第55話 無事逃げられた。

水上さんとサナと街にでた。


三浦さんと湯浅さんは立ち直ってはいるけど男嫌いではある。


だから、用事が無ければ外に出ない。


まずはギルドに行き、水上さんの今後を考えないといけない。


ギルド職員が弁護士を兼ねているが



「困りましたね、水上静香さんの場合は先方に落ち度が見つかりません」


確かにそうだ、他の皆と違って酷い思いをしていない。


「その場合はどうなりますか?」


「法律としては2週間前の告知、一般的には1か月前の告知が必要です」


「そんな..」


「あの、このまま戻らなければ懲戒解雇になりませんか」


「それは勧められないのは解りますよね?」


確かにそれは良い事では無い、逆にお金をとられるかも知れない。


「うん、そうだ、そう言えば雇用契約書もかわして無いですよ、そうだよね水上さん」


「うん、書類なんて何も交わして無いよ」


「あの、雇用に雇用契約書は必要ないんですよ...あれっもしかして先方は労働条件の明示もされて居ないんじゃないですか?」


「それはどういう意味ですか?」


「雇用契約書は無くても良いですが、労働条件の明示は必要ですね、何か確認はされた記憶はありますか」


「魔王を倒す手伝いとしか聞いていません」


「その際の報酬は...」


「確かに勇者の祥吾はあるけど...私には無かったような気がします」



「それじゃ、それを元に先方に話してみますか、労働条件の通知書が無いんで、どうにかなりそうですね」


確かに僕が倉庫整理した時も細かい書類にサインをしていた。


当たり前だ。


「有難うございます」


よく考えたら...あれっ雇用であれば給料がある筈だ、多分全部未払いだ。



「あの、そう言えば、給料はどうなりますか? 平城さんも含めて教えて下さい」



「多分、平城さんの給料は恐らく礼二さんの口座にそろそろ入る筈ですよ、勿論水上さんも払われると思います、そうだ、今迄の給料未払いも止める原因にできますね」




大丈夫そうだ...後はギルドに全部任せよう。



その後、やはり水上さんは驚いていた。


「どんな仕組みでこんな事になるのよ」


「それは僕にも解らないけど、日本の生活に括られた感じかな」


そりぁそうだ。


僕だって最初は驚いた。


薬やに入ればドラックストア。


道具やに入ればコンビニやホームセンター。



「これって異世界に居ながら日本の生活が送れるって事だよね」


「全部じゃないけどね」


そう言いながら、水上さんはソフトクリームを食べている。


「やっぱり異世界って禄でもないよね、日本の方がずうっと良いや」


「僕もそう思うよ」


そう言いながら家に戻っていった。


そろそろ、家も小さく感じるようになった。


大きい場所に引っ越そうか真剣に考えよう。



【翌日】


「お話は全部終わりました、結論から言えば《本人都合の退職扱い》になりました」


「有難うございます」


「労働条件の提示が無かったので、そこから話をしまして、先方も2週間居て貰ってもまだ遠征先につかないから意味がないとの事でした」


確かに平城さんと違って事務仕事じゃないから、意味がないな。



「本当に良かったです」


「これで、私正式に聖女じゃ無くなったの?」


「そうだよ」


それを聞いた水上さんは安心したのか、涙を流していた。


《良かったね》本当にそう僕は思った。


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