春休み3
「買い物って、なにを買うの?」と蒼が言うと
「靴とか服とかよ。その髪型だと男物はもう似合わないでしょ。」
と母は嬉しそうに応えた。
美容室へは車で来て地下駐車場にとめそのままエレベータで美容室に入る間、誰ともすれちがわなかったので、店員以外には見られずに済んだが、ショッピングモールで買い物となると、他人に見られてしまう。
そんな蒼の心配を察したのか母は、
「大丈夫だって。その制服で、その髪型で、教えた通り女の子っぽく歩いていれば気づかれないって。それに、蒼が思うほど他人は自分をみてないものよ。」
ショッピングモールの駐車場に車を止め、店内へと歩き出す。
朝からスカート着ていたが、初めての屋外で外気を直接ふとももに感じて、スカートの心細さを感じた。女子ってこんなに頼りないものを着てで外を歩いていたんだと思う。
店内に入るためのエスカレーターでも、下から下着が見えていないか気になってしょうがない。
店内に入ると休日ということもあり、買い物する人で混雑している。そんな中、女子高生の格好して歩くのはすごく恥ずかしい。すれ違う人がみんな自分を見ているような気がする。
「蒼、下向いて猫背だと逆に目立つから、さっき教えた通り歩きなさい。」
母から言われ、家で教えてもらったように背筋を伸ばして、歩幅を狭くひざをあわせるように歩いてみる。すれ違う人も特に蒼のことを見ることもなく過ぎ去って行く、確かに母が言ったように誰も気にしてないようだ。
まずは靴からと、モールの中の靴屋に入り、ローファーと呼ばれる女子が履いている革靴とレディースのスニーカーを購入した。
店員との会話はほとんど母がやってくれたおかげで、25cmというサイズですこし不思議がられたが多分男だとばれずに済んだと思う。
つづいて母に下着売り場に連れていかれた。蒼はおもわず「下着も買うの?」と聞いてしまう。
「やっぱり胸のふくらみがないと、不自然だからつけた方がいいよ。」
何を?と聞くまでもそれがブラジャーを指していることぐらい、蒼はわかった。
男の時は女性の下着売り場は恥ずかしくて、足速に通り過ぎていたが、今日は自分のための下着を買うためにきているが、それでも落ち着かない。売り場を見てみると、男性用の下着にはない、ピンクや紫などの華やかな色と花柄やレースなどのデザインに目が奪われる。
「やっぱりサイズ測った方がいいわね。メジャー借りてくるね」
母はそう言って、店員にメジャーを借りに行った。数分後、母は店員と一緒に戻ってきた。
「やっぱりプロにもらった方がいいから。」
と母は言うが、息子が女性用下着を買うのを面白がっている。
ブレザーを脱いで店員さんに胸のサイズをはかってもらう。流石に筋肉質の平べったい体で店員も男であらことには気づいたみたいだが、
「サイズは80でカップはBぐらいですかね。」とビジネスライクに対応してくれたと思いきや、
「お客様のような場合は、ワンサイズ下のほうがいいといわれていますので、75Bで探された方がいいと思われます。」
とプロらしいアドバイスまでもらってしまった。
母に下着選びは任せてなにげなく売り場を見てみると、花柄のかわいいブラが目に入った。見とれていると、とりあえず3セットでいいかなと選び終わった母がやってきた。花柄のブラをみていた蒼に気づいたみたいで、「蒼も女の子になったね。」といいながら、そのブラも一緒に買ってくれた。
今日の朝までは普通の男の子だったのに、朝からスカートはいて、女の子の練習をしているうちに、少しずつ心も女の子になってきていることに自分でも気づき始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます