第42話 闇深い会話~SIde京谷&??~
海斗と愛優が教室へと戻っていく中、俺は紗季先生と二人家庭科室に取り残された。
二人の足音が遠のいていき聞こえなくなったところで、紗季先生が声を掛けてくる。
「良かったの? あれじゃあ下手したら卒業まで仲直りすること出来ないわよ?」
「ここでそんなこと言いますか? 相変わらず意地悪な人だ」
そう言って、俺は手を合わせて背中を丸めて落ち込む。
すると、さらに紗季先生は追い討ちをかけるように語り掛けてくる。
「だって君は親友一人よりも、自分の将来の道を優先した。その決断は自己保身に過ぎないもの」
「別に、自分の為じゃないですよ。俺はただ、親友より大切な人を守るためですから」
「ふぅーん……君にとって、彼女はそれほどに守りたい存在なのね」
「そりゃそうですよ。昔からずっと一緒だったんですから。いくら振り向いてもらえなくても、彼女には幸せになって欲しい。俺が唯一好きになった女ですから」
「そう……まっ、彼女を守るために自分の親友や将来を犠牲にしてまで代わりに責任を負おうとする精神。嫌いじゃないわ」
「……元はと言えばあなたが吹っ掛けて来たんでしょ?」
俺はギロっとした目つきで紗季先生を睨みつける。
「あら心外ね。ただ私は、一つの提案をしてあげたまでに過ぎないわ」
「ふっ……相変わらず気に食わねぇ」
こいつさえいなければ、こんな親友を売る真似をしなくても済んだのだ。
全ては、俺に大学推薦の話が来てから……。
コイツは自分の為なら他人の犠牲なんて
いつか絶対に復讐してやろうと思っても、次々に証拠を突き付けられ、後戻りできない状態まで追い詰められ、結果として一人の親友を失った。
「さっ……今回の件は後でじっくり面談するから、あなたも教室に戻りなさい」
そう言い残して、俺を
一人家庭科室に取り残され、俺はグッと歯噛みする。
「くっそ……」
真実を告げることのできないもどかしさと、親友を傷つけてしまった悲しさ、奴に抵抗できない悔しやがこみ上げてくる。
身体を震わせ、気持ちが落ち着くまでじっと椅子に座りながら、気持ちの整理をしていた。
そんな様子を、家庭科室の扉越しに見つめる一人の少女。
彼女はずっと、彼が家庭科室に連れて来られてから一連の様子を眺めていた。
「はぁ……やっぱり京谷には荷が重かったみたいね。こうなったら、もう私一人でも続けていくしかない……か」
そう言って彼女は、無機質な表情を浮かべたまま、教室へと戻っていくのであった。
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