第40話 そして仲間たちと共に
「ラエーニャ!!今そっちに!!」
兵士たちの間を逃げ回っていた祢々は、ラエーニャのピンチを見て、すぐに駆け寄ろうとする。
「だめです!!祢々!陛下を連れて逃げなさい!!こいつらには両方追う余裕はありません!!あなただけなら逃げられる!!すぐに転送ポートに向かうんです!!」
「でもラエーニャを置いていていけないよ!!そんなことすればアラタだって悲しむ!そんなのいや!絶対に嫌!!」
祢々はラエーニャの制止を無視して、それでも傍に駆け寄った。そしてラエーニャの脇に手を入れて彼女と肩を抱く。
「祢々。私はあなたを騙すような真似をしてましたよ?美作を煽ったのは私です。あなたを酷い目に合わせたのは私なんです。だからすぐに私を捨てて逃げなさい」
肩を組む二人の所へヒメーナとレナエルがじりじりと迫ってくる。
「でも見捨てられないの。このまえ品川であたしを助けてくれたのはラエーニャじゃない。ちゃんと恩は返すの。あたしはアラタの隣に立てる立派な女の子になりたいから」
ラエーニャは祢々をどこか不思議そうに目を丸くして祢々を見る。
『そうだよ!仲間は見捨てちゃダメ!!まあウチらはその女大嫌いだけどね!それでも今は助ける!!』
そこへ女の声とエンジン音が響きわたった。UNのマークがついた迷彩色の装甲車が戦場に飛び込んできたのだ。
「おらああああ!ここは俺たちの庭だぁ!!よそもんはとっとと帰れぇぇ!!」
装甲車の屋根につけられた機関銃を、千晶はスキルで強化しながらウォーロードの軍勢に向かって撃ちまくる。兵士たちは弾を避けるために車から離れた。そして装甲車からギャルメイクのリリハが飛び出してきて、ヒメーナとレナエルたちに向かって突撃した。リリハは腰の刀の鞘に手をかけて頭を低くして走り続ける。
「ほう!一兵卒風情があーしたちに向かって来るのか!面白いし!ぶっ潰してやるし!」
「久しくわっちたちに挑んでくるものなどいなかった!よいぞ!かかってくるのじゃ!」
ヒメーナとレナエルは向かってくるリリハに向かって、それぞれ武器を振るった。
「例え凄い武器を持ってても!より速ければ勝てる!うおおおお!!」
リリハは異能の力を使い、一気に加速した。そしてウォーロードとすれ違いざまに刀を抜いて二人の右手首の筋を切り裂いた。
「ふ、ふははは!やりおるのう!わっちはお主を見誤っていたのかも知れんのう!!なあ!|
斬られたのにレナエルはどこか嬉しそうに笑っていた。
「ウチはその名は捨てたんだよ。今は
そしてリリハは二人の持つ武器を刀で払い落す。武器は二人の手から離れると、武装変換が解除されて人間の姿に戻ってしまった。
「おやおや。まいったね。これはボクたちの上をいかれたね。やっぱアラタくんは持ってるねぇ」
「アラタ様は王ですからね。この程度のご都合主義な運命くらいは簡単に引き寄せるでしょう。横着してもやはりうまくはいかないものですね。あたくしたちはもっと作戦を練らないと行けませんね…ふぅ」
リーフェとシャールカはどこか呑気に語り合う。だが反対に奇襲に成功されてしまったヒメーナはどこか不機嫌だった。
「ちっ!ラエーニャめ!王の力に命を拾われたか!次は必ず殺すし!!」
リリハはウォーロードから離れて走り出し、千晶に向かって叫ぶ。
「千晶くん!!」
「任せろ!!2人とも乗れぇ!!」
装甲車は祢々達の横に停まった。
「ありがとう!ラエーニャ!行こう!」
祢々はラエーニャと共に装甲車に乗り込む。千晶は機関銃を撃ちながら周りの兵士たちを牽制する。そしてリリハも合流し、車は走り出す。
「離脱だ!離脱!ゴーゴーゴー!転送ポートに向かって走れー!!」
装甲車は一気に加速してウォーロード達の軍勢を振り切った。そして彼らは一番近くにある転送ポートまで逃げ切ることに成功し、そのままダンジョンから外へと脱出することに成功した。
第4次お台場ダンジョンスタンピード事件の公式被害
死者数
-戦闘員-
自衛隊 6名
日本国連軍 17名
-逃げ遅れたダンジョン内被害者-
国連軍士官学校学生 24名
冒険者 273名
-ダンジョン外のモンスター被害-
民間人 41名
-その他-
首謀者グループ 2名
周辺インフラへの総被害額は総計37億円と推測。
首謀者である美作凱斗は現在も行方不明。
サブコアは日本国連軍が回収し封印措置が取られた。
第4次お台場ダンジョンスタンピード事件についてのある公安捜査官の捜査資料
本事件はお台場ダンジョン出現以降で4回目のダンジョン外への大規模モンスター流出災害である。
幸い被害は他国のダンジョン災害やステータスシステムがなかった頃に起きた第一次スタンピードの自衛官5万人の被害に比べれば軽微で済んだと言える。
自衛隊および日本国連軍の奮闘には心よりの賛辞を送りたい。
本件は過去のスタンピード事件とは異なり、ダンジョンサブコアを手に入れた人間によって引き起こされた人災、すなわちテロだった。
首謀者である美作凱斗は国連軍士官学校の学生であったが、生き残った共犯者の証言からは美作容疑者の裏に大きな組織力を持つなんらかの組織の姿が見え隠れしている。
昨今の世界情勢を考えると、おそらく勇者派、魔王派を名乗る狂信的原理主義者の組織が美作を使って日本へのテロを行ったのではないかと推察される。
だがいまだに両組織からは声明が出ておらず、疑惑ばかりが深まっていく。
また事件当日にはヨーロッパ、アジア、オセアニア、ラテンアメリカの各国連軍とその
美作はスタンピード終了後その行方をくらませているが、おそらくはウォーロード達のいずれかに討たれたかあるいは拘束されているものと考えられる。
ウォーロード達は長年の間、勇者派魔王派のテロリストと抗争を続けてきたことで有名だ。何らかの情報を元にして日本にやってきた可能性は高いだろう。
もっとも我々の情報開示請求を無視し続けている以上、その真相が明らかになることはないのかも知れない。
だがそれ以上に不可解な動きがある。
ラエーニャ・オリヴェイラ准将が事件の時、姿を一時消したのである。
現場の兵士たちは自衛隊特戦群と士官学校の生徒たちと共にダンジョンから出てきた彼女の姿を目撃している。
このことに関して防衛省側に問い合わせを送っても返答はなかった。国連軍側もない。思い切って特戦群の小隊隊長である鶴来三等陸曹と、士官学校の中心人物である月見里候補生を聴取したのだが、ふたりとも軍機ゆえに話せないとの黙秘してしまった。
だが二人ともラエーニャ・オリヴェイラへの不快感を隠していなかったことから、どうやら彼女が口封じを行ったものと考えて差し支えがないと考えられる。
この捜査も公安委員会を飛び越えて内閣から打ち切るように指示を出されてしまった。
やはりラエーニャ・オリヴェイラ准将が日本を裏から支配する
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