第57話 【閑話】この世界に救いは無い。

今日はギルドに相談をしに来た。


日本には沢山の制度があり、当然僕はその全てを把握していない。


少なくとも、湯浅さんや三浦さんは日本でいうなら障碍者だ。


確か、日本には様様な優遇制度があった筈だ。


でも、僕は《身体障碍者手帳》位しか思いつかなかった。


この世界では全ての窓口が冒険者ギルドになっている。


ある意味凄く楽だ。


「はぁ、日本人特有の制度ですか、ちょっとお待ちください」



話を聞けば、《医療費限度額認定証》と言うのがあり、保険だけでありがたかったが、これを一緒に医療機関に出せば自己負担限度額で納まるという物だった。まぁ申請すれば後で帰ってくるお金だけど、支払いが少ないのは良い事だ。



勿論、《身体障碍者手帳》の申請もした、色々と手続きは大変だが1級の申請が通りそうだった。


一番のメリットは交通費だが...この世界だと馬車しかない、劇場の割引きもあるが余り見たいと思わないだろう。


ただ、税制のメリットもあるから申し込んでおいた方が良さそうだ。



心身障害者等福祉手当があった。


僕達が住んで居た場所の自治体にはこの制度があり、適応可能との事。


1人15500円、2人で31000円支給されるらしい。



義手はちょっと損をした。


先に身体障碍者手帳を取得してから申請して買えば、かなりの金額を補助して貰えたそうだ。


ちなみに他にも沢山の支援はあったが居住3年以上とかの制限があったので無理だった。


少なくも僕たちは何かあったら必ず、《ギルドに相談》


そういう癖をつけた方が良いかも知れない。



日本ってやっぱり素晴らしいと思う。


この世界では日本と違い手足の無い者など凄く多い。


スラムに行けば普通にいるし、物乞いしている者の多くは必ずどこか欠損している。


逆に言えばこんな世界だ、体が不自由でなければ同情なんてして貰ず、お金なんて恵んで貰えない。


女ならお金が無くなれば娼婦になるのが当たり前。


金が無いなら奴隷になるのが当たり前。


その奴隷でもまだ幸せだと言える。


顔に傷を負った女や、三浦さんや湯浅さんみたいな状態だと奴隷で無くても恐らくスラムでも地獄の様な思いをして死ぬ。


手が無ければ、弱ければ娼婦になってもお金を踏み倒されたり、払わないで逃げるような最低な男が多い。


実際に、権力のある人間や貴族が、娼館でやり逃げした話も聞いた事がある。


力が無い者は泣くしかない。


冒険者ギルドの依頼に《取り立て》もある位だ。


勿論、強い方、弱い方両方からだ。



魔王以前に女神イシュタスはこの現況をどうにかしろと言いたい。


魔王と戦う前に...既に貧困で死ぬ人間が多いこの世界を。



良く勇者が奴隷の少女を救い出す話もあるが...たった1人救った所で何が変わるんだ。


恐らく何も変わらない。


その裏で何百、何千の奴隷が死んでいく。


そんな救いに何の意味もない。


ただの美談の裏で惨劇は終わらない。



まぁ数人しか救おうとしていない、僕が言えた義理ではないが。





※ 各種制度はネットで聞きかじり程度です。


  現実とちがってもお許し下さい。



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