第20話 【閑話】王宮 幸せ異世界人(裏)槍のリタの成り上がり

私は自分の人生が心配で他ならなかった。


私はユーラシア男爵家の三女として生まれた。


だが、妾腹だった為に良い生活等した記憶がない。


男爵家といってもユーラシア家の土地は内陸にあり海も無い場所だ。


そして森はあるが、さほど恵まれた場所で無い。


何が言いたいのかと言えば、貴族なのに貧しいのだ。


領主である父と正室であるフェリシア様、そして長男であるサードルの食卓は貴重な食材の鳥がつく。


だが、その他の家族には鳥が付く事はまず無い。


それこそ、誕生日に鳥のもも肉が貰えるだけ...1年に一度しか鳥は食べれない。


そして、家のなかでの私の立場は、恐らく一番低い。


妾の子で背が高くて器量が良くない娘。


政略結婚にも使えない娘。


貴族の娘としては何の価値も無い...あはは、本当に駄目だ。


だから、私は15歳の成人に備えて「槍」を使いこなせるようにした。


母が居なくなった今、貴族では居られない。


貴族で居られなくても、元貴族の為仕事が狭まる。


冒険者にでもなるしかない。



「何だ、リタか? 本当に使えない娘ね!」


「此処まで器量が悪いと、手柄を立てた者に報奨として妻に与える事も出来ぬ」



「犬以下だ」



母さんも死んだし、此処に私の居場所は無い。



そんな私に王からの召喚状が来ていた。


どう考えても器量など良くない...手違いだろうな?



王からの召喚状...行かない訳にはいかない。



「召喚状が来たから行かせぬわけには行かない...最低限のドレスは用意しなくてはならないな」


「本当に、ドブに捨てるような物ね」


「どうして、真面な妹を置いて置かなかったんだ...こんなチャンスに」



結局一番安いドレスを買い与えられ望まぬパーティーに行く事になった。



他には器量良しが居るのだから...まぁ行くだけ無駄だが、美味しい物が食べられるだけよいか?




王宮には


他の家の者の中には、家族全員で来ていた者も居た。


親の期待度が解る。



やがてパーティーになり、「異世界人」に皆が群がるが、私は辞めて置いた方が良いだろう。


どうせ、私が行った所で無駄だ。


さて、飯でもくって静かにしているか?


その後は壁にでも貼り付いていれば良いさ。



うん? なんで彼奴は1人で居るんだ?


隠れるようにバルコニーの柱の所に居る...



「どうかしたのかな?」


「はははっ見つかっちゃいましたか! 僕はこういう所が苦手でね」



「もしかして、此処に居たく無いのか?」


「まぁね...だけど相手が見つからないと此処から出れないようなんだ!」



まぁ異世界人と「話しをすれば義務は果たした」そう言えるだろう。



「だったら、私と裏庭でも行くか? これでも女だ文句は言われまい」


「宜しいのですか?」


「ああ、構わないよ!」



しかし、異世界人なのに何で此奴には誰も寄りつかなかったんだ。



「あのさぁ! 行かなくて良いのか? 重要な相手を決める大切なパーティーだろう?」


「そういう貴方は行かなくて良いのですか?貴重なパーティーなんでしょう?」



「見ての通りの大女だ! 行くだけ無駄だって! そう言えば名前も名乗ってなかったな! 私はユーラシア男爵家の三女リタだ!」


「ご丁寧に僕は、中村翔太、異世界人でジョブは聖騎士!」



聖騎士だって! 四職のすぐ下...貴族が手に入れられる異世界人の最高峰の一角じゃないか...



「翔太、こんな所で油を売っていては駄目だ! お前ならブリジット公爵家の令嬢やタイヤー侯爵家の令嬢も色目をつかって来る筈だチャンスを逃しちゃ駄目だ!」






「あの、ユーラシア男爵家ってどんな所にあるのですか?」



「凄い辺境の貧乏な家だ、唯一の取り柄は何も無いから魔族が攻めて来ない、それだけだな!」



魔族が攻めて来ないなら...最高じゃないか!



「リタの所も異世界人は欲しんじゃ無いのかな?」



「確かに欲しいと思うが! 私と将来の結婚を踏まえて付き合い、パーティーを組むんだぞ! 嫌だろう?」



背が高いけど、僕の目から見ればかなりの美形だ。


背の高いモデルか、異世界の話なら女性クルセイダー見たいな感じだ。


そして貧乏でも平和な領地、最高じゃないか...僕は戦いは嫌いだ。



「解った、それじゃ僕は、ユーラシア男爵家の世話になるよ! 潜伏を使って隠れていたかいがあった」


「おい、それは私と結婚を前提に付き合いパーティーを組むという話になるんだぞ」


「リタが良ければそれも構わない」


「おい、そんな簡単に決めて良いのか? 明日もあるのだぞ」


「もう決まったのだから明日はゆっくりしようよ」


「翔太...ありがとうな!」



さて困った、相手が出来ると思ってないから馬車も何も用意してない。


直ぐに手紙を書いて手配しないといけない。


緊急事態だ、親類のロードマン男爵にでも頼り借りるしか無いだろうな...


この事態だ許して貰えるだろう。




手紙を書き、ギルドで早便で出した。


その際にロードマン男爵家に馬車を借りる旨を手紙に書いた。




翌々日、ロードマン家は馬車を王宮に従者と共に届けてくれた。


これで、体裁は保てる。


明かに、異世界人を手に入れられなかった者の嫉妬をかっていそうだが仕方ない。



しかし、何で自ら...そうか? ロードマン男爵も縁を結びたいのだな。


「しかし、リタ様この度はおめでとうございます」


「リタ様?」


「何を驚いているのですか? 今はまだ同じ男爵ですが、すぐに子爵、伯爵と駆け上がって行くのですからな」



そうか、異世界人を迎えるって言う事はそういう事なんだ。



「リタ? こちらの方は?」


「フロント男爵、親類にあたるわ!」


「これは、これは中村様、お初にお目に掛かります、ロードマン家の当主フロントと申します」


「これはご丁寧なあいさつを中村翔太と申します」



王都から馬車に揺られて1週間、のどかで何も無いユーラシア男爵家についた。


珍しい、お父様が外で出迎えに立っている。



「お父様、今帰りました!」


「おお、リタよ、流石は私の娘だ、帰りを待ちわびたよ!」



「あの、お兄さまとフェリシア様はいらっしゃらないのですか?」



「ああっリタが気にすると行けないからからな、サードルとフェリシアは追い出したよ...次期当主を中村殿とお前にする事に反抗したからな、追放したからこの土地には二度と来ない、安心してよいぞ!」



そうか、私達は今は男爵だが伸びしろがある。


ユーラシア家はずうっと男爵、爵位を上げる為に躍起になり失敗した。


確実に爵位を上げるであろう私達を取り込むために斬り捨てたんだわ。



「解りました、お父様、ユーラシア家の為(適当に)頑張ります」



「お世話になります!」


「こちらこそ宜しくお願い致します」



笑顔で握手をしたが、その思惑は2人とも別の物であった。



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