中間テスト後
蒼は中間テストの最終科目も終わり、解放感に浸りながら、教室でお弁当を食べようと鞄からお弁当を取り出していたとき、理恵ちゃんが2組の教室に入ってきた。
「蒼ちゃん、一緒にお弁当食べていい?」
2学期になってから理恵ちゃんは、ときどき2組の教室に入ってきて一緒にお弁当を食べている。涼ちゃんは家では元栄養士の母がつくる健康的なメニューばかりなので、たまにはラーメンなどジャンクなものが食べたいと今日は学食だし、はるちゃんも今日は学食に行っている。結果、今日は理恵ちゃんと二人でお弁当を食べる。
「数学のテスト難しかったね。積分の計算が面倒だから苦手。蒼ちゃん解けた?」
「なんとか解けたと思うけど、時間に追われて慌てて計算したから、計算ミスしていないか不安。」
テスト前に災難があったが、みんなのおかげで立ち直ってなんとかテストを乗り切れることができた。
「日曜日はこの前と同じで駅に10時でいい?」
日曜日はテスト後の打ち上げと落ち込んでいる蒼を励ますために、期末テストのときと同じように遊びに行こうということになっていた。
「うん、楽しみだね。蒼ちゃんお願いだけど、8月に家に行った時着ていたワンピースできて。」
理恵ちゃんが笑顔でお願いしてきた。
「ピンク外に着ていって、大丈夫かな?あんまり目立つと男ってばれちゃう。」
「あのピンクは、あんまり派手じゃないから大丈夫だよ。黒とか合わせると、落ち着いてみえるからあまり目立たないよ。それにバレてもいいじゃん。男だからスカート履いたら駄目って決まっているわけじゃないし、似合っているから見てて不快感ないし。ね、お願い!」
理恵ちゃんは執拗にお願いしてきた。褒められるとやっぱり嬉しいので、勇気をもってピンクのワンピースを着ていくことにした。
日曜日の朝、蒼は外出のために着替え始める。ジャンパーワンピースに白の長袖のトップスを合わせて、黒のカーディガンを羽織る。
姿見で全身を見てみると、黒のカーディガンが引き締めて背中のバックリボンも隠れているので甘さ抑えめで、ピンクといってもそんなに目立たない感じなっている。組み合わせで印象が変わるのが、女の子のファションの楽しいところだ。
駅に着くと、涼ちゃんと理恵ちゃんは先に着いて待っていた。
「ごめん、お待たせ。はるちゃんはまだ?」
蒼が尋ねると、
「私たちも今着たところ。はるは少し遅れるってラインがさっきあった。」
そう答えた理恵ちゃんは、黒のジャンパーワンピースとピンクと白のボーダーシャツを合わせている。涼ちゃんは、薄いピンクのトップスとワインレッドのスカートを合わせいる。スカートの丈は短めだが、黒タイツを履いているので男であることがバレやすいひざが隠れている。
「涼ちゃん、そのスカート可愛いね。」
「ありがとう。お姉ちゃんと買い物に行って買ってもらったんだ。少し丈が短くて抵抗あったけど、黒タイツと合わせたらあまり恥ずかしくはないね。」
みんな久しぶりの私服で、お互いにかわいいと褒めあっているところに、
「みんなお待たせ。ごめん、一本乗り遅れた。」
白のパーカーと茶色のプリーツスカートを着た、はるちゃんが両手をあわせて駆け寄ってきた。
「はるちゃん、スカート?」とみんなで驚くと、
「これ、スカートっぽく見えるキュロットだよ。」
はるちゃんはプリーツの部分を少しめくって、キュロットの股の部分を見せてくれた。
「蒼ちゃんと涼ちゃんが男子なのにスカート履いていてのに、私女子なのにスカート履く権利を自分で捨ててしまうのも、もったないかなと思って。でもいきなりスカートも抵抗があって、これなら履けるかなと思って買ってみた。」
7月と同じアミューズメント施設に向かいながら、はるちゃんはスカートを履かなくなった理由を話してくれた。
「その男子ひどい~。でも多分、好きな子に意地悪したくなる男子特有の悪いところだね。」
「今のはるちゃんは髪も伸びてかわいいから、きっとハクジョの制服似合うよ。」
とみんなではるちゃんを励ました。
この前と同じようにボウリングなどで遊んだ後、ファミレスで昼ご飯を食べることになった。遊んだ充実感とテストが終わった解放感で、おしゃべりも弾む。
「ところで蒼ちゃんと涼ちゃんは、3年になったらスカート履かなくなるの?」
「1年間女子高生楽しんだから、男に戻りたいけどお姉ちゃんが許すかな?」
涼ちゃんは、姉からハクジョ男子になるための教育をうけ、実は中学2年の時からスカート履いていたことを告白した。涼ちゃんも母と姉はちがうが、身内の希望で女の子になったみたいだ。
蒼も、娘が欲しかった母から男子の制服はスカートっていうこと知らされずに、白石高校受験させられた話をした。そして、
「でも、いまは女子高生になれてよかったと思う。怖い思いもしたけど、ファッションとか楽しいし、許されるならずっとスカート履いていたい。」
「許す。許すからずっと女の子でいて。」
と理恵ちゃんが言って、みんなで笑った。
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