始業式

 4月7日になり、今日から2年生が始まる。まだ花粉が飛んでいる時期なので花粉症ということでごまかせるので、蒼は恥ずかしさもあってマスクをつけて登校した。

 歩いているときはあまり気にならなかった他人の視線が、電車の中だと気になる。なるべく顔を見られないように窓の方を見ながら立っているが、それでも男とばれていないかがすごく気になる。

 いつもより精神的に疲れて学校にたどり着き、始業式の朝教室にはいるとすでに何人か着ており、その中に同じ男子生徒で1年の時も同じクラスだった森本涼介がいた。森田と森本で似たような名前で、8人しかいない男子生徒ということもあり、入学直後からの親友だ。

 通学中は付けていたマスクを外し、蒼は涼介に声をかける、

「おはよう。涼介、いやこの格好だと涼ちゃんといった方がいいかな?」

「そうだね。家でもそれで呼ばれている。」

と涼ちゃんがこたえる。

着席するときにおしりに手をあて、プリーツスカートのひだがくずれないようにプリーツに沿って手を合わせて、きちんとももの裏に沿わせるしぐさをみて、

「その座り方家族に教えてもらった?うちも姉ちゃんから教えてもらった。」

どうやら涼ちゃんの家でも女の子講座があったようだ。


「森本君じゃなかった、森本さんかな?おはよう。あと森田さんもおはよう。スカート似合ってるね。二人とも髪カットしたんだね。森田さんの前髪かわいい。」

と1年の時のクラスメイト西野はるかが挨拶してきた。自分でも気に入っている前髪を褒められてすこし嬉しい。

女子がよくお互いの持ち物や髪型を褒めあっている理由がちょっと分かった。

 西野さんの制服はネクタイとスラックスだ。1年の時から、ネクタイとリボンはその日の気分で違うみたいだが、ボトムはいつもスラックスでスカート着てきた記憶がない。


 このクラスで3人しかいない男子の残り一人の本田圭佑も教室に入ってきて、慣れたてつきでスカートを伸ばしながら着席した。

 彼は1年のときは違うクラスだったので、詳しくは知らないが1年の夏休み明け9月ごろから、スカートで登校いていたらしい。周りには来年からスカートだから早めに慣れておきたいと言っていたみたいだが、多分本当のトランスジェンダーなんだろう。

 そんな彼もスカートで通学しやすい環境ができているなら、こんな校則も意味があるのかなと思ってしまう。

 男子でもスカート選択できるというだけでは、周りにカミングアウトする必要があるし、そもそも入学前の制服採寸のときにスカート試着している時点で周りから変な目で見られてしまう。


 そんなことを考えていると、担任の先生が教室に入ってきた。

「皆さんおはようございます。2年2組の担任になります松尾めぐみです。1年間よろしくおねがいします。さて、今日から男子はスカート指定となりまして、2組にも3人男子生徒がいます。制服がスカートなだけで、心まで女の子にはなる必要はありませんが、ハクジョの生徒として恥じない行動はとってください。電車などで股を開いて座るなどすると、ハクジョの名も汚れますし、何よりその本人な恥ずかい思いをします。女子生徒の皆さんは、女の子の嗜みの部分については、遠慮なく教えてあげてください。さて体育館で始業式があるから移動してください。」


 体育館での始業式を終え、教室に戻る途中でトイレに寄った。この学校では男子トイレも全部個室でいわゆる小便器はない。用をすませて個室をでると、手洗い場の鏡で本田さんが前髪を直していた。それをみて自分の前髪も気になり手を洗った後に前髪を直してみる。直しながら女子がよく手鏡などで前髪を直していたのを思い出し、それをみて前髪が数ミリ位置がかわってもかわらないよと心の中でバカにしていた過去の自分の行いを反省した。

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