子の事舐めている? 手足を失うような残酷な境遇で犯され続けた女が、たかが理想のイケメンにちょっと抱かれただけで笑顔になるなんて可笑しいと思わない? 男が怖くて仕方ない人間があんなに淫らに抱かれたいと思う様にならないと思わない? あの子達今、凄く幸せそうじゃない? 梓だっけ? 貴方に抱かれてから凄く良い笑顔を貴方に向けないかな?」



「言われて見ればそうかも知れない」




「言われて見れば、そうかも知れないじゃないわよ? もうあの子達メロメロだからね、それに貴方が欲しくて、欲しくて堪らない状態だから」


そういう事だったのか、それじゃ。


「ちゃんと愛しているわよ、それに貴方が抱いてあげなければ確実に廃人になっていたわ...良い事をしたのよ あとあの子達が抱かれたいのは負い目やお礼じゃ無いから、本当に貴方が好きで抱かれたくて仕方ない、そんな状態だからね、毎日でも相手してあげた方が良いかもね」


「そういう事だったんだ...だけどくくり姫はそれで良いの?」



「貴方は死んだら此処に来て私と二人で暮らすんだから、まぁそれまでは良いわよ」


「どうして、そんな事言えるのかな」


僕だったらそんな事言えない、好きな人がそんな事する何て考えたら嫉妬してしまう。


「この体は処女神イシュタスの体なのよ、穴も無いし多分子宮その物が無いし、性欲その物も随分なくなったわ、それに神に成ったら悠久の時間を一緒に過ごすんだから100年やそこらなんでも無いわ」


あれっ、女神イシュタスはどうなったんだ。


「それでイシュタスはどうなったんだろう」


「あはははっ多分消滅しちゃったんじゃないかな? 私はしーらーない」



「そうですか」



その後色々話し合った。


死んでしまった同級生の魂は日本に戻したそうだ。


そこからは日本の神の領域だからくくり姫にはどうする事もできないらしい。


そして平城と水上さんは記憶を消して日本に戻す事にした。


時間も併せて イチゴ狩りに行く途中でバスが事故を起こしてクラスの皆が事故に遭い死亡、その生き残りが平城さんと水上さんという形にするらしい。


忌々しい事にイシュタスには帰還させる能力もあった。


これは恐らく勇者達が魔王を倒して帰りたいと願ったら行う手段だったようだ。


三浦さんと湯浅さん、そして東郷さんは此処に残す事になった。


その理由は五体満足の状態に戻して元の世界に戻すのが難しいのと僕と交わってしまった為に【縁】が出来ている事。


そして僕を愛して、既に幸せだからという事からだ。


《礼二とやっちゃったらもう他の男じゃ満足できないからね》というと、くくり姫はニタニタしていた。




「それはそうと、イシュタスが居なくなって、ジョブや色々な物が返ってきたからこんなの作ってみた」


「凄い剣ですね」



「そうなのよ、日本にだって聖剣はあるわ【草薙の剣】がね、それを模倣してつくったのがそれよ、それも貴方に括ったから、必要になったら何時でも呼び出しなさい」


「括られている僕に必要なのかな?」


「一応、念には念をいれてね、あと、この世で貴方だけにジョブを与えるわ、まぁもう半分神だからその位良いでしょう、ジョブの名前は【尊(みこと)】 日本の半人半神が名乗っていたから貴方にも資格があると思うわ」


大和武尊の【尊】の事かな。


「うん、【命】にするか【尊】にするか悩んでそっちを選んだのよ...余り私が独占しちゃうと悪いからそろそろ戻してあげるわ」



結局僕はくくり姫に全てにおいてお世話になっていたんだと本当に思った。



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