日曜日の外出3

 服を買った後に化粧品コーナーにも行き、蒼用の化粧品を買ってくれた。そこでも店員さんに積極的に男であることをバラし、恥ずかしかる蒼を横目で見ながら店員さんにトランスジェンダーの息子を持つ母親を演じて楽しんでいた。


「そろそろお昼だから、ここで食べていこうか?」と母がいい、モール内のレストランフロアにあるファミリーレストランに入る。

 席に座りメニューをみて選んで見ると、以前は好きだった唐揚げやとんかつにはあまり食欲が出ず、パスタがいいかなと思いカルボナーラを選ぶ。それを母に小声で告げると、母が店員さんに

「カルボナーラとたらこパスタで、どちらもサラダスープセットで」

と注文してくれた。

 蒼が喋ると声で男バレするのを防いでくれた母の気遣いに感謝する。羞恥プレイは充分に堪能したから気がすんだみたいだ。


 注文したパスタが届き、食べながら母が話す、

「蒼、今日はありがとうね。子供が女の子だったら、こんな風に一緒に買い物するのが憧れだったの。」

「調子にのって高いワンピースや化粧品までねだってごめん。女の子の服って高いね。」

 最初のお店はプチプラがうりのお店だったので、トップス、スカート、カーディガン全部で一万円もしなかったが、蒼がおねだりして買ってもらったワンピースは、試着したときに気づいたが一万円を超えていた。化粧品も安めのブランドとはいえ、それなりの出費だった。

 それでも気に入っている蒼の姿をみて、母は何も言わず買ってくれた。母子家庭で家計にそんなに余裕はないはずなのに、舞い上がって余計な出費させたことに反省している。


「いいのよ。やっぱり高い服は生地がいいから服のラインがキレイにでるから、気にいるのもわかるよ。母さんもかわいいと思うし、蒼も気に入ってくれたならそれで良いよ。化粧品も必要なものだし、女の子はお金がかかるのわかってたから、去年仕事頑張って昇給したから気にしなくて良いよ。娘ができたみたいでうれしいの。」

「やっぱり母さん、女の子がほしかったの?」

「母さんなかなか子供ができなくてね、不妊治療も頑張ったんだけど、それでもなかかできなくて、ようやく身ごもったのが蒼で、最初は男の子でも女の子でもどちらが生まれてきてもうれしかったんだけど、母と娘で買い物している様子をみると羨ましくなって女の子も欲しくなったのよ。お父さんにもう一人っておねがいしたんだけど、不妊治療って男の側にも負担がかかるみたいで、それでお父さん浮気して、離婚ってなったんだけど。」

「お父さんって今何してるの?小学生の時ぐらいまでは会いに来てたけど、最近こないね。」

「その浮気相手と再婚して子供ができたみたい。それで会いに来なくなったんじゃない。でも、律儀に慰謝料と養育費代わりに今のマンションの住宅ローン払い続けてくれるから、母さんも会いに来てとはいってないの。」

「今お父さんが会いに来たら、びっくりするかもね。」

「蒼がなかなか制服のスカート着てくれなかったから心配したけど、今日こうやって一緒に買い物してくれるようになってうれしい。」


 母は春休みになる以前も、何度も制服のスカートを着るように勧めてきたことを思い出す。あれは今日みたいな日が早くくるのを願っていたのだなと思う。

 スカートに抵抗があって3月まで着なかったのは、ちょっと親不孝だったのかなと蒼は反省した。かわいい女の子になれば、母も喜んでくれるのかな?


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