家庭の格差
4月も中旬が過ぎ大学生活にも少し慣れ始めたころ、蒼は久しぶりにはるちゃんたちと遊ぶ約束をしていた。
高校のころは毎日あっていたのに、大学に入ると会わなくなってしまった。同じ大学なので、売店などで見かけることはあっても、高校のころのようにずっと一緒というわけではない。久しぶりの再会に心が躍る。
心待ちにしていた蒼が一番初めに集合場所に到着すると、そのあとすぐに理恵ちゃんと涼ちゃんが二人一緒にやってきた。
「理恵ちゃん、髪の毛染めて、パーマもしたの?」
「うん、大学デビューしちゃった。」
髪の毛も明るく染めて、パーマもしていた。高校時代と同じように後ろで結んでいるが、パーマでウェーブがかかった髪だと印象がかなり違って見える。高校時代は元気な女の子って感じだったが、髪型が変わると印象も変わり今は女の子というより大人の女性という印象を受ける。
「理恵ちゃんは、何してもかわいいよ。私も染めようかな。」
「涼ちゃんもしなよ。」
蒼も髪の毛を染めたり、パーマかけたりしてみたいが、通っている美容室の料金表の金額を思い出しちょっと躊躇してしまう。
「お待たせ。理恵ちゃん、髪型変えたね。」
「はるも、染めたんだ。かわいい。」
遅れてやったきたはるちゃんも髪の毛を染めていた。みんなが染め出すと黒髪のままいることが、蒼はちょっと恥ずかしくなってきた。
そのあとボウリングにダーツとひとしきり遊んだ後、理恵ちゃんが「お腹すいた」というので、近くのファミレスに入りおやつタイムとなった。
「はるは、結局バレー同好会入ったの?」
アイスコーヒーを飲みながら、理恵ちゃんがはるちゃんに聞いた。
「うん、他も見たけど、結局バレーにしたよ。楽しそうな雰囲気だったし。」
「同好会と部ってちがうの?」
「部はインカレとか目指すガチなところで、同好会は趣味でみんなで楽しくって感じかな。部だとインターハイとか全国レベルの人たちもいるから、私たちとはレベルが違う感じかな。」
蒼が入った囲碁部は初心者歓迎だったが、体育会系だとそんな区分があることに驚いた。
「理恵ちゃんはサークル決めた?」
「うん、バドミントン同好会にしたよ。高校の時体育でやって楽しかったから、趣味でやるにはいいかなと思って。」
「私もバドミントン同好会にしたよ。この前、初めてやったけど楽しかった。」
涼ちゃんは頭を理恵ちゃんの方に傾けながら言った。
「涼ちゃん、着替える時とかどうしてるの?」
蒼が気になっていたことを聞いた。
「普通に他の男子と一緒に着替えたよ。逆に向こうの方が気にして、私が着替え始めるとみんな出ていっちゃった。」
涼ちゃんは何の問題もないとあっけらかんと話した。
「蒼ちゃんは?」
「囲碁部。工学部で仲良くなった子が入るって言うから、初心者でもOKだったし一緒に入っちゃった。」
「囲碁部か、蒼ちゃんらしいと言えばらしいね。ところで『子』ってことは、仲良くなったのは女の子だね。」
理恵ちゃんは蒼の発言にするどくツッコんできた。蒼が女の子と仲良くなったことを知って、はるちゃんの鋭い視線が蒼に突き刺さった。
「はるちゃん、ちゃんと彼女いるって言ったし大丈夫だよ。」
蒼の言い訳を完全に信じたわけではないが、はるちゃんは一応は納得したような表情になった。
注文したケーキはみんな食べ終わったが、みんな久しぶりの再会で話したいことがまだあるようで、ドリンクを飲みながらおしゃべりが続いていた。
「先週、自動車学校に入ったよ。みんなは免許いつとる?」
カルピスソーダを飲みながら、涼ちゃんが思い出したように言った。
「涼ちゃん早いね。私は、夏休みかな?」
「私も夏休みに合宿免許に行こうかなと思ってる。」
「合宿言っている間、理恵ちゃんと会えなくなる。私も合宿にすればよかった。」
「蒼ちゃんは?」
「まだ、考えてない。学校生活になれるのが先かなと思って。」
大学の売店に置かれてあった自動車学校のパンフレットをみたが、費用の方が気になりまだ具体的にとる予定が立っていなかった。
みんなと別れて帰りの電車の中、蒼は少し落ち込んでいた。もちろん、久しぶりにみんなにあって楽しかったが、高校時代には感じなかった家庭の格差を感じてしまった。
自動車免許以外にも海外旅行の話題など理恵ちゃんたちは当たり前のように口にするが、大学の教科書代も負担に感じている蒼にとっては考えてもいないことだった。
バイトしてお金を稼がないと、充実した大学生活は送れないようだ。
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