第23話 【サイドストーリー】種馬戦士 和樹物語 (リクエスト作品)



「お父様、先程14名の異世界人からの資格剥奪届けが出されました」


「まぁそうじゃろうな...仕方ない受理しとくように」


「はい、その様にします」


「しかし、これで彼らは苗床人生しか無い事に気が付いていないのだろうな」


「良いんじゃないんですか? ハイゼ伯爵の所にいた広川様..いえもう「異世界人」じゃないから広川を見た時に「ハーレム来た」とか喜んでいましたから...」


「まぁ、貴族に異世界の力を持った血が入るのは良い事じゃ...だが」


「王であるお父様が気に病む話ではありませんわ」


「うむ、そうだな...だが、異世界人としての光り輝く未来が家畜の人生に変わってしまったかと思うと王ではなく男として不憫でならぬ」


「女の私には理解できません」


「そうじゃろな」





パーティが終わり、異世界人を国と貴族で分け終わった


国側と教会は「勇者」「聖女」「剣聖」を主軸に戦う事が決まった。


リーダーは勇者である祥吾、それぞれ3人には貴族から2人ずつ合計6名優秀な者がつき。


アカデミーからは「賢者」の代わりに代替で来た、「大魔導士」6名が加わる。


合計15名が魔王討伐のメンバーと決まった。


実はこれは完全に出来レースだ。


まず一番成績の優秀な者は勇者側に来るよう、あらかじめ国から圧力が掛かっていた。


その為、元からこれに加わる資格の無い者は寄らない様に言いくるめてある。


魔王を倒すのに優秀な者が必要、当たり前の事だ。


その為にはまず一番優秀な者をその任につけなくてはならない。


その話を聞いた貴族の子女、子息たちは落胆したが元々の約束で決まっていた事だから仕方ない。


実質、勇者とその仲間15名で魔王を戦って貰おう...それが殆どの貴族の考えだ。


勿論、金銭的な援助やバックアップは別にする。


残りの異世界人はどうしたいのか?


ここに全てと言って良い程の貴族は集中する。


結論から言うと婿や養女にして種馬や苗床にしたいという貴族が多い。



この世界の優秀な人間は性格的に歪んでいる者が多く...そして人を馬鹿にしている傾向が多い。


庶民の男ですら優秀なジョブを持つ者は将来が約束されるので...貴族令嬢のプロポーズを断る事もある...そんな世界だ。


庶民の男で不細工であってもジョブさえ優秀なら、種馬になりほぼ仕事はしないですむ、そんな生活もあり得るのだ。


庶民の男でそこそこ綺麗で優秀なジョブだったら...確実に玉の輿に乗れる。


最も、実際の所は、「確実にジョブが引き継がれる」事は無い。


優秀で無い子も沢山産まれているのが悲しい現状だ。


では異世界人だったら...「最低でも一つ下のジョブの子が生まれる」それが絶対とは言わないが、ほぼ確定している。


子供をガチャ扱いするのは問題だが、本人がSSアイテムなら、ガチャの中にはS級のアイテムしか入って居ない。


貴族がこれを欲しがらない訳は無い。


恐らく、貴族達には「王族」との結婚ですら天秤にかける程価値がある。



最も、戦力としての価値も充分あるが、それは二番目。


殆どの貴族が欲しい一番の理由はこれだ。


その為、実はこの貴族の子息、令嬢たちの中には...強くもなんともない...美しいだけの人間も実はかなり、混ざっている。


何故、そんな人間を王の命令を無視してまで貴族が出したのか?


それは、初対面の一発勝負なら外見だけで勝負が決まる...そう考える貴族が居たからだ。


だから上は侯爵、下は男爵まで戦闘力の無い美男美女がかなり混ざっている。


ちなみに、男爵以下には参加資格は認められておらず、公爵家が参加しないのは結婚していない子息、令嬢が居ないとういう理由からだ


殆ど、我々で言う所の合コンに近い感じで種馬獲得を隠したパーティ選別が裏ではあった。


綺麗な令嬢がハイエナの様に本性を隠して襲い掛かる。


「初めまして勇者様、綺麗な黒髪ですね...私剣技には自信があります、身も心も全て捧げます...だからパーティの末席で構わないので仲間にして下さい」


「私は回復魔法が得意です、是非お仲間にして下さい..仲間にしてくれるなら私を自由にして貰っても構いません」


彼女達は決して剣も魔法も出来ない...全部嘘だ。


だが、最後に言っている身も心も捧げますだけは本当だ。


そして、この集団合コンならぬパーティ選別の儀で少ない者で3名...多い者で10名近くのパーティを組んだ。


ここも実は巧妙なのだ...例えば1人の令嬢をパーティに加えたとする。


「ありがとうございます...勇者様、必ずや私の剣が貴方を守ります...ですがパーティには火力も必要です...もし宜しければメイジも仲間に加えるべきです...あっあそこに灼熱のレディスがいます...まだ何処にも入っていない..チャンスです声を掛けてきて宜しいでしょうか?」


勿論、凄いメイジではないただ、初級の火魔法が使えるだけの令嬢だ。


「レディス...貴方程の方がまだパーティが決まらないの?」


「私は主を選ぶのだよ」


「まだ、決まって無いなら、私の異世界の戦士様に会って貰えないですか」


「会うだけなら」


「ほう、こちらの異世界の戦士様がそうか...初めましてレディスです...流石、疾風が選んだ相手、、私が仕えるのにふさわしい!」


「疾風って...」


「知らなかったのですか...そこの剣士、疾風のライヤですよ」


彼女は疾風どころか、そよ風以下...現状ゴブリンにも勝てない。


こんな風に仲の良い貴族の令嬢同士が保険を掛けて、自分が失敗した時の為に同盟を組んでいた。


かくして、何も知らない異世界人達は勝手に仲間を増やされていく...実際に戦えない性欲まみれの令嬢を抱えながら...自分では美しくて強い仲間を手にしたと言う幻想を見ながら。



貴族の屋敷に、異世界人は移される。


その屋敷はパーティの貴族の中でも位の高い者の屋敷が選ばれる。


他の令嬢も同じパーティメンバーはこの屋敷で過ごす。


実は、この前の時点で、貴族の上下関係で正妻や側室が決まっている。


中には、主家と従家で囲い込みをしている場合もある。


そこでは前の世界では考えられない程の歓迎を受ける。


我々の世界で言うなら、何も知らない美少女を家に呼んで複数のハイエナの様な男性で囲んでいる状態に近い。


違いは紳士的かどうかの差だけだ。


メイドから令嬢迄が際どい服装で虎視眈々と狙っている。


勿論、部屋の鍵は誰も掛けていない。


ここで、殆どの者は落とされる。


そのまま夜這いをかけてしまう者。


意思が多少は固く廊下をウロチョロしている者...全て食われてしまう。


「貴方なら...」


なんて甘い声で誘ってくるが...実はこの世界の処女は異世界人限定なら前の世界の童貞位価値はない。


生まれてくる人間が確実に「医者」「弁護士」以上になる可能性が高い。


そんな将来が約束された「種付け」なのだから。


そして、その後は当主から


「うちの娘(使用人)を傷物にしたな...責任を取ってくれるか?」


これで終わってしまう。


異世界でここを出て行ったら行く先は無いのだ。



この時点で婚約まで結ばされてしまう。


そして、婚約をしたが最後、側室迄決まってしまう事が多い。



その後は、異世界人の肩書をどうにかして無くしたい貴族の策略が始まる。


異世界人は国が保護している、最悪気にくわなければ出て行き、優秀なだけに何処でも暮らせる。


その為、どうにか資格を失わせたいのだ。



一番多いのは、最初からオークを狩りに行く方法だ。


ゴブリンを飛び越してオークと戦わされる。


パーティのメンバーで異世界人は、行っているつもりだが、実は違う。


離れた所で、貴族の持つ騎士団がしっかりと警護している。


そして、令嬢たちの装備は見栄えは悪いがかなり上等な物。


逆に異世界人の装備は...見栄えは良いが粗悪な物を用意する。


結果...異世界人が足を引っ張り...惨敗。


その際に異世界人が怪我をする事は確定、必ず大怪我するまで戦わされる。


心を折る為に。


場合によっては令嬢の1人位は怪我をさせて、更に異世界人を追い込む。


全てが終わって屋敷に帰り...令嬢たちは全員が泣く...瞼が腫れる位泣く。


その後で泣きはらした姿で現れる。


「私は、貴方無しでは生きていけない...貴方はこのままでは死んでしまう...だから...戦うのを辞めて下さい...例え..私がどうなろうと...王家に指一つ触れさせないから...」


怪我をして自信を無くした異世界人はこの誘いは断れない、自分の身を案じてくれる彼女達の姿に救いを感じてしまう。


それで異世界人が感動している所に...当主が現れる。


「娘が此処まで愛しているのだ...当家の名前に掛けて、戦いを辞退できるようにしよう...その後は娘達と幸せに暮らせば良い」


更に感動して、その提案を飲んでしまう。


優しい提案に思えるが実はここからが地獄なのだ。


異世界の特権を辞退した後は...苗床の様にただただ、肉体関係を重ねるだけになる。


例え、最初が3人だったとしても...従家の貴族の娘も加わり...側室が増えていく。


そして...朝から夜まで何回もの肉体関係を続けなければならない。


一族に固有の魔法や優秀なジョブが欲しい為、容赦なく肉体関係が続く。


ただ、相手が美しい..それだけが唯一の救い...恐ろしく怖い美人局みたいなものだ。


だが、ジョブや固有魔法は伝わらない事も多い...実際の所は元異世界と結婚した、そのステータスが欲しいだけなのかも知れない...


14名の異世界人は今日もハーレムを楽しんでいるだろう...種馬扱いされているとも知らずに...そしてその楽しみがいつか苦痛になろうと引き返せない...そんな事も知らずに




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