ハーレム・スクワッド 美少女たちを無双チートな自分専用武装に変化させて装備するスキルでハーレムなダンジョン攻略特殊部隊を作りあげて、王様に成り上がります!

園業公起

シーズンⅠ 王様の還る日

第1話 追放先は問題児しかいないクラスでした!

丁嵐あたらしあらた!お前は小隊副隊長クビだから!あしたからうちの小隊に来なくていいぞ!アハハ!」


 国連が管理しているお台場ダンジョンの受付センター。通称ダンジョンギルドの広間で俺は所属する小隊の隊長の美作みまさか凱斗かいとはそう言った。同じ小隊メンバーの取り巻き共は何処か意地悪そうに笑っている。


「何言ってんだお前は?そんなことよりも、今日のモンスター素材換金の報酬を渡してもらえないか?報酬は等分で分けるのが決まりだったはずだけど?」


「はぁ?お前は舐めてんのかよ!!俺らがモンスターに突撃して戦ってんのに、お前は後ろから銃を撃ってただけで体張ってねぇじゃねぇか!それに一々上から目線で指示なんか出しやがってうぜんだよ!」


 確かに俺は基本的には後ろから銃を撃ってるか、状況を判断して前衛に指示を出すかしている。でもそれは俺が小隊副隊長だから当然するべき仕事なだけ。むしろ。


「別に前衛で戦ってもいいんだけどね。それなら隊長のあんたがちゃんと指示してくれないかな?あんたときたらモンスターが出ればすぐに飛び掛かっていく。まるで猪のように」


「勇敢に戦ってこその冒険者だろうが!俺たちは戦士なんだぞ!人類の為に戦ってるんだ!」


「それがそもそも間違ってる。俺たちは冒険者じゃない。軍の士官候補生だ!いいか!?俺たちの仕事は戦うことだがその役割は組織の運営と戦争の指揮だ!!確かに将校も前線で戦う!だけどその主な仕事は戦いに必要な決断だ!殴り合うことはメインじゃないんだよ!俺たちが授業で小隊を組んでダンジョンに潜るのは指揮能力を養うためだ!なのにお前と来たら指揮の仕事を放り出して剣を振り回すばかり!そのしわ寄せが俺にきてんだよこの阿呆が!!今日だってお前は覚えてねぇかもしれないけどなぁ!俺が背後に警戒してなければ狭い通路で奇襲を間違いなく喰らってた!それどころかお前が目の前の敵に集中するばかりに敵の後衛の動きを忘れて、危うく全体攻撃魔法で大ダメージを喰らいかねなかった!俺だけが気づいていた!だから命令して背後を叩かせた!それを上から目線?馬鹿も休み休み言え!テメェがしてない仕事の尻拭いをやってやってんだよ!!」


「ふざけんなよ!偉そうに!そもそも小賢しいんだよ!作戦よりもスキルを磨いて攻撃力を上げればいいんだ!それがダンジョンでの戦いだ!なあそうだろうみんな!」


 なんともくだらない主張が出てきて、肩から力が抜けてしまう。馬鹿馬鹿しい。だけど周りはそうは思わないようで、取り巻き共はうんうんと頷いている。


『そうだよな!強いスキルで攻撃すればいいだけだし』『だいたいモンスターなんて突っ込んでくるだけなんだから、作戦とかいらないだろ!』『つーか低ランクの雑魚のくせに副隊長とか調子乗り過ぎじゃね?』


「お前らは一人残らず馬鹿だ!!俺たちは士官候補生だって言ってるだろう!直接戦闘能力は当然あった方がいい!だけどそこだけじゃないんだよ!士官学校で学ぶのはモンスターとの戦い方じゃない!軍隊の幹部になる為の方法だ!モンスターと戦うことだけを重んじるなら、士官学校なんてやめて冒険者学校にでも行けばいい!学校側が俺たちに要求している小隊教育の主眼は戦闘能力じゃない!作戦達成能力だ!」


「それが偉そうだって言ってるんだよ!あん!」


 美作が俺の胸倉を掴んでくる。睨んでくる目には怒りの火が見える。取り巻き共も顔を真っ赤にして俺を睨んでいる。だけど俺たちが騒いだからだろう。近くにいる警備の兵士たちが、近づいてくるのが見えた。


「放せよ」


「っち!くそ!」


 兵士たちの姿を見て、美作は俺から手を放した。ここでトラブルを起こせば、学校側は何らかの処分を下す。そういうのにビビる程度の頭はあるくせに、士官に要求される水準が理解できていないらしい。


「とにかくお前はもううちの小隊メンバーじゃねぇ!出ていけ!お前みたいな雑魚がいなくても俺らは十分やって行ける!むしろお前みたいな雑魚に足を引っ張られなきゃもっと上に行けるんだからな!消えろ!」


「はっ!そうかよ!ならいいさ。せいぜい猪のように突っ込んで死ねばいい!お前らみたいな能無しが将校になったらもっと犠牲が出るからな!今のうちにダンジョンにくわれてしまえ!」


 こうして俺は小隊から追放されることになってしまった。自分なりにはベストを尽くしていたはずだし、必要なことはすべてやってきたつもりだった。ダンジョンに潜るたびに、副隊長として部隊を守ろうと気合を入れていたのが馬鹿みたいだ。次に配属される小隊では、まっとうにやって行きたいと思った。






 あれから一週間がたった。俺は国連軍士官学校天王洲キャンパスの学生掲示板に張ってある小隊員募集の張り紙を睨んでいた。


「何処の小隊も入れてくれないってどういうことよ…」


 学校の小隊同士はつねに人材の奪い合いをしている関係だ。つねに募集の張り紙がこの掲示板には出ている。あるいは期間限定でのお試し小隊の募集とかもある。なのにそのいずれに連絡をつけても、面接さえ断られる状態だった。知り合いの一人が俺に伝えてくれたのだが、なんでも美作が他の小隊に俺の良くない噂を流しているらしい。曰くダンジョンでわざと足を引っ張るとか、宝物を独り占めするとか、仲間を囮にするとか。酷いもんだ。そんなこと一度たりともやってないのに。


「参ったなぁ…このままだと単位が…」


 士官学校の進級には、どうしてもダンジョンにおける小隊演習を行う必要があるのだ。現在2年生の俺には生徒同士で自発的に組んだ小隊でのダンジョン攻略演習を行う義務がある。このままだと単位が不足して進級が出来ない。


「不味い…。おれには金がないんだ…留年は出来ないのに…」


 士官学校は学費無料なのだが、留年したりするとその年の分は学費が発生してしまうのだ。もちろん月々貰っている士官候補生としての給付も停止されてしまう。俺は生活ができなくなって退学せざるを得なくなってしまうだろう。


「あれぇ?丁嵐じゃん!こんなところでどうしたんだよ!」


 唸る俺のところへ美作とその取り巻き共がやってきた。わかってるくせにうざい奴だ。


「もしかしてどこの小隊も入れてくれないのかな?!あらら!なんだよ!あんなに偉そうにしてたくせに何処の小隊もお前の事をいれてくれないんだ!みんな見る目があるよな!だってお前みたいな低ランクなんて使い物にならねぇもんな!」


「あ?くだらねぇ忖度の強要をしてんのはお前だろ?根も葉もねぇ噂なんて流しやがって」


「Fランクのお前に人徳がないだけだろ!人のせいにしてんじゃねぇよ!そんなんだから誰もお前を小隊に入れてくれねぇんだよ!わかれよ!ぎゃははは!」


 取り巻き共も笑っていた。本当に嫌になる。ダンジョンに潜ってモンスターを殺す冒険者なんていう仕事が一般化したこの時代においては、ステータスシステムが供給する『スキル』の強さが人々の価値判断の基準となってしまった。俺は何かを言い返してやろうと思って口を開きかけたその時だった。


「廊下ではあまり騒がないでね。ここは一般の学校ではないんだから。節度は守って頂戴」


 俺たちに声をかけてくる女がいた。オレンジ色の長い髪を太めの三つ編みにしている紫色の瞳の女。トータルネックのニットシャツにロングスカート。その上に白衣を着ている。太めの黒縁フレームと服装のせいで何処か野暮ったい印象を女に与えているが、その顔は恐ろしく整っている。どんな男でさえも魅了してしまうような美女だ。


「ラエーニャ先生!聞いてくださいよ!丁嵐が性格悪いから嫌われてるくせに、それを俺たちのせいにしてくるんですよ!ひどくないですか!マジ最低ですよね!」


 美作は楽し気な様子でオレンジ色の髪の女に向かって話しかけている。この女はスクールカウンセラーなのだが、学内では生徒や教師陣からもとても人気が高いのだ。


「オリヴェイラ先生。もしくはオリヴェイラ准将と呼びなさい。それと私はあなたたちに注意をしているんです。ここで騒ぐなと。あなたたちは私の話を聞いていないんでしょうか?」


 美作はオレンジ色の髪の女、ラエーニャ・オリヴェイラに逆に叱責された。丁寧な口調のくせに何処か冷たい感じがある。おっとりとした見た目に反している分ギャップがあってなかなか怖い。


「…すみませんでした。オリヴェイラ先生。でも丁嵐が悪いん…」


「個々人が互いに持つ人物評価について、私は興味がありません。あなたがそれを私に話したところで何の意味もない。美作凱斗候補生。あなたが丁嵐新候補生となにか個人的葛藤を抱えていてとしても、私には関係ありません。話は以上です。すぐに解散しなさい」


 有無を言わせないとはこのことか。美作はどこかおろおろした様子を見せていたが、すぐに取り巻きを連れて何処かへと行ってしまった。俺もまたここから離れようとオリヴェイラ先生に背中を向けたその時、声をかけられた。


「何処へ行くの?」


「いや、解散しろって言われたんで」


「あなたには言ってないよ」


 そんなこと言われても困るんだけどなぁ。


「あの俺これから入れる小隊探さないといけないんですよ。オリヴェイラ先生は俺に何か御用があるんですか?」


「…」 


 オリヴェイラ先生はプイッと横を向いてしまう。これ幸いと俺はこの場を離れようとするが、よくみると制服であるブレザーの袖がオリヴェイラ先生に掴まれていた。


「なんか用っすか?オリヴェイラ先生」


「いつも思ってるけどね。水臭いよねあなたは。ラエーニャでいいって言ってるのに」


「美作相手には怒ってませんでした?」


「あなたならいいの。私は教師だけど贔屓するタイプだから」


 それは駄目な先生なんじゃないかな?俺はそう思うんだけど。この人俺が一年の時からやたらと贔屓してくるんだけど、理由がわからなくて若干怖いんだよね。


「何の用ですか?ラエーニャ先生。俺は早く小隊に入り直して進級単位を稼がなきゃいけないんですけど」


「そのことで話があるの。あなたの状況は把握してる。学校側も頭を痛めてるの。ステータスのランク至上主義が兵卒だけでなく、最近は下士官や士官たちにも広がり始めてる。困った物ね。美作候補生みたいなステータスランクがAランクの生徒は影響力が大きい。みんな美作候補生の事を怖がってあなたを排除しようとしてる。腹立たしい。ステータスシステムなんてただの手段でしかないというのに…。だから私があなたと組んでくれる子を紹介するわ」


「マジっすか!ありがとうございます!」


「じゃあついてきて」


 オリヴェイラ先生についていくと、辿り着いたのは校庭の隅っこに設けられた新しいプレハブだった。結構大きい二階建て。何故か外の壁には『二年零組』と表示されていた。

 

「なんすかここ?最近作られたのは知ってるけど。つーか零組?何だそれ…?」


「あなたがこれから通う新しいクラスよ。あなたは今いる三組からこの零組に編入してもらいます。まあ席替えみたいなものだと思ってくれればいいわ」


「どういうこと?!なに?!学期途中でのクラス替えとか聞いたことないよ!」


「ちなみに担任は私よ。嬉しいでしょ?」


「嬉しいとか嬉しくないと以前に戸惑いしかないです。意味わかんねぇ…」


 そして中には入ると中にはそこそこ広いエントランスがあった。そしてそこから奥へ少し進むといくつかのドアがあった。それぞれドアの上に表示板が乗っている。


「更衣室、ミーティングルーム、談話室、シャワー室、トイレ、仮眠室。なんですかここ?マジで何でもあるんですね。部活棟よりも豪華だ」


「便利でいいでしょ。でもここで生活するのはやめてね。さすがにそれをやると学校に小言を言われるからね。さてここにいるわ。あなたに紹介したい子が」


 教室の表示のある引き戸を開くと、そこには本当にトラディショナルな日本の学校のクラスルームのような部屋になっていた。今どき珍しい黒板と教卓。そして机の列。そして窓際の席に士官学校のブレザー制服を着た一人の女子生徒がいるが見えた。桜色のロングヘアをハーフアップにしていた。そして一度見たら忘れられそうにない勝気な赤い瞳。なによりも誰もが褒めたたえるであろう女神如き美貌。なんで軍隊なんかにいるのかがわからないレベルの美人だ。


「知ってると思うけど、あなたの同級生の斯吹しぶき祢々ねね候補生。これからあなたのクラスメイトになるからね。適当に仲良くして」


 そして斯吹は教室に入ってきた俺を何処か殺気に満ちた瞳で睨んできたのだった。


 


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