第38話 擁護してくれる友人
教頭先生に呼び出されたのは、やはり例のSNSで流れたデマの件だった。
どこからかSNSの情報が教員側にも
紗季先生には、俺と田浦さんからこのSNSの情報は事前に知らせてあったため、一緒にいたことは事実だが、二人きりではなく他の班のメンバーたちと行動していたことを主張してくれる。
それでも、本人たちだけの情報では足りないとの事で、俺と同じ班だった京谷に部活途中で抜けて来てもらい、事実を説明してもらった。
さらに紗季先生も機転を利かせてくれて、一緒に行動していた田浦さんを呼び出してくれた。
田浦さんは当時の状況を全て事細かに説明してくれて、俺と紗季先生が二人きりで行動はしておらず、この写真は作為的に撮られたものであると主張。
二人の証言もあって、ようやく教頭先生も納得してくれたようで、今回はお
「ふぅ……何とかなったわね」
紗季先生もさすがに教頭先生の前だと気疲れするのか、げんなりとしていた。
「
まあ、SNSの事は知ってたけど、まさか教員側でもこんな一大事になるとは不運だな」
そう言って、京谷は苦い笑みを浮かべて
「田浦さんもありがとうね。おかげで変な事態にならなくて済んだよ」
「ううん……だって須賀君は何も悪いことしてないもん。間違っていることを主張するのは、当たり前のことだから……」
「ありがとう。これで教職員たちから後ろ指さされることは無くなったよ」
ほっと安堵していると、今度は紗季先生が田浦さんの肩をがしっと掴む。
「本当に田浦さんに証人としてきてもらって助かったわ。私からもお礼を言わせて頂戴」
「い、いえ……私はただ、須賀君の無実を主張するために擁護しただけで、別に紗季先生を助けようとしたわけでは……」
「だとしても、結果として私の立場も守ってくれたのは事実だわ。だからお礼を言わせて頂戴。本当にありがとう」
紗季先生に素直に感謝されたのが恥ずかしいのか、田浦さんは身を
「それじゃ、俺は部活に戻るよ」
「おう、悪いな手間かけさせちまって」
「いいって事よ。また何かあったら言ってくれ」
そう言って、京谷は軽く手を上げて急ぎ足で昇降口へと向かっていく。
「さっ、もうそろそろ下校時刻も迫っているし、私達も片付けに向かいましょう」
紗季先生が切り出すように言いながら、田浦さんの背中を押して家庭科室の方へと歩いて行く。
「じゃあね田浦さん。今日はありがとう」
「うん、何かあったらまた言ってね!」
田浦さんは半ば強引に紗季先生に押されながら、階段を上って行ってしまう。
一人夕陽が差し込む廊下に取り残された俺は、ふぅっと安堵の息を吐いてから、踵を返して視聴覚室へと戻った。
「ただいまー」
視聴覚室へと戻ると、姫織はPCをシャットダウンして、丁度帰り支度を始めようとしているところだった。
姫織は俺の姿に気づくと、むっと唇を尖らせる。
「せんぱいおっそーい! 事情も説明しないで、大津先生とどこ行ってたんですか?
「悪い悪い……ちょっと色々あって呼び出し食らってた」
「えっ……何やっちゃったんですか先輩……」
「まあ、修学旅行でちょっとな」
「あぁーなるほど……」
すると姫織は、何やら納得した様子でコクリと頷くと、哀れみの視線を俺に向けてくる。
「先輩ダメじゃないですか。女の子の部屋勝手に忍び込んじゃ」
「いや待て。お前は俺を何だと思ってるんだ?」
「えっ……そりゃ、鍵のかかってない女子部屋に忍び込んで、女子生徒の下着を盗み取ろうと……」
「あほか! 俺はそんな変質者みてぇなことしねぇよ!」
全く、
「なーんだ違うんですか……つまんないのー」
「お前、ぜってぇ俺で楽しんでるだろ」
「てへっ」
可愛らしく舌を出して笑顔を浮かべるあざとい後輩。
もういちいち反応を返すもの面倒くさくなってきてしまった。
「ほら、さっさと荷物持て、部活終わりにすっぞ」
「はーい」
こうして俺たちは忘れ物がないかを再度確認してから、視聴覚室を出て施錠を掛けた。
「そんじゃ、俺は鍵返してくるから、気をつけて帰れよ」
「はい、今日もお疲れ様でした先輩!」
「おう」
こうして、俺は鍵を返しに職員室へ。
姫織は昇降口へと向かってそれぞれ別方向へと歩き出すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。