第39話 隠れた思惑~??視点~&気づいた犯人~海斗視点~
辺りを照らすのは、PCのブルーライトの光だけ。
そこで聞こえるのは、カタカタカタというタイピングの音のみ。
デスクトップPCの前に座る人影は、ただひたすら無心にPC画面に向かって何かを打ち込んでいる。
すると、PCの右下にメッセージが届いたことを知らせる通知が届き、タイピングの手を止めた。
マウスカーソルを通知へと持っていき、カチっとクリックする。
しばらくしてPC画面に開かれたのは、スマホメッセージアプリのWeb版ページ。
そこのとある人物から届いたメッセージをクリックする。
すると、トーク画面上には、とある人物から送られてきた大津紗季先生と須賀海斗のツーショット写真が貼られていた。
画像を確認しながら画面をスクロールしていくと、最後にとある人物からのメッセージが一言だけ添えられている。
『これで全部だ。あとは頼んだ』
そのメッセージに対して、暗闇にいる人物は素早いタイピングで返事を打ち込む。
『わかった、いつもありがとう』
『……なぁ』
『ん、何?』
『あんまり罪を重ねすぎるのも良くないぞ? これくらいで最後にしておいたらどうだ?』
『いいの。これは私への罰だから。あんたはとにかくこれからも定期的に収集よろしく』
『……分かったよ』
『ん、それでいい』
会話が途切れてから、先ほど送られてきた画像を右クリックで保存して、今度はSNS短文投稿サイトのPC版をブラウザで開く。
基本的にはスマホと使い方は同じなので、投稿ボタンを押して文章を打ち込んでいく。
皆の注目が集まるような文章を打ち込み、先ほど送られてきた写真を添付する。
そして、投稿ボタンをポチリと押して本日のミッション完了。
タイムラインに映し出されたのは、『二年二組大津先生と二年二組須賀海斗。朝からムフフな秘密の勉強か?』という文とともに、二人が教室内で意味ありげに話している画像が今、ネットの海にばらまかれたのである。
そのアカウントの名は、『
次に開いたのは、とあるWebサイト。
その名も、『
掲示板へ投稿したURLを張り付け、文字を入力する。
そして、再び投稿ボタンを押して、任務完了。
『この二人、完全に黒。教師と生徒とか、マジでキモイわwww』
このコメントに対して、すぐに
『わかるわー! 年下の生徒に手出すとか、マジキモイ』
『生徒でも先生に手を出すのはクズ』
『マジでキモイ。死ねばいいのに』
そんなどちらも非難するようなコメントの数々が飛び交う。
さらに、短文SNS投稿サイトの方でも、多くのリプや拡散が始まっており、引っ切り無しに通知が届く。
その様子を眺めながら、ため息を吐いてしまう。
「ホント全員クソすぎ。こんな情報に踊らされて、死ねばいいのに」
無機質なほどに冷めた声は、暗闇にいる人物の今の心情そのものだった。
わいわいと噂に踊らされて騒ぐ生徒たちを見ていると、
「はぁ……」
そして暗闇の中で、大きくため息を吐いてしまう。
こんなことをしても、誰も
でも、これは仕方の無いことなのだ。
だってこれは、私に課された罰。
私の
◇◇◇
SNSでばらまかれた投稿に海斗が気づいたのは、投稿されてから二時間後のこと。
予備校で勉強を終えて、帰宅しようとした所で木下さんに呼び止められたのだ。
「須賀、須賀ってば!」
後ろから追いかけてきた木下さんに肩を掴まれ、俺は嫌そうな顔で振り向く。
「……なんだよ?」
嫌悪感丸出しの表情で尋ねると、木下さんは眉間に皺を寄せ、少しムッとした表情でスマホの画面をこちらへ向けてくる。
「これ……どういうこと?」
「……はっ?」
そこに映っていたのは、朝の教室で俺と紗季先生が仲睦まじい様子で話している姿を盗撮された画像だった。
「あんた……まさか本当に大津先生と付き合ってんの?」
木下さんは圧のある目で確認の意を問うてくる。
「なわけねぇだろ! 俺もこのBOTには迷惑してんだ。おかげでこっちの学校生活丸つぶれなんだよ」
俺が怒気強めで言葉を返したからか、木下さんは俺のことを信用してくれたらしい。
「そっ……なら、どうしてこんなことになってるの?」
「そりゃ……俺が知りたいくらいだっての」
そう、本当に俺にも意図が読めないのである。
俺と紗季姉をまるでくっつけるような投稿を繰り返して、一体何が目的なのか。
それが見えてこないし、犯人も誰なのか全く見当が付かないのだから。
すると、木下さんははぁっと深いため息を吐いた。
「まあ正直、須賀のことはアーシにとってはどうでもいいんだけど……何かあったら相談くらいは乗ってやるから……愛優の件もあるし……」
最後の方は小声で聞き取れなかったけど、木下さんが俺に対してそう言う風に気遣ってくれるとは全く思っていなかったので、俺は思わず目を丸くしてしまう。
「な、なんだし?」
「いや……ありがとう……もし何かあったら、木下さんに相談させてもらうよ」
「あっそ……んじゃ、そんだけだから」
言いたいことを言い終えると、木下さんは先にすたすたと駅の方へと向かって行ってしまう。
一人取り残された俺は、木下さんの後を追うようにして駅の改札口へと歩き出す。
そこでふと、先ほど見せられた画像が頭の中でフラッシュバックした。
「えっ……」
ふと立ち止まって、俺は慌てて自身のスマホをポケットから取り出し、SNSアプリを開いて先ほどの写真をもう一度確認する。
「まさか、そんな……」
俺は冷や汗をかいていた。
何故なら、この写真を撮影した人物が誰なのかという真実に気づいてしまったから。
ひとまず俺は、とある人物へ連絡を取る。
何度かコール音が鳴った後、向こうからか細い声が聞こえてきた。
『も、もしもし須賀君? ど、どうしたの?』
急に電話がかかってきたことに田浦さんは驚いている様子だった。
しかし、そんな田浦さんの心情を無視して、俺は用件だけを端的に伝える。
「悪い、田浦さんに手伝って欲しいことがあるんだ。協力してくれるか?」
もちろん、田浦さんが首を縦に振ったことなど、言うまでもないことである。
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