第42話 長い夜の始まり

夜僕が寝ていると下半身に重さと温かみを感じた。


何だろうか?


「うん、ペロ、うううん」


「チュパ、チュパハァハァ~」


そう考えながら眠い目を擦り目を覚ますと裸になった三浦さんと湯浅さんが下半身の所にいて口で舐めていた。


確かに最近、女の子三人と暮らしながら蛇の生殺し状態だ、欲求不満でこんな夢をみたのかな...


夢なら良いかと手を伸ばしたら、可笑しい感触がある。


「目を覚ましちゃいましたか?」


「無理しなくて良いんですよ...そのままで」




【時は少し遡る】



「あの、サナさんお願いがあるんです!」


「お願いを聞いて頂けないでしょうか?」



礼二が居ない時、真剣な表情で、三浦と湯浅がサナに話し出した。



「いきなりどうしたの? まぁ礼二に話しにくい事なら聞くけど」


「お願いです、今日の夜礼二さんを貸して下さい」


「サナさん、お願い致します」



「えっ嫌だよ、私だって礼二とイチャイチャしたいんだよ」



「そこを何とかお願い、私たちこんなだし、少しでも絆や繋がりが欲しいんです」


「お願いします、サナさんみたいに可愛く無いし、本当にお願いします」



可愛い、もしかして本当に私は日本人にとって可愛いの。




「ちょっと聞いて良い? 私って三浦さんの国では可愛いの?」


「凄く可愛いですよ、男の子が振り返る位」


「私が読む小説のヒロイン位可愛いです」




「そうかぁ~可愛いか、うんうんそれなら、良いよ解ったよ、ただ今日だけだからね」


「有難うございます」


「ありがとう」



よくよく考えたら、この子達も私と同じだ。


ゴブリンに連れ去られ犯されて、礼二が救ってくれなければ、多分私は今も1人ボッチだった。


誰からも必要とされない存在。


誰も見てくれない...その辛さは誰よりも解るよ。


私も礼二と良好な関係になるまでは焦っていた。




それにしても礼二は自分の事を知らなすぎる。


まず容姿だが、誰からも愛される凄い美人だ。


イケメンと言わないで美人って言葉を使うのは礼二の美しさはイケメンの中に納まらない。


男から見てもすごく綺麗に見えるらしい。


この間なんてA級冒険者のハロルドさんが女と間違えて求婚していた。


「僕は男です」と礼二が言ったら「こんな綺麗な子が男なんて嘘だぁぁぁぁーーーっ」と泣きながら去っていった。


実際に収入のあるギルドの女職員や、商業ギルドの女職員なんかには凄く人気があるのに、当人は気がついていない。


受付嬢のモームさんやあの女狐のアイカさん達なんて「養ってあげれば結婚してくれるかな」何て言ってたらしいからね。


玉の輿狙いの強い受付嬢だって狙い始めている。


礼二よりカッコ良い男っているのかな?


考えてみたんだけど《皆の憧れ、王子フレデリック様》絵でしか見たこと無いけど礼二の勝ち。


《凛々しき赤髪、帝国の将軍 フリード様》この程度か...


版画絵迄売られている美少年より、はるかに綺麗。



これだけでも凄いのに...性格が真面目で優しく、そしてしっかりとお金を稼ぐ。


そんなまるで物語の様な美少年が...優しい。


これで好きにならない女なんて居ないよね...


ただ、不思議な事に、当の礼二はその事に無頓着なんだよね。



そればかりじゃない、礼二に触られたりすると体が可笑しくなる。


上手く言えないけど、体が熱くなって体の芯というか奥底というか、そんな所から何とも言えない気持ちが込み上げてくる。


多分、私は決してふしだらな女じゃない筈。


その証拠に礼二以外にこんな感情は抱かない...と思う。


まぁ経験が少ないから解らないけど、多分礼二相手だったら半年、いや下手すれば死ぬまででも《そう言う行為》が続けられる様な錯覚に陥る。


本当に喜んで出来そうで怖くなる。



簡単に言えば、今の私は礼二だけ居れば、それで良い。


死ぬまで愛してくれるなら水や食料さえ要らない...本当に可笑しい。



話は戻すけど...礼二はその位私にとって価値がある。


そして、その礼二の傍に居る私は...礼二の世界では美人らしいが、この世界じゃ不細工だ。


礼二が空にさんぜんと輝く太陽なら、私はその辺の虫けら。


そう思った事が何回もある。


《いつか捨てられるんじゃないかな?》《礼二の居ない世界になったら多分生きたくない》そんな恐怖で一杯だった。




多分...彼女達も同じだと思う。


私からしたらかなり美人だけど、手が無くて真面に歩けない。


かなりの不良物件だ。


しかも沢山の男に使われた女というレッテルもある。



私は汚い女だ...


礼二が、他に奴隷を迎えると聞いた時、本当は凄く嫌だった。


自分以外が愛される姿を見たく無かった。


彼女達の姿を見た時は凄くホッとした。


手が無い姿にホッとした....



だけど、気がついた、気がついてしまった。


彼女達は私と同じ。


此処を追い出されたら行くところはない。


私と全く同じ...ううん、真面に歩けない、手が無い分、私より酷い。



私は何を考えていたんだろう?


礼二は彼女達を助けると決めている、手を差し伸べた。


私は手を差し伸べて助けられた人間だ、そして礼二の...まぁ良いや。


そんな私が礼二が助けると決めた人間に手を差し伸べなくちゃ、女として終わりだ。



決めた...礼二が私にしてくれた事を彼女達にしてあげよう。


礼二程の人...一人で独占なんて出来ないんだから...




「解った、手伝ってあげる」


私は笑顔でそう答えた。




【直前】


礼二が寝るまで待たないといけない。


どうやら礼二は寝た様だ、今日礼二と一緒に寝ている湯浅さんが目くばせをした。


ベッドは二つ...一つは礼二で一つが私。


二人は交代で変わるが、私の一緒に寝る順番は来ない、今日助けてあげるんだから、交渉しようかな。


私は手早く三浦さんのワンピース型のパジャマを脱がし、下着も脱がした、そのまま手を貸して湯浅さんの反対側に寝かせた。


そして反対側に周り今度は湯浅さんに手を貸し裸にした。


「それじゃ頑張ってね」 小声で声を掛けたら二人は声で返さず首を縦に振った。


今日はこのままふて寝しよう。


二人はごそごそと動き始めた。








夢で無い事は解かった。


2人が裸になれるわけが無い、そう思ったから夢かと思ったが。


寝相の悪いサナが壁を向いて眠っている。


完全に共犯者だな、サナが手伝わなければ無理だ。



男だから僕だってしたいかどうかって言えばしたいに決まっている。


だが、心が折れてボロボロの女の子に付け込みたくは無い。


三浦さんも湯浅さんも《此処しか居場所が無い》


だからって考えると切ない物がある。


僕がどんなに嫌な奴でも生きて行く為に拒めない。


そんな状況じゃフェアじゃない。


僕が起きている事に気がつくと二人が話しかけてきた。



「礼二さん、また複雑そうな顔して、これは礼二さんが思っている様な事じゃないですよ」


「全く、恥をかかさないで下さい、うむん」



「だけど僕はこんな事しないでも、一緒にいるから大丈夫だよ、だから無理しないで..平気な訳無い」



「あの、礼二さん? あんな事言われて私がときめかないと思いますか? 最初に言っておきますが あむっ、ペロペロ...礼二さんだけですよ、少なくとも自分から望んでこんな事した人は礼二さんしかいません」


「そうだよ、うんうんハァハァ、こんな事私からしたりは他には絶対ありませんから、殴られ無理やりは別ですがあむ、むちゅ」



「だけど、大丈夫だって、僕は2人が好きだから、そんな事しなくても、絶対に捨てたりしないから我慢しないで良いって」



「間違っていますよ、あむううん、私は三浦陽子は貴方を愛しているから、あむっハァハァしているんです。大体、礼二さんは、自分が何を言って、何しているか? もう少し考えて下さい、あむっあむうんぐ、うんぐ」


「全く、何なんですか、礼二さんは全くもう、ペロぺるちゅばっ...これで好きに...ならない訳ないでしょう?」



「ちょっと待って、ちょっと離して、話聞くから」


正直名残惜しいが二人を僕は引き離した。



「全く無自覚なんですね、その代わり腕枕して下さいね」


「あっ、それ私もお願いします」



確かに嬉しいし下半身は爆発しそうだけど...これは違う気がする。


人の弱みになんてつけ込みたくない。


「あのね、礼二さんは私の面倒一生見る、そう言いました...しかも私はこんなだから、体は一生不自由なままだと思います、それってとんでもない事だと思いませんか?」


「だけど」


「だけどじゃ無いですよ、そうですね、私はこの世界に来る前は女子高生でしたが、もしその時に彼氏がいて、今の私の様な状態になったとしたら礼二さんみたいに下の世話までしてあげれる自信はないです...それなのに礼二さんは嫌な顔しないでお世話してくれて、優しく女の子として扱ってくれる」


「人として」


「出来ません、私は優しい人間だと思いますが、礼二さんみたいな事出来ません、あんな糞尿まみれで汚い人間、腕が無く真面に歩けない役立たず、誰も買おうとは思いません、例え買ったとしても性欲処理で使ってポイだと思いますよ」



「...」



納得してしまった、確かにそうだ。



「それでね、礼二さん、そんな私に一生面倒見る、そんな事言ったらどう思いますか? 私は手がありません、真面に歩けません、日本でいうなら要介護、しかも重傷人ですよ? これって考え方によっては《結婚》以上じゃないですか? 凄い愛だと思います...しかも嘘じゃないんだから、そんな愛を囁かれたら何でもしたい、そう思うと思いませんか?」


「それで良いの? 後悔しない」


「今が一番幸せですよ💛 わたし」



「ようやく陽子ちゃんが言い終わったね」



「あの湯浅さん...湯浅さんも同じ?」



「そうですね、私はもう少し打算的でしたね、最初は正直言えば、ましなクズだと思っていました、あんな状態で買ってくれて有難いと思いましたが、奴隷を買うんですからそういう人なのかと」


「普通そう思うよね」


「だけど、直ぐに違うって解りましたよ? こんな介護が必要な女、態々お金出して買いません...凄く優しいって、今でも何で此処まで優しいのか解りません。 私のなかで貴方は《男》じゃありません、礼二っていう名前の別の生き物です、多分。今でも私は男は嫌いです、暴力的で酷い事してクズだと思います、顔を見たら震えるかも知れません...だけど礼二さんは違います、もしかしたら私が触れても大丈夫な唯一の男性かも知れません」


「それ本当?」


「はい、一生面倒見てくれるなんてプロポーズみたいな物ですよね...そんな礼二さんに私が出来るような事は少ないんです、だからこれは私が自分の意思で、大好きな礼二さんにしたい事なんです...それでも拒みますか?」



此処まで言われたらもう拒めないな。


確かに一生面倒見ると約束したし、逆に断った方が傷つくかも知れない。


「うん、解った受け入れるよ」



「「有難うございます」」



長い夜は始まったばかりだ。


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