期末テスト後のお楽しみ2

 蒼たち4人は、駅からアミューズメント施設にむけ移動を始めた。前を涼ちゃんと理恵ちゃんが歩き、その後ろをはるちゃんと蒼が続く。後ろから見ると見た目は女の子4人の女子会っぽいけど、性別としては男女2人ずつなのでこれってダブルデートやグループ交際って言うのかなと蒼が思った。そう思うと余計にはるちゃんを意識して、胸の鼓動が速くなる。


 目的のアミューズメント施設に到着し受付をすませる。まずはボウリングすることになった。ボウリング場でレンタルシューズを受け取り、ボールを選ぶ。

 蒼は女の子っぽく軽めのボールを選んだ方がいいかなと思ったが、軽めのボールは指が入らないので、結局指が入る中で一番軽いボールを選んだ。涼ちゃんも同じようだ。

 全員ボールを選び終わったところでゲームを始める。蒼はもともと運動神経は悪い方で、ボウリングは3回目であまり上手くなかったが、理恵ちゃんは上手でストライクやスペアを連発する。理恵ちゃんは、バレー部でも2年生にしてレギュラーになるぐらい、運動神経がいい。

はるちゃんと涼ちゃんは、理恵ちゃんには劣るものの蒼よりは上手だ。

 4フレーム目にストライクをとったはるちゃんが、ハイタッチをしに戻ってくる。蒼とはるちゃんの手が触れる。考えてみれば、はるちゃんの体に触れるのは初めてだ。手が触れた瞬間、心拍数が上がる。

 蒼はストライクを取ればハイタッチできると頑張ってみたものの、なかなかストライクなかった。それでも最終10フレームでストライクをとると、ハイタッチを求めてみんなのもとに向かう。理恵ちゃん、涼ちゃん、はるちゃんの順でハイタッチしていく。はるちゃんとハイタッチしたとき、理恵ちゃん、涼ちゃんとしたときとは、ちがう感触が全身に広がる。


 ボウリングを終えたは、理恵ちゃんがダーツしてみたいというのでダーツコーナーへ移動する。蒼はダーツをしたことなく、理恵ちゃんも今日が初めてで、はるちゃんと涼ちゃんはやったことがあると言っていた。

 ダーツボードまでの距離は2メートルちょっということでまじかにみえるが、意外と思ったように当たらない。はるちゃんと涼ちゃんもやったことがあるといっても初心者レベルみたいで、結局4人とも似たり寄ったりの低い点数だった。それでも4人でワイワイと遊んでいると楽しい。

 ひとしきり遊んで、もうそろそろお昼ご飯を食べる時間になってきたので、移動しようとしたところ、

「最後にみんなでプリクラ撮ろう。」と理恵ちゃんが言い、

プリクラがあるコーナーへ向かうことになった。蒼はプリクラは女性限定となっているところもあり、女性のものというイメージがありいままで近づいたこともなかった。理恵ちゃんとはるちゃんが、どの機種がいいか選んでいる間、蒼は涼ちゃんに、

「私は初めてだけど、涼ちゃんはプリクラしたことある?」と尋ねる。

「去年までなかったけど、2年生になって女の子の格好をするようになってから、姉に連れられて撮ったことがあるよ。美白機能やメイク機能があってすごいよ。」

 機種を選び終わった理恵ちゃんとはるちゃんに連れられて、撮影を開始する。撮影後の加工は慣れている理恵ちゃんとはるちゃんに任せて、出来上がりを楽しみに待つことにする。

 数分後、「お待たせ、できたよ」と印刷されたプリクラをみんなに配ってくれた。

機能をフル活用してかなり盛ってくれたおかげで、蒼は実物よりもかなり女の子っぽくなっていた。


 アミューズメント施設をでて昼食をとるために駅前にあるファミレスに向かう。お店に入ってすぐ、涼ちゃんが「お手洗い行ってくるので、先に行ってて。」と言いお手洗いに行った。案内された席に座って、メニューを選びながら涼ちゃんの帰りを待つ。「ごめん、お待たせ」と言いながら戻ってきた涼ちゃんは、蒼に小声で、

「ここのトイレ大丈夫だったよ。」と教えてくれる。


 メニューを選んだ後、蒼はみんなに

「私もお手洗い行ってくるから、このパスタセット頼んでもらっていい?。」

といって、お手洗いに向かう。

 男子用、女子用のほかに多目的トイレもあり、多目的トイレに入る。外出時のトイレには毎回苦労する。最近は多目的トイレの普及がすすんで助かっているが、多目的トイレがないと苦労する。

 女子トイレに入ろうとも思わないが、それでもこの格好で男子トイレに入るのには抵抗がある。多目的トイレがない場合、中に誰もいないことを祈りつつトイレに入り、個室トイレに駆け込むことになる。

 トイレで用を済ませた後、バックから化粧ポーチをだし化粧直しを始める。伸びてきた髭を電気シェーバーでそり、ファンデーションを塗りなおす。

 女の子になる魔法には時間制限があり、また魔法をかける必要がある。


  注文した料理が届き、それを食べながらおしゃべりをする。テストのこと、今日のボウリングのこと、すきな音楽のこと、先生のことなど話題はコロコロ変わる。1年の時は数少ない男子の間でしか交流がなく、女子とはあまり雑談してこなかったが、2年になって女子とのおしゃべりの機会が増えてきた。

 最初のうちはとくに結論も出ず、落ちもなく、話題がころころ変わっいくガールズトークについていけなかったが、相手の話を否定せずに共感の相槌をするという暗黙のルールも最近は理解できてきた。

 でもいまだにどの話題が適切なのかわからないので、とくにこちらか話題をふることはなく、質問されたときに返事をする程度だが、それでも女子の会話に入れてもらえていることが、女子として認められると感じて楽しい。

 今日も積極的に話題を提供する理恵ちゃん、笑顔で楽しく話しているはるちゃん、涼ちゃんをみながら、蒼は充実した休日を過ごしながら男の子にも女の子にもなれなくても、今この瞬間が楽しければと良いと割り切れるようになってきた。



 

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