第16話 後付け能力

目が覚めるとそこはマシュマロの枕だった…

どうやらあれから寝てしまったようだ。

目の前のマシュマロの枕を押しのけ体を起こしてみる…

「あんっ…」

どうやらマシュマロはユリシアの胸だったようだ…

確かにすごく寝心地がよく柔らかくて暖かくて心休まる枕だったが…

されどそれは私にとって怨敵であった…

危うく懐柔されてしまうところであった。なんて危険な兵器だろうか…

私はユリシアに抱きしめられながら寝ていたようだ。

「あ…ロキ様…お目覚めになられましたか?」

ユリシアが眠そうな目をこすりながらこちらを見ている。

きっと私がいつ起きてもいいように限界まで起きていたのであろう様子が目の下のくまからうかがい知る事が出来る。

「おはよう…ユリシー…迷惑をかけてしまったようだね。」

「いえ…そんな事はまったくありません」

なぜか頬を赤らめながら答えるユリシア。

「そ、それじゃ町へ向かいましょうか。」

そして、私たちは扉を開け外に出た。

すると外の風景は一変し森だった場所は荒廃した土地になりまるで1000年過ぎたようだった…

…なーんてことは全然なく『三日前』の森の風景そのままであった…

少し消し損ねていた焚き火の種火がまだ少し残っていた…

「三日間もずいぶん長い時間燃え続ける木だね…」

「そ、そうですね…」

しばらくの静寂…

「って…そんなわけあるかーーーい!」

「これはいったい…」

「もう…今回は僕の出番が多いねー説明が必要そうだね!聞いていくかい?」

出た…私の中ランキング二度と見たくない顔選手権万年1位保持者!

「ゲームにはなかった機能だけど現実化する時に実装したマイハウスの時間操作能力!

これさえあれ例えば急ぎの旅でも

ゆっくり休みつつ時間経過しないまま旅を続けることが出来るのだ。

しかも老化防止機能つきで中でうっかり百年過ごしちゃって

ユリシアのご両親より年寄りになっちゃったーなんてことも起きない…

超便利機能なのだよ。まぁプレイヤーにはどうでもいい機能だけどね…

なんせプレイヤーは、ふろ…ゲフン、ゲフン!いあ…なんでもない…」

え、今めっちゃ重要なこと言わなかった?ごまかされたけど絶対大問題だよね?

絶対不老って言おうとしたよね?

「え、てか、時間停止で出てこれるならこの三日間徹夜なんかせずに

ゆっくりレベル上げればよかったんじゃ…

じゃ…なに?私のあの達成感と苦労は無駄な努力だったの?」

私の悲鳴にも似た問いかけに対して妖精型悪魔は

突然礼儀正しく背筋を伸ばして立ったかと思うと直角に腰を曲げ実に丁寧な物腰で

「Exactly(その通りでございます)」

と、のたまいやがった…

くそぉぉぉむかつくぅぅぅぅぅぅ

どこぞのギャンブラーみたいな真似しやがって…

ほんとこいつ嫌い!

もういい…こいつにむきになってるとこっちのペースが崩される…

予定通り町に向かうべくインベントリーからアイテムを取り出し叫んだ!

「いでよ!風よりも速い神の使い魔たる召還獣…スレイプニルよ!」

もちろんこんな詠唱はいらないのだがかっこいいからいいのだ。

アイテムの使用により馬車とそれを引く8本足の馬スレイプニルが現れた。

そして一同は町に向かうのだった。

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