第19話 閑話】王宮 幸せ異世界人(裏) 王の計画

2週間という時間は人を見るのには充分な時間だった。


まして儂は王なのだ人の見極めが出来なければならぬ立場にある。



最初に城を出て行った礼二なる者のように信念を持ち神を信仰しているのかと思いきや、此処にいる者達は全てエセ信者だった。


何しろ、信仰している神の教義を、それとなく聞き出そうとしたら「誰も答えられない」呆れて物も言えぬ。


これなら、簡単じゃ...如何に、此方の宗教が優れているか話せば簡単に改宗するじゃろう。


奴らの都合の良い解釈で話して「自分達は幸せを約束されている」そういう甘い言葉一つで簡単、そう見た。



教会としても、「勇者」「聖女」が存在しない状態は困るから、「多少教義と外れていても信仰するなら問題ない」と許可は得ておる。


後はマリンに「都合の良い」話を中心にイシュタス様の教えを伝えれば良い、それだけだ。



一番滑稽なのは「緑川」と「賢者達」だったな。


何しろ、自らの価値を自分で下げおった。


本来なら、王宮で生活出来る物を、「仕官の道」を選ぶなど愚の骨頂としか思えん。


儂としては、融通の利かない「緑川」達が一番始末に置けなかった。


緑川以外は直接こちらに働きかける者はおらぬ。


つまり、此奴が居なくなれば、不平不満があっても、儂に迄話をしに来る存在が居ない事になる。


更に言うなら、案外頑固で緑川一派は欲望で転ばない可能性が高い。


頭の中で「居なくなって欲しい」そう思っていたら...一番儂にとって最高の道を選びおった。


「仕官」じゃ!


緑川は辺境で騎士見習いからスタート。


ジョブがあるから直ぐに騎士になるじゃろうが「騎士爵」を与えて終わりじゃ。


王宮に残って活躍すれば、上級貴族に成れる道があった物を...本当に馬鹿じゃ。


しかも、田舎を望みおったから、辺境伯の所を紹介した。


今の世の中魔族との戦いは何処も同じじゃ...田舎だから平和と言う事は無い。


「騎士」になったのだから、死ぬ気で死ぬまで戦うのが当たり前、そういう人生しかないのじゃ。



「賢者」に戦いにでて貰えないのは残念であるが、アカデミーに送り込んだからそれはそれで良い。


アカデミーは「賢者」を欲しがっていたから、良い貸しができた。


対価として貴重な「大魔導士6名」差し出してきた。戦力としてはこれで釣り合いがとれる。


また「賢者」のジョブを持った者をアカデミーで使い潰せるなら、それは僥倖じゃ。


国に役立つ様々な物を提供してくれるじゃろう!


他の者も騎士見習いや、戦闘魔法使い等に送り込んだのだから、こちらとしては願っても無い。


まぁ、1人王立図書館勤めがいるが、話を聞くとその仕事が本当に好きなのだから仕方ない...まぁ此奴だけは自分で道を切り開いた。


そう言えるかも知れぬ。


「異世界から来た者」がこちらの人間と同じ報酬で、仕事をするのじゃから...実に良い話であったとしか言えない。



緑川から得た情報は実に美味しかった。


何故なら27名の殆どが欲の塊だからじゃ。


「女が欲しい」「男が欲しい」「金が欲しい」「地位が欲しい」 特に緑川は、男子のかなりの人数が「女に目がなく危ない」と助言をしておった。


事実、目をつけられて危ない女性を引き連れて出ていった。


それとなく、様子見を頼んだら、メイドや女官を好色そうな目で見ている者や、見目麗しい騎士を見ている女が居ると言う情報が得られた。


これなら簡単に異世界人をばらせる。


沢山の者が固まっているから金も掛かるし、文句も出る、バラバラにして1人にしてしまえば「たかが子供」なんとでも言いくるめられるだろう。



沢山の貴族が「異世界人」を欲しがっておるのだから、王宮から「下賜」してやれば良い。


異世界人に掛かるお金は、貰った貴族が払う。


そして、貴族はその「異世界人」を使い魔族と戦う...その結果、国が助かる良い話だ。


「勇者」「聖女」「剣聖」は流石に国と教会が押さえて置かなければならぬが、その他の人間は「下賜」すれば良い。



儂は、貴族に通達をした...「見目麗しく、戦える継承権の無い子息、子女をパーティーに寄こせ」と...そして異世界人を落とせとな。


あ奴らにして見れば必死であろう...


継承権が無いから「今は貴族の子だが、このままでは貴族ですらなくなる」それがだ、異世界人を射止めれば、「貴族のままで居られる」のだ。


しかも、異世界人の間に生まれた子は「優秀な子」が多い。


体だろうが、戯言の愛だろうが差し出すのは当たり前じゃ...目の前の「貴族で居られるチャンス」を逃す馬鹿はおらぬよ!




「女に目が無い」のなら恰好のエサだろう? 


異世界には居ない...本物の貴族の女、男...まるでお姫様や王子様みたいに見えているであろうな。


だが、貴族の娘や息子に手を出せば、そのまま婚姻じゃよ!


しかも、1人も味方が居ない状況じゃ、もう終わりじゃな!



そこは貴族、手を出したら最後、最初は「純潔」について語り、場合によっては死罪を持ち出し...


最後には娘や息子が「心から愛しています●●様を殺すなら、私も死にます」


と異世界人を庇い...娘や息子が言うから仕方なく婚姻を認める話しをし...


それでも渋るなら「娘の純潔を奪いながら」「息子の純真な気持ちを踏みにじって」と脅す。


こうなるのが見えておる。



そして、異世界人を手に入れた者は、パーティーを組み死地へと異世界人と共に赴く。


当然じゃろ?


異世界人を手に入れて、手にした物は貴族としてはまだ下の「男爵」じゃ貴族の子息、子女なら上を目指す。


勿論、儂は過去には「公爵までなった者が居る」その様に話してあるから、貴族なら狙うのは当たり前じゃ。



「勇者」「聖女」「剣聖」は教会が支援する話になれば、金など気にする必要は無い。


全部、狂信気味の教皇や司祭が払ってくれる、何でも教会払いにすれば良い。



緑川は特に「勇者である祥吾はかなりの女好きだから気をつけるように」と忠告していたが気にする必要などない。


「勇者」であれば、「女神の御使い」教会のシスターを始め、何万もの女が股を開くのだ...どんな女好きでも問題無い。


そんな生活長く続けば、「女嫌いになるんじゃないか」 寧ろ、そちらが心配だ。


勇者の子供を身籠るだけで、沢山の保護が付くのだ、教会などは「勇者の子供を産めば、どんな人間でも上級シスター扱いで死ぬまで月金貨2枚貰える」そういう保証をしている。


「勇者」「聖女」「剣聖」はそれこそ、砂糖に群がる蟻の様に異性が寄ってきて肉体関係を迫られる。


出来るわけ無いが、勇者の子であれば国としても歓迎だから、千でも2千でも孕ませて貰いたい物だ。


つまり緑川の心配は全く無いと言える。



そして、この話の一番良い所は国も儂も何一つ、異世界の戦士に強制していないと言う事だ。


今回の召喚は大成功といえよう。




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