第3話 要らないと言ったのに...

僕が目を覚ますとクラスのみんなは既に一か所に集まっていた。


その前に、明かに中世の騎士の様な恰好をした人物がいて、その先には綺麗な少女と多分王様なのだろう、偉そうな人物が椅子に座っていた。


「最後の一人が目覚めたようです」


騎士の報告を受け、王の前にいた美少女がこちらの方に歩いてきた。


「ようこそ、勇者の皆さん、私はこの国アレフロードの王女マリンと申します、後ろ座っているのが国王エルド六世です」


担任の緑川が代表で一歩前に出た。


「こちらの国の事情は女神様に聞きました。そして我々が戦わなくてはならない事も...だが私以外の者は生徒で子供だ..できるだけ安全なマージンで戦わせて欲しい。そして生活の保障と全てが終わった時には元の世界に帰れるようにして欲しい」


「勿論です、我々の代わりに戦って貰うのです。戦えるように訓練もします。そして、生活の保障も勿論しますご安心下さい。 元の世界に帰れる保証は今は出来ません。ですが宮廷魔術師に頼んで送還呪文も研究させる事も約束します」


「解りました、それなら私からは何もいう事はありません、他の皆はどうだ? 聞きたい事があったら遠慮なく聞くんだぞ」


同級生が色々な事を聞いていた。


どうやらここは魔法と剣の世界、僕の世界で言うゲームの様な世界だった。


クラスメイトの一人工藤君が質問していた。


「ですが、僕たちはただの学生です、戦い何て知りません、確かにジョブとスキルを貰いましたが本当に戦えるのでしょうか?」


「大丈夫ですよ、ジョブとスキルもそうですが召喚された方々は召喚された時点で体力や魔力も考えられない位強くなっています、しかも鍛えれば鍛えるほど強くなります。この中で才能のある方は恐らく1週間位で騎士よりも強くなると思いますよ」


「それなら安心です...有難うございました」



「もう、聞きたい事はありませんか? それならこれから 能力測定をさせて頂きます。 測定といってもただ宝玉に触れて貰うだけだから安心してください...測定が終わったあとは歓迎の宴も用意させて頂いております、その後は部屋に案内しますのでゆっくりとくつろいで下さい」



測定する必要は無い、そう思ったが...ジョブやスキルが無いとどれだけ違うのか見た方が良いだろう。


その後すぐに水晶による能力測定の儀式が始まった。


これは異世界から召喚した者たちのスキルとジョブ、能力が見て取れるものだそうだ。


僕も並んだ。


測定を終えた者は皆、はしゃいでいた。


「僕は聖騎士だった、しかも聖魔法のジョブがあったんだこれアタリじゃないかな?」


「私も魔導士だった、最初から土魔法と火魔法が使えるみたい」


「いいなぁ私は魔法使いだって、どう見ても魔導士より下よね、魔法も火魔法しか無いんだもの」



《そうか、てっきりみんな自分のジョブやスキルは解っていると思っていたんだけど、何を貰ったのかここに来るまで解らなかったんだ...そう言えば全ては叶えられないませんが、そう言っていた気がする...測定して初めて解るそう言う事か?》


「気にする事はありませんよ! この世界では魔法使いになるには沢山の修行をして初めてなれるのです。魔法使いでも充分に凄い事です。」


「本当? 良かった!」


会話を聞く限り、魔法使いや騎士等が多いみたいだが、それでもハズレではなくこの世界で充分に凄いジョブらしい。


そしてアタリが恐らく、魔道士や聖騎士なのだろうか、そう考えると大当たりは勇者、聖女、賢者、剣聖、確かあの女神は僕の段階では与えられません...そう言っていた。


実際には、聞き耳を立てて聞いている限りでは、凄いと思えるようなジョブは今の所「賢者」と「聖騎士」位しかでて無さそうだった。


「やった、私、賢者だってさ、魔法も最初から4つもあるよ..当たりかなこれは」


《どうやら魔法を使う、最高のジョブは賢者か、そうすると魔導士は中アタリだな、大アタリは 勇者、聖女、賢者、剣聖だ。賢者のジョブの平城さんを見た時に担当の人が驚いた表情を見せていたから》


《大当たりがどの位凄いのか知りたい》


「平城さん、賢者なんて凄いね...僕はこれからなんだけど、どれだけ凄いのか気になるから教えてくれないかな?」


「礼二君かー 良いよその代わり礼二君の測定が終わったら私にも見せてね」


「うん、わかった」


「はい」


平城 綾子

LV 1

HP 180

MP 1800

ジョブ 賢者 異世界人

スキル:翻訳.アイテム収納、闇魔法レベル1 火魔法レベル1 風魔法レベル1 水魔法レベル1


「比べる人がいないから解らないけど..何だか凄そうだね」


「うん、賢者だからね!だけど、まだ他のジョブ 勇者も聖女も剣聖も出ていないから礼二君にもチャンスはあると思う」



「それはね、無いんだ..何故なら僕はスキルもジョブも貰わなかったからね」



「冗談だよね?」


「本当だよ..」


平城さんの顔が哀れみに変わったが気にはならない。


だって、僕は皆とは違った道を歩むのだから。



そして、僕の測定が始まった。


その結果は...


黒木 礼二

LV 1

HP 18

MP 0

ジョブ 無し 日本人

スキル:翻訳



要らないと言ったけど...あの女神、翻訳だけは勝手にくっけてきやがった。


成程...この世界の言葉が解る筈だ。


僕は何も要らないと言ったのにだ..まぁだけどこれは無いと困るから仕方ないのかも知れない。



「すみませんが、貴方だけ後でお話があります」


言われると思った...覚悟はしていた事だ。


「解りました」


それだけ答えると僕は平城さんの元へ向かった。


別に親しい訳じゃない...ただ、ジョブやスキルを見せる約束をしたから...見せに行くそれだけだ。



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