日曜日の外出2
母の運転する車でショッピングモールに向かい、駐車場に止めモール内に入る。ここに来ると、3月の終わりに初めてのスカート外出で緊張していたことを思い出す。あれから3週間で、自分のスカートを買うために訪れることになるとは思ってもいなかった。
モール内にあるトレンドをおさえながもプチプラで有名なブランドのお店に入る。店内にはピンクや花柄など母が持っていない柄や色の服が並んでおり、見ているだけでも楽しい。母は若い人の服はよくわからないといいながら、色んなスカートやトップスを蒼にあてながら、こっちがかわいい、これも良さそうと言って楽しんでいるようだ。
そんな様子を見た店員が近づいてくる。
「お嬢様のお洋服をお探しですか?今年の春夏のトレンドは〜」
といい始めたあたりで、母が口をはさみ、
「いえ、息子なんですよ。」
積極的に男であることを告げた。2回目の買い物となる今日は、積極的に男とばらして困る蒼の様子を楽しむようだ。
蒼は母に「なんでバラすの?」と抗議の視線を送る。それに気づいた母は
「男だと試着できないかも知れないじゃない。大事なことは、先に言っておいた方がいいのよ。」
「最近は男性のお客様も珍しくはないですよ。息子さんでも試着できますので、ゆっくり見ていってください。」
と店員さんのフォローも入ったところで、試着する服を選びにかかる。
せっかくなので、母が持っていないような色と柄でかわいい服が欲しくなり、ピンクのシフォンブラウスと紺の花柄スカートを試着してみるのことした。
試着することを先程の店員に告げ試着室に入る。化粧がつかないようにと渡されたフェイスカバーを教えてもらったように使い着替える。
試着室の外では、母と店員が
「急にスカート履きたいっていいだしてね。男は男らしくって時代でもないから、本人が着たいものを着ればいいかな。」
「息子さんも理解のあるお母さまでよかったですね。」
と会話している声が聞こえる。
試着室の鏡で見ると、想像していたのと違う自分が写っていた。やっぱり男だと可愛くはなれないのかなと、落胆していながら試着室のカーテンを開ける。
「似合わないね」とつぶやいていたら、店員さんが
「これを合わせると良いですよ」
といい黒の薄手のカーディガンを手渡してきた。
言われた通り上から羽織ってみると、先程とは違い肩幅が目立たなくなり少しましにみえる。
「肩幅が広い方は上にもう一枚羽織って縦のラインを作るか、下のスカートにボリュームをもたせると良いですよ。」とプロらしいアドバイスをくれた。
「蒼、いいんじゃない。かわいいよ。」
母も気に入ってくれたようだ。
親子ともに気に入っている様子をみた店員さんが、「このまま着て帰りますか?」といってくれたので、着たままタグをとってもらって会計をすませてお店をでた。
お店のウィンドに映る姿がうれしくてつい見てしまう。かわいい女の子とまではいかないが、普通の女の子には慣れたような気がする。
3週間前このモールを訪れたときは、隠れるように母の背中をついて行ったが、今日は母と横に並びながら、一緒に買い物をしている。実際に買わなくても、店頭のマネキンを見てこんな感じの服もいいなとか、こんな組み合わせがあるのかなどおもいながら、お店を回るのが楽しい。買い物の楽しさがわかってきた。蒼が楽しそうにしている様子を見て、母も嬉しそうにしている。
その後別のお店も回りながら、店頭のマネキンが着ていたワンピースがあまりにかわいくて、ずっと見ていたら、
「試着してみる?」
と母がいうので、試着してみることになった。
茶色のティアードプリーツワンピースで、胸のところに切り替えがあるので、腰が高く見えて、男とばれにくそうだった。
試着してみてもイメージ通りだった。母におねだりして買ってもらうことにした。気に入った服を買ってもらって、嬉しくなる。こんな感情をもつなんてやっぱり心まで女の子になっていってるのかな?
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