第23話 パリピ系元帥
これが男女の違いって奴なのだろうか?俺にはその彼って奴がしていることがわかるけどね。ようは自分の女には恰好をつけたいから困りごとはよその女にしていただけの事だよね。
「その人は貴女の前で恰好つけたかったんでしょ。男のチンケなプライドってやつでしょ」
「そうだよ。彼はすぐに恰好つけたがる人だった。強がりで意地っ張り。なのに…彼はラエーニャだけは弱さを見せていたんだ…ボクは彼に信じてもらえていなかった。弱さを見せたら逃げ出してしまうと思われているくらいにはきっと彼に信じてもらえていなかったんだよ」
そういう考え方もあるんだろうなとは思った。でもその意地っ張りの彼さんがラエーニャ先生には相談していた。そうとうラエーニャ先生はその男に信じられてる。
「ラエーニャもラエーニャだ。ボクはいやだったのに、いつも僕に黙って彼と話していたんだ。友達のはずなのに、ボクの男の一番の女になったんだよ。…許せないよね?」
俺はその声の冷たさにうかつに声をあげることを憚ってしまった。何を言っても無駄になるような気がしてならなかった。
「伝言を頼みたい。わが友ラエーニャに…」
コーニング大将は俺の正面に立ち、クビに手を回してきた。目の前にコーニング大将の美しい顔が見えた。そしてその瞳に紫色の淡い光が灯る。
「『ボクは今度こそ君に邪魔されることなく彼の隣に立つ。君に彼の隣に座る席はない。遠くから祝福せよ。遠くからボクと彼の王道を祝福せよ』伝えるんだよ。かならずラエーニャに伝えるんだよ。君の口からね」
そう言ってコーニング大将は俺の額にキスした。近くにいたご婦人方の感嘆のような声が漏れるのが聞こえた。そしてコーニング大将は俺から体を離す。すぐに近くの女たちが大将にキャッキャと楽し気な声を上げながら群がった。大将はしばらく俺の事を名残惜しそうな瞳で見つめていたがすぐに目を逸らして、ご婦人方との歓談を始めてしまった。俺は手持ち無沙汰になった。どうやらこれで接待はお終いでいいようだ。俺は一礼してビリヤード台から離れる。
バーの出口に向かっている最中、人ごみの中からリリハ先輩が出てきて俺に合流した。
「ごめん。ずっと傍で気配隠して見てたんだ。あの人一体何なの?ルロア中将もそうだけど、なんでオリヴェイラ准将のこと恨んでるのかな?」
「なんなんでしょうね。なんか修羅場ってる感じですよね。ラエーニャ先生は天然っていうかちょっとズレてるところあるし、そんな感じなのかな?」
さらにここにクラーロヴァー少将も加わるわけで、世界の大軍閥さんたちに恨まれてるラエーニャ先生ってマジですごい大物な気がするよ。
「でもウチは少しわかるけどね。あの人なんかちょっとヤバい雰囲気あるもん。目的以外のすべてが視界に入っていない感じ。好きなモノ以外全部興味を持たないような危うさがあるんだよね。絶対彼氏とかいたら束縛とか携帯のチェックとかしてそうな感じ。すごく重そう」
「確かに少しそういうところがあるかも」
「まあ考えても仕方ないかな。さあアラタっち!次でラストだよ!最強の痛客!ヒメーナ・レイエス元帥の下へレッツゴー☆レイエス元帥はプールを貸し切ってクラブイベントみたいなパーティーやってるよ!なんかすごくアゲアゲしてるみたいだぞ!めっちゃ楽しみぃ☆盛り上がり過ぎて複数プレイで一気に元カレが10人くらい増えちゃいそうなくらいハメ外しちゃうかも☆」
処女ビッチのくせに複数プレイとかハードル高いこと言ってるよね。
「それはハメ外し過ぎじゃないかなぁ…」
何はともあれ次で痛客ツアーは終わりである。気合入れて行こうと思ったのだ。
プール周辺はまさしくどんちゃん騒ぎの真っ最中であった。有名なDJが流すミュージックに踊り狂う水着姿の若者たち。少し陰に行けばイチャイチャする男女だらけ。ここって高級ホテルのはずなのにすごく退廃的な光景が広がっている。
「うぇーい!みんな上がってるぅ!ほぉうおお!ぱりぴ?ぱりぴっぴ!!?やはっはーーーーーーーーー!!ウチの腰振りダンスで皆エッチな気分になって!ふーーーーーーやーーーーーーーーーー!!」
『『『『うぇえええええええええええええいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!ふーーーーーーーーーーーーーーーー!!やっはーーーーーーーーーーーーーーー!!』』』』
水着に着替えたリリハ先輩が設けられたいたお立ち台の一つで、すごくセクシーなポールダンスをキメていた。周りの観客たちは皆リリハ先輩のダンスに夢中になって歓声を上げていた。脳内元カレしか知らないイタい処女ビッチのくせにすごくセクシー。というかあんなに八茶けているのはさっきからウォーロード相手に高ストレスに晒されたせいだろうね。ちょっと可哀そう。あのままあそこで踊らせてやろう。俺はリリハ先輩を放置して、今回の接待相手の下へ向かう。
「おっアラタじゃん!うぇーい!盛り上がってるぅ!?あはは」
プールサイドに置かれた高級ソファーに水着で座りくつろいでいる女がいた。眩しく輝くような金髪に、神秘的な赤い瞳の美しい女だった。胸は大きくビキニから今にも零れそうに思えてしまう。
「ええ、そこそこ盛り上がってますよヒメーナ・レイエス元帥閣下」
この人こそがブラジルを除く中南米全域を支配する国連軍ウォーロードであるヒメーナ・レイエス元帥だ。彼女の座るソファーの周囲には水着のイケメンたちが侍っていた。団扇でレイエス元帥を仰いだり、ドリンクを口元まで持っていったり、フルーツ盛り合わせを食べさせてやったりなんかすごくチヤホヤされていた。こんなにチヤホヤされてるのに俺のことを呼びつける必要ってあるのかな?
「アラタは相変わらず固いなぁ。あはは!あーしのことはヒメって呼んでくれていいって前に言ったし!覚えてない系?きゃはは!」
「元帥閣下の事を名前で呼ぶことはとてもとても」
「良いじゃん別に。あーしって年功序列とか階級とか身分とか気にしないし!ていうか人間ってみんな平等じゃね?!だからみんな友達だし!」
軍人としてその発言はどうなんだろう?こんな奴が元帥やっちゃってる国連軍って大丈夫なんだろうか?
「てかアラタ水着くらい着てこいし!燕尾服もカッコいいけど!このクラブ系イベントだとマジ滑ってるし!きゃはは!」
「仕事中何で…というかイベント内容が当ホテルにまったく不適当に思えるのですが?」
「大丈夫だし!盛り上がっちゃってセックスしたくなったならホテルの部屋を借りろってちゃんと言ってあるし!プールの水をエッチなお汁で汚すような真似はさせないから安心しろし!ぎゃはは!」
「そういう問題じゃねんだよ…言っても無駄かあ…」
流石痛客である。まわりの迷惑や風紀の乱れなど気にせずに自分のしたいことだけをする。その結果俺たち従業員がどんな目に合っても決して顧みない。
「アラタも水着に着替えろって!な!もしかして持ってない?ならかしてやろうか?おい!そこのお前!すぐに水着を脱いでアラタに貸してやれ!」
レイエス元帥は近くにいたイケメンの一人にとんでもない命令を下した。
「アイアイマム!!」
そしてそのイケメンは躊躇なく水着を脱いで、俺にそれを手渡してきた。
「やめろ脱ぐな!!人がさっきまで着てた水着なんて絶対に着ないからな!!」
「えー?でもアラタは水着持ってないんだろ?だから貸してあげるんだし!あーしの好意を遠慮するなし!」
「だから着ないって言ってるでしょ!」
「そっかーたしかに良く知らない奴の水着を借りるのは恥ずかしいよな。ならあーしの水着なら着てくれるよな?…恥ずかしいけど…アラタにならあーしの水着貸してもいいし…」
そう言ってレイエス元帥はビキニの腰ひもに指を引っかけた。頬を恥ずかし気に赤く染める姿に可愛らしさを感じてしまった。だけど流石にそんなことさせたら俺の首が物理的に飛びかねない。ウォーロードの衆人環視の下で水着を脱がさせた男とかどう考えても粛正対象待ったなしである。
「やめてやめてやめて!脱ぐな脱ぐな!まじでやめて!」
俺はレイエス元帥の両手を掴んでひっぱり脱ぐのをやめさせる。その拍子にレイエス元帥の体が俺の胸に倒れ込んだ。
「あっ…もう…アラタはまじごーいんだし…。皆見てるのに…恥ずかしいし…」
正面から抱き合う形となり、レイエス元帥がまるで乙女のように頬を赤く染めていた。
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