第50話 聖女の王都見学1日目
1週間後にはお城で壮行会が行われる。
結局、祥吾も梓も勝てない騎士が多くいる中、1週間後には冒険の旅に出ることになった。
本当にこれで大丈夫なのかな?
特に騎士団団長のプラートさんには三対一で戦っても勝てない。
こんなんで本当に良いのかな?
祥吾は一対一で勝てない人間が多分10人以上いる。
梓に至っては50人近く居るかも知れない。
「流石は勇者様です、既に中級を越えて上級騎士にすら手が届く位です...素晴らしい」
たしかに上級騎士にも勝ったよ...だけどそれはジョブは上級騎士だけど恐らく実戦経験が無い人だと思う。
テクニックみたいなものがある人には翻弄されて勝てない。
裏で卑怯といっていたけど、魔族は全員卑怯じゃ無いの?
戦争しているんだからさぁ。
多分、経験が足らない。
そんな経験、簡単に身につくの?
恐らく永い間戦いの末に身につくんじゃない?
その事が心配でプラートさんに相談したら「勇者様だから大丈夫ですよ」だって。
信じられない。
この城には治療師が沢山居て、魔法を教わったけど、この城の治療師は切断した腕や足すら繋ぐことが出来るのに、私はそこまで出来ない。
その事も相談したら「いつかは聖女様はハイヒールを覚えますし、もしかしたらパーフェクトヒール迄覚えますから大丈夫です」だって
それは何年後の事? そこまで生き残れるの?
剣だってそうだ。
最初に渡されるのは「ミスリルソード」らしい。
ミスリルって言えば凄いと思うかも知れないけど、上級騎士ならこの世界結構持っている。
お金のある冒険者も持っている。
ちょっと調べた...この城にある装備はプラートさんが持っている「アイスソード」倉庫には「白き癒しの杖」 宮廷魔道士長が持っている「破壊の魔杖」がある...欲しいと言ったら、プラートさんは「これは家宝なので譲れません」だって同じ理由で宮廷魔道士長も断ってきた...それじゃ倉庫にある「白き癒しの杖」だけでもと言ったら...
「歴代の聖女様はそんな卑しい事は言いませんでしたよ」
だって...ふざけるな...この世界、魔王が勝つと危ないんだよね?
最高装備渡すのが当たり前じゃないの...何で他人事みたいに言うの。
しかも私がこんなに言っているのに...祥吾も梓も他人事みたいに言うのよ。
「聖女なんだからみっもない、余り物欲しそうにするなよ」
「そうよこっち迄品格が疑われるわよ」
あの...何考えているの?
負けたら死ぬのよ、小説とは違うの。
戦う相手は、魔王なのよ、強い装備が欲しいというのは可笑しな事なの。
プラートさんに聞いてみた。
この国で一番強い人は誰かって....そしたら自分だって答えた。
他の騎士も同じ事を言った。
そしてその次に強いのは宮廷魔道士長のプラナさん。
そしてその次は同行してくれる大魔導士6人のリーダーらしい。
プラートさんの字は「人類最強」で本当に強いのだと思う。
お酒を飲ませてプラートさんと話しをした。
私は聖女だから襲われたりしないから安心だ。
「プラートさんは人類最強なんですよね、今迄で最高どんな魔物を倒したんですか?」
「俺は凄いぞ、トロールキングを一人で倒したんだぞ」
「ドラゴンとかじゃ無いんですか?」
「ドラゴン? そんな者誰が倒せるっていうんだよ」
「人類最強なんでしょう?」
「俺は人類最強...ドラゴンなんか無理だな、そんなの成長した勇者でも勝てない」
おい、今なんて言った!
魔王に仕える幹部にはドラゴニュートが居るって聞いた事がある。
かなり酔っているわね、今なら聞けるかな。
「祥吾や梓は歴代勇者達の中でどれ位強いと思う?」
「う~ん弱いんじゃないかな? 前の勇者が召喚されたのはもう何代か前だけどさぁ~1週間で城でだれも勝てなくなったって書いてあったから」
本当に詰みなんじゃないかな...泥船確定だよ、不味いわ。
次の日から1週間、自由な時間を貰った。
王都を離れたら結構不自由な生活を強いられるからという心遣いらしい。
祥吾と梓に一緒に行こうと誘われたが断った。
幾ら話しても話を聞いてくれない...頭の中で可哀想だがもう斬り捨てた。
親友って程でも無いから良いだろう。
警告は何回もしたけど、結局は話を聞かない。
まず最初に私は平城さんに会いに行った。
王都には平城さん位しか居ない。
少し前まで王立図書館に鈴木さんが居たそうだが...死んだらしい。
図書館に勤めて何で死ぬんだろう...これも調べたいが今は時間が無い。
平城さんはある意味、本当に賢者に相応しい位頭は良いし、仲は良かった。
「お久しぶり、水上さん」
久しぶりにあった平城さんは、髪がボサボサで目に隈があり、少し老けた気がした。
「どうしたの 平城さん、ヒール、どう少しは楽になった」
「ありがとう」
「何があったの?」
「私、ほら魔王と戦うのを放棄して就職を選んだじゃない...だからもう「賢者」とは扱われないんだってさぁ、朝から晩まで仕事して余り眠らせても貰ってない」
「だけど、貴方は凄く優秀じゃない」
「うん、だけど私が抜けたせいで優秀な魔導士6名持っていかれたって...それに此処を出たら私行く所無いし」
そんなの平城さんに関係ないわよ
横から男が入ってきた。
「おいクズ..喋ってないでこれすぐやれよ...さっさとしないと今日も徹夜させんぞ」
その男の周りに6人の男女が居た。
頭にきたわ..
「何、あなた?」
「なんだお前このクズの知り合いか? さっさと喋るの止めろ、この糞女」
「いい加減邪魔なのよ」
「ほら平城仕事に戻れ」
本当に頭きたわ..いいわ丁度よいわ
「ホーリーサークル」
「こんな所でそんな物使ったら死刑だぞ、止めろ今直ぐ、今なら許してやる」
「私は人なんか殺しても許される存在なのよ、私が貴方を殺しても王様も教皇様も許してくれるわ、ついでに女神様もね」
「何を言っているんだ、狂っている」
「平城さんは私の友達なのよ、その友達にはそういう事を許される存在がいる事忘れたの?」
「そんな」
「罪状、聖女侮辱罪、更に聖女の友人である、平城綾子を虐めた罪により...死刑」
そのまま杖を振り下ろした。
光のサークルがそのまま飛んでいき7名の首を跳ねた。
この状況に慌てて上司らしい男が駆けてきた。
魔法が使えそうな人間も数名いる。
出来損ないの聖女でもこれなら勝てる。
私は祥吾や梓と違う、生き残る為に努力する。
そうしないと死が待っている。
これは人だからと躊躇しない訓練。
プラートさんは言っていた。
初めて人を殺そうとした時、戸惑いが生じたと...
なら、安全に殺せる場所で《人を殺す経験》をした方が良い。
一応は女神の使徒である私には、勇者保護法が適用される。
だから、これは罪にならない...そして私に傷をつければ死罪だ。
「暴漢が職員を殺した、今直ぐ取り押さえろ」
「「はい」」
「私の名前は水上静香、聖女よ! この職員は私を糞女って呼んで馬鹿にして、友人の平城さんを馬鹿にしてこき使ったんだけど悪いのは誰かしら」
「せ..聖女様でしたか、ですが殺すなんてあんまりじゃ無いですか? 酷すぎる」
「この平城さんの窶れよう、酷いわよね? 友達なのわたし...こんな事するゴミ殺してもいいわよね」
「だからと言ってこれは」
「解ったわ、私から王に言うわ、アカデミーは賢者をこき使った挙句、聖女を馬鹿にしたって、ああっやっぱり、教皇様に言って、此処にいる者全員破門してもらいまっしょう...それが良いわ」
「これはアカデミーは関係ない、勝手にこのゴミがした事です」
「それで」
「平城くんにはもっと楽な部署で休日も保証します、私が必ずそうします」
「そう...なら週休3日、一日の労働は5時間以内でどうかしら? あと時々1か月単位のまとまった休み上げてね、月の給料は金貨6枚」
「そんな働き方ありません、理不尽すぎます」
「散々、理不尽な事していた貴方達が言うの? 駄目なら貴方殺してもっと上に掛け合うわ」
「や、約束しますから」
「そう、それならこのゴミかたずけておいてね...私がね平城さんにまた酷い事をした事を知ったら、貴方殺すわよ」
「解りました」
「あと言って置くけど、平城さんはまだ賢者なのよ! 国は何時か戻って欲しいから席は残してあるの...平城さんも私と同じ事しても許されるからね」
「嘘、私、そうなのですか?」
「そうよ、だから、頭にきたら灼熱呪文でも唱えて殺しちゃいなさいな」
「そんな...」
「あと6名の最強魔導士は私と共に旅に出るのよ、怒った平城さんに意見できる存在はアカデミーに居ないわよね? アカデミー長官も良く私のご機嫌をとるわよ」
「ごめんなさい...家族がいるんです、赦してください」
「なら平城さんにも謝って」
「平城くん悪かった」
「平城くんって何様...ムカついたわ」
私はホーリーサークルを放ち、一人の男を殺した。
さっき、馬鹿にした目で平城さんを見ていた奴だ。
「平城様、お許し下さい」
「まぁ良いわ、平城さんこれで、あら気絶しちゃったわね...今日は彼女休ませて頂戴」
「解りました」
もうこれで、平城さんは大丈夫かな...
私は冒険者ギルドに立ち寄った。
意外にも王都には他にも日本人らしい人が3人居ることが解った。
アポイントをお願いして明日又来る事を伝えた。
同級生の誰かかしら、もしかしたら、違う異世界人がいるって事。
貴重な情報が聞けるかも知れないわ。
もっと情報を集めないと...そうしないと詰んでしまう。
王城に帰ったが、何も問題になって無かった。
多分、聖女と賢者を恐れて内々に処理したのかも知れない...
だけど...ここで経験して良かった。
さっきから、吐き気がして体が震えている。
これが、人を殺したって事なの...さっきの光景を思いだし、恐怖の夜が訪れた。
怖くて寂しい夜が...
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