第8話 日本に奴隷制度はありません...

朝食を食べに街に出た。


定食屋に入ってみたら...



「いらっしゃいませ! 礼二様は日本人ですので、モーニングセットは2種類になります。 焼き鯖定食かスクランブルエッグ朝食になります」


原理は解らないけど...此処でも特別だった。



「それじゃスクランブルエッグ朝食で」


「はい、プラス100円でコーヒーが付きますが如何でしょうか?」


「お願い致します」



これは一体何なのか解らないが...僕だけが日本と同じ待遇になっている。


この世界では水すら有料なのに、僕は無料でしかも、氷入りの冷たい水が出てくる。


食事は割高で不衛生なのだが、僕にはどう見ても日本にある物が日本の料金で出てくる。



「はい、こちらがモーニングになります」



スクランブルエッグにソーセージ、サラダにパンケーキが2枚、しかもメイプルシロップ付き。


そして、コーヒー。



「有難うございます」


「コーヒーはお代わり自由ですので、お代わりが欲しければ申しつけ下さい」


周りと全然違う...しかも僕だけが待遇が違うのに誰も文句を言う様子も無い。



ここに来る前に、紙屋に寄って来たら、僕に大学ノートにボールペンを薦めてきた。


この世界では、混ざり物の多い紙に羽ペンが標準なのに...僕だけこれだ。



此処までの経験で解った事を書き留める。



1.僕にだけ「日本」のルールが適用される



2.恐らく日本に存在しない物や者はお互いに干渉できない。


これはゴブリンとの遭遇で経験済み...何処まで適応されるか解らないが、ゴブリンのナイフや矢も僕にあたらなかった。


逆に僕はゴブリンに触れることが出来なかった。



3.お金のレートや待遇は日本と同じ、もしくは同等となる。


賃金も日本に合わせられているようだし、部屋もそうだ。



凄いな...日本国民、異世界転移の話を良く小説で読んだが、こんな幸せな生活捨てさせられるんだ。


成功して貴族になってようやく同等じゃないか?


ちなみに、流石にトイレにはウオシュレットはついていない...だがホテルの個室のトイレにはついていた。


此処まで違うんだよ...





それは兎も角...今日も薬草採集しなくちゃ、生活が出来ない。


それにもしゴブリンが居たら...昨日の彼女も気になる。


まぁ、今の僕の立場は、派遣社員、もしくは請負。


そういう事なのだろう...



「おはようございます」



「おはようございます、礼二様、今日もお仕事頑張って下さい」


ただの薬草採取なのに、凄い笑顔だ...多分この容姿によるものだと思う。


「はい、頑張ります! あと今日は遅くまで仕事をしますので、明日提出します」


「解りました、あと、こちらをお渡し致しますので...月末までに納付お願いします」



「なんですか? これ!」



「日本で言う所の国民年金と健康保険です、宜しくお願い致します!」


約日本円で2万円の請求だ...だけど、うん? 待てよこれを納めれば年金が貰えるし、医療費は3割負担で済むのか?


まぁ良いや...だけど何処まで対応されているんだ、この不思議な待遇は。




昨日の薬草採取場所にきた。


この辺りはゴブリンがやオークが出るから、階級の下の冒険者は来ないそうだ。


勿論、階級が上がれば討伐をした方が実入りが良いから薬草採集なんてしない。


そう考えると正に僕だけの為にある場所だ。



朝からスタートしたから、あっという間に42本採取できた。


これで交通費併せて27620円...うん美味しい。


だが、これは群生地を知っているだけで、数日もしたらもう終わり。


さっさと年金を払って、その後はまた倹約した方が良いだろう。



さてと...



僕はゴブリンを探している...昨日の女の子が気になるからだ。


もし、巣があったら救出をしてみようと思う。



この為に今夜は寄らないとギルドに伝えた。


そうしないと日本人の僕の捜索が行われる可能性がある。



僕にとって恐らくゴブリンの巣は、嫌な言い方だがアトラクションだ。


お互いが触れられないし危害が与えられないのだからお化け屋敷と一緒だ。




今日の分の収穫があったのでゴブリン探しをしてみた。


案外、この辺りはゴブリンは簡単に見つかった。


こっそりと後をつけて洞窟の場所を特定する...


後は夜を待って忍び込むだけだ...


僕に関して言うなら見つかっても問題無い。


問題なのは女の子だ...つまり彼女にたどり着く前なら幾らでもチャレンジ出来る。


逆に女の子を見つけた後であれば、僕は大丈夫でも女の子の死活問題になる。



夜になるまで洞窟の近くの茂みに隠れていた。


地味に蚊に刺されて痒い。


僕の括りは「日本」...だから蚊とか日本に居る物は普通に刺される。


熊や猪はどうなるのだろうか?


此処にいるバグベアーとかいう6本腕の熊やグレートボアという猪の化け物は無効になるのだろうか?


調べてみないといけないな。



月も隠れていて丁度良い。


日本人の感覚で言うなら深夜1時そんな時間だろうか?


取り敢えず...入口から中を覗いてみた。


結果は拍子抜けした。


ただの洞窟だった。


ほぼワンルームみたいな大きさで...全て見渡せる。


彼女は、やられ終わった後みたいで、手を縛られて猿轡を掛けられた状態で転がっていた。


満足したのか、彼女の横で3匹のゴブリンが寝ている。


この洞窟の中のゴブリンは5匹...見張りも居ないで寝ている。


静かに彼女に近づき担ぎあげた。


「うううーむ!」


「静かにして、助けにきた」


良かった、気づかれていない。


そのまま...彼女を担ぎ上げ走った。


ひたすら走った...追って来る気配は無い。


ここまでくれば大丈夫だろう?


彼女を降ろして...猿轡と縛られていたロープを解いた。


「大丈夫?」


「大丈夫な訳ないでしょう...」


彼女は凄く臭いし...破られた服に白い液が沢山ついている。


そして、下半身からは血と同じく白い液体が太腿を伝わり流れ落ちた。



「ごめん..」



「良いのよ...冒険者は自己責任、助けようとしてくれて、そして助けに来てくれた...よく考えたら貴方はお人よしな位だわ」



あの時は考える余裕が無くて気が付かなかったけど...凄い美形じゃない!



「そう、それなら良かったよ...頑張ってね!」


あれっ...それが目当てじゃないの? まぁ私みたいなブサイクじゃ...そういう訳無いかな...



「何言っているのよ!  人を救出したらギルドに届け出出さなくちゃいけないのよ!」


そうなのか知らなかったな..


「解った...だけど、その状態じゃ..」



「良いの..状況説明に必要だから...恥ずかしいけど我慢する...夜中だからね?」



「なら良いけど...」


話を聞くとギルドは基本24時間、酒場も日本感覚で夜中2時には閉まるからこの時間は外に人は居ないらしい。



「お帰りなさいませ...礼二様..その女なんですか?」



「私はサナと申します...さっき迄ゴブリンの苗床になっていました...この人に助けて貰ったので、戦利品扱いで奴隷になります!」


「ちょっと、何を言い出しているんだよ! 僕は奴隷なんて要らないよ、そんな事しなくて良いよ!」



「君は知らないんだよ? 苗床から助けた女性は戦利品なんだよ! もう好きにし放題...嬉しくないの?」


うっ一瞬想像しちゃったじゃないか...


「えーとサナさん、女の子なんだから自分を大切にしなくちゃ...」


「ううん、良いのよ、貴方凄く優しそうだしご主人様に申し分ないわ、ちゃんと一生仕えるわ」



ゴブリンに犯された時点で女としては終わり...だけど、私はついているわ、こんな凄い美形の奴隷になれるんだから...



この女狐助けて貰った事を良い事にそのまま礼二様の所に転がり込むつもりですね...



「申し訳ございませんが、礼二様は日本の方なので奴隷は所持出来ません..ついてますねサナさん、奴隷にならないで済みますよ! 良かったですね」


死にそうな顔でサナはこちらを見つめていた..


折角なので換金を済ましてギルドを後にした。



ひたひたひた....


「あの、何でついてくるのかな?」


「いいじゃない...私、あんな事があったのよ..一日位付き合ってよ」



確かに、あんな事があったんだ女の子だったら心細いか..



「解ったよ、あっ手は絶対出さないから安心して」



「....」



「礼二様...本日はお二人、しかもお相手が女性ですのでラブホテルの料金が適用になります...1泊辺り8800円になります」


「解りました...はい」


地味に3800円余分に掛るのが痛いな。



部屋に入ると...なにこれ薄さ0.002ミリのゴムが2個と簡単に沸かせる小型ポットにティーバック...歯ブラシが2本にガウンが2着。


各種整髪料...完全なラブホテルじゃん


しかもルームサービスでコーラが220円 多分レトルトなんだろうなカレーライスがとれる。


可笑しい...何処からこれが届くんだ。


まぁ部屋は貴族用の貴賓室だけど...



「凄いね..うふふ、なんだ礼二もその気があるんじゃない! わざわざ私の為にこんな部屋借りる位だもんね...ありがとう!」



確かに元の世界の常識じゃこんな部屋に連れ込んだら、そう思うよな...



「違うって...そのお風呂が必要だからだよ」


「はいはい、そう言う事にしておくね...どっちみち、今日は私礼二としなくちゃいけないから...だけど気を使ってくれてありがとうね」


「何、それ...」


「私、お風呂に入ってくるわね」



「しなくちゃいけない」...何で?


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