夏休み 8月
7月の夏期講習の最終日最後の授業も終わり、蒼がようやく明日から本当の夏休みだと解放感に浸っていると、理恵ちゃんが2組の教室に入ってきて、蒼の前で両手を合わせお願いのポーズをしながら、
「蒼ちゃん、夏休みの課題量も質もおおくて大変だよね。そこで、蒼ちゃんの家で夏休みの課題みんなで集まってやりたいんだけど駄目?いつものテスト勉強みたいに教えあえば一人でやるよりも速く終わると思うんだ。」といった。
「みんなって、はるちゃんも涼ちゃんもくるの?」と蒼はいいながら後ろの席にいる涼ちゃんを振り返ってみた。
「私も2時間目の休憩時間に、トイレで理恵ちゃんとはるちゃんにあってその時に聞いた。」どうやらほかのメンバーは知っていたみたいだ。
「母親にいいかはどうかは今日聞いてみるね。あとでラインに連絡するね。」
といいながら、期末テスト後にみんなで遊びに行って以来、久しぶりに学校の外でみんなにあえることに蒼は胸が躍った。
その夜、夕ご飯を母親と一緒に食べながら、昼の件をお願いしてみた。
「それはいいけど、日程決まったら教えてね。家を掃除したりとかおもてなし用のお菓子とか買ったりしておかないいけないから。」とあっさり了承してもらった。
母の好感触な反応に、蒼はにもう一つのお願いもしてみた。
「お母さんもう一つお願いがあるんだけど、その日に着る服買ってもいい?それでお小遣いが足りないんだけど、前借りでもらっていい?」
いままでお小遣いもらっても、参考書やおやつを買うぐらいであまり使い切ることなくたまっていく一方だったが、2年生になってからは文具を女子がもっているようなかわいいものに買い替えたり、部屋着やナイトウェアも女子用に買ったりしていたので、今までた貯めていたお小遣いやお年玉は、新しい服を買うには心細い金額に減っていた。
この前と同じワンピースでも構わなかったが、どうしても他にかわいい服が欲しくなってきて、女手一つで育てくれている母親におねだりするのは気が引けたがお願いしてみた。
「蒼、そのグループの中に好きな子がいるのね。男子?女子?」
と予想外の質問が母から帰ってきた。なぜばれたと動揺しながらも、
「女の子だよ。その子にもっとかわいい服着た姿をみせたいの。でもなんでわかったの?」と蒼が質問すると、
「この前みんなに遊びに行った日、お母さんにメイクをお願いしてきたでしょ、あと靴もかわいいのを買ってきてあったし、そこでピンと来たんだ。蒼、今恋してるって。やっぱり好きな人の前ではかわいくなりたいよね。」
と言って、母は財布から1万円札をぬいて蒼に渡してくれた。
みんなで勉強会をする前日、服を買うために蒼はショッピングモールにいた。以前母とも買い物に来たことのあるプチプラなブランドのお店で服を見て回る。
ピンクのスカートが目に入る。いままでピンクは、あまり注目されると男ばれする確率があるので、人の目を気にして避けていた。でも明日は家の中だから男ばれについては気にしなくてもいいので、ピンクも選択肢に入れてもいいかなと思ってみていると、後ろから声をかけられた。またしても中学の同級生の森若さんだった。
「森田君、また会ったね。ひょっとしてピンクのスカート着たいの?わかるよ、やっぱり女の子になったのならピンク着たいよね。」
と森若さんはまだ蒼が女の子になりたいと誤解したままのようだ。
蒼は訂正しようかと思ったが、今のスカート履いたままで新しくスカートを買いに来ている状況では、説得力ないよなとおもい訂正はあきらめる。
「大丈夫、最近は落ち着いたピンクもあるからそんなに派手じゃないよ。ほらこれなんかどう?かわいいよ。」
といい森若さんは、蒼に服を差し出す。後ろにある大きめのリボンで結ぶタイプのジャンスカワンピースで、肩紐の小さなフリルがあってフェミニンな感じだ。裾もフレアに広がっているので、トップスに黒をもってくれば、蒼でも似合いそうだ。
蒼の気に入った様子をみて、森若さんは店員さんを呼んできた。
「彼こう見えて男ですけど、試着大丈夫ですか?」
と森若さんが確認すると、
「大丈夫ですよ。あっ先日はお買い上げありがとうございました。」
先日母と買い物にきた時と同じ店員さんが、蒼のこと覚えていたみたいだ。
試着室で着替えている間も、
「中学時代の同級生で、そのときに気づいていれば協力できたのにと思っていたんですけど、今日また会えたのでよかったです。」
「4月に来た時よりも、女の子っぽくなってきてびっくりしました。」
などの森若さんと店員さんの会話が聞こえてくる。
着替えがおわり鏡で確認してみるが、下にボリュームがあるので思った通り違和感なく切れていると思う。カーテンをあけ、森若さんと店員さんにもみせたがかわいいと言ってくれた。
会計後服を袋に入れてもらっている間、
「ひょっとしてデート服?森田君いや森田さんも女の子になってまだ数か月なのに、彼氏ができたんだ。よかったね。」
とまた勘違いを重ねた発言をして、森若さんは友達と待ち合わせしているからと去っていた。
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