昼休み~東野理恵~

 昼休みになり東野理恵はクラスメイトとお弁当を食べ始めた。食事中、ドラマや男性アイドルグループの話題になるが、理恵は話は合わせはするが正直この話題は好きではなかった。

 本当は「ごめん、ドラマ見てないんだ。」ですませたいところだが、付き合いを考えると話しを合わせるために、一応主演の俳優の名前と役どころぐらいはチェックして、あらすじもネットで調べている。手間ではあるが、理恵が男性に興味を持てないということを知られたくないので、多少の手間は仕方ないと割り切っている。


 男性アイドルをみてカッコいいとは思うが、恋愛対象としてみれずあまり興味をもてない。男性アイドルに限らず男性そのものが、理恵の恋愛対象ではないのかも知れない。

 中学時代クラスの男子から好意を寄せられたが、その時の感情は嬉しいよりもむしろ不快だった。同世代の男子はがさつで汚い存在で、女子、特にかわいい子と一緒にいるほうが楽しかった。男子を好きになれないのは、同性愛なのか、好みのタイプの男性と出会っていないだけなのか、区別がつかない日々を過ごしていた。

 そんなときに、ファションの一つとして女装はするが心は男のままで、恋愛対象も女性という「男の娘」「女装男子」という存在を知った。同じ男でも同級生の男子とは比べ物にならないぐらい、オシャレで可愛かった。こんな感じの男性なら自分でも恋愛できるかもと思った。

 スカートを履く男子と言えばハクジョ男子のことは地元なのでしっていたが、偏差値の高さから白石高校は自分とは別世界とおもっていた。ハクジョ男子に会いたい一心で、理恵は猛勉強を始め結果合格できて、ハクジョ男子に会える日を楽しみにしていた。


 しかし、白石高校に入学したものの1年のクラスは全員女子で、男子の制服がスカートになる2年生のクラスにも男子はいなかった。このままでは、勉強頑張って白石高校にきた意味がない。そこで同じバレー部のはるに頼んで、2組のハクジョ男子のいる勉強グループに入れてもらった。

 初めてあったハクジョ男子は、テレビで見たような美少女という訳ではなかったが、それでも二人とも懸命に女の子になろうしている感じがして、それがいじらしかくかわいかった。また、会うたびに少しずつ女の子として成長していく姿を見て行くのも楽しかった。

 私服もスカートと言っていたから、私服はどんな感じだろうと気になり、テストの打ち上げを企画してみた。二人の私服はフェミニンな感じで、メイクまでしていて可愛かった。

 彼ら二人は男子だが、中学までの男子とは違い汚くないしガサツでもない。また話の話題も理恵の好きなファションの話が多く、男性アイドルの話しかしないクラスメイトよりも、一緒にいて楽しい。

 特に蒼ちゃんは最近ますます可愛くなってきて、8月に自宅に行ったときのワンピース姿には胸がキュンとした。蒼ちゃんのことを好きになり始めているが、蒼ちゃんは来年になったらまた男に戻るかもしれない。ハクジョ男子ではない蒼ちゃんを好きなままでいられる自信がない。

 こんな中途半端な気持ちで思いを告げるのは蒼ちゃんには悪いので、まだこの思いは秘密にしている。


 昼休み終了の予鈴が鳴ったところで、お手洗いにいくために教室をでる。お手洗いに向かう途中で、涼ちゃんにあった。

「涼ちゃん、今度の日曜日、市民体育館でバレー部の試合があるの。よかったら、蒼ちゃんも誘って観に来て。はるも多分出番あると思うよ。それで終わったら、一緒に昼ごはん食べよう。」

と涼ちゃんたちを誘ってみた。

 「もちろん、行くよ。蒼には言っておくから。」

と嬉しそうな表情で涼ちゃんはいい、2組の教室に戻っていった。

 蒼ちゃんが応援に来てくれる。今度の日曜も楽しくなりそうだ。


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