日曜日の外出

 土曜日の夜、蒼はお風呂場ですね毛を丁寧に剃っていた。

 そろそろ気温も上がってきてタイツ履いている方が少数派になってきたので、来週からは靴下にしようとおもっていた。女子に溶け込むためには多数派にいる方が楽だ。

 すね毛をただ剃っただけでは毛穴などが目立つけど、肌色のストッキングをはいた上から靴下をはけば、男っぽい足もなんとか女子っぽく見えると本田さんに教えてもらった。

 本田さんは1年生の時からスカート通学していたので、同級生ながら先輩のようにいろいろ教えてくれる。


 お風呂あがり体をふいて、入学前の買い物でかってもらった花柄のブラとショーツを身に着ける。黄色にピンクの花柄が最高にかわいい。下着なので誰かに見せるわけではないが、かわいいものを身に着けるとそれだけで自然とテンションがあがってくる。

化粧水と乳液でスキンケアを行った後、髪を乾かしリビングへ向かう。おそらく中学生の時よりも倍くらいは時間がかかっている。 

 女の子は昔から毎日していたと思うと尊敬の念を抱く。


 リビングのソファに腰かけテレビを見ていると、母が話しかけてきた。

「蒼、2週間ぐらいたつけどスカートは慣れた?」

「なんとか。クラスの女子もやさしいし。」

「ところで、明日買い物行かない?この前は、夕方から買い物だったからあんまりゆっくり見れなかったから。」

蒼は迷った感じをしながら「うん」とうなずく。


 あくる日、蒼は朝起きると手持ちの服の中で一番ユニセックス的な白のパーカーと母の茶色のプリーツスカートに着替えた。昨日は迷ったふりをしていたが、内心喜んでいた。


 春休み以来、制服以外は母のスカートを借りてきているが、年齢的なものもあり落ち着いた色の黒とか茶などが多い。かわいいスカートをきてみたいと思っていたところだった。またトップスに関しては、さすがに母とは肩幅などのサイズがちがうので、借りられるものがなく、欲しかったところだった。

1か月前は制服がスカートになることに対して抵抗があったのに、スカート履き始めてひと月もたたないうちに、新しい服が欲しいと思うようになってきた。

「女装はハマる」という気持ちがよくわかる。レディースの服の方が、色や形が豊富で楽しい。始業式の時、先生は心まで女の子になる必要は無いと言っていたが、少しずつ女の子になりつつある自分に気付く。


「蒼、準備できた?」と母から声がかかる。リビングに行くと母も外出の準備ができたようだ。

「そこに座って、休日だし蒼もメイクしてお買い物行きましょう。」といい、リビングの椅子に蒼を座らせた。

「高校生だからあんまり派手にはしない方がいいかな。ナチュラルな感じにするね。」といいながら、

顔にファンデーションをぬり、かるくアイラインをひき、アイブロウで眉毛の形を整えて、チークも軽くつけ最後にリップを塗ってくれた。

手鏡を渡されて自分の顔をみてみると、今までとはちがう自分がいた。

おもわず「かわいい。」と言ってしまう。

 母はナチュラルで軽くといっていたが、化粧の前と後では全然違う。男っぽい部分が巧みに隠されて、女の子っぽくなっている。自分の顔が自分の顔とは思えず、いつまでも鏡で自分の顔を見ていたい。満足そうな顔をしている母の姿が鏡越しに見えた。



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