第11話 無課金崩壊と旅の共
ユリシアの案内により村に辿りついた私たちは村長と会っていた。
「娘が危ないところを助けていただき本当にありがとうございます。近頃盗賊や人攫いが頻発していまして困っていたところだったんです。」
どうやらユリシアは村長の娘であいつらは盗賊であっていたらしい…
誤認逮捕ならぬ誤認死刑じゃなくてよかったよかった。
「いえたまたま目に付いたから討伐しただけですので、お気になさらずに…」
「良ければお礼に食事でも食べていってください。」
これって受けていいのかな…京都人的な意味合いだったらどうしよう…
「そうです。ロキ様ぜひ、一緒にお食事を!」
ユリシアがこれだけ誘ってるんだから素直に受け取っていいんだよね…
「わかったよ。その時にこのあたりのことも教えてくれると嬉しいかな。ちょっと遠くから来たからこのあたりの事情には疎くて…」
「はっ!そ、そうですよね…遠く…神界から来たから人間界のことはあまりわかりませんよね。」
あ…これダメなやつだ。もう私のこと猫神様だと思い込んでる。
何言っても深読みして訂正するのが不可能なやつだ。
「ユリシア?神界がどうとかってどういうことだい?この方はまさか…」
「そうです。お父さん。ロキ様は魔法を無詠唱で放ちあいつらを一瞬でやっつけたんです。」
「そんなまさか…おぉ…」
なぜか、涙を流しながら感動している村長…
てか、この流れをあんまり広めるのはよくないな。そろそろ釘を刺しておこう。
「あの…あまり、無詠唱魔法のことは内密に…あまり目立ちたくないもので…」
まったく嘘は言っていない…それにどうせこういっておけば…
「そ、そうですよね!今はお忍びで人界に来てるだけ。私としたことがとんだ御無礼を…」
っと…思った通りの曲解が返ってくる。
そうこうしているうちに食事が用意された…
あぁ覚悟はしてたけどこれはひどいな…
鶏肉とじゃがいもらしきものを煮崩したもの。味はわずかに塩の味がするだけ…
ゲームの時もこんなんだったな…確か…ここが貧しいんじゃない。
時代的に庶民の食事なんてこの程度なんだ。
むしろ鶏肉が入ってるって大盤振る舞いのはず。
「お口に合いますか?」
ユリシアが心配そうに聞いてくる。
「えぇ…まぁ…」
あぁ無理…お世辞とか無理…そんな人間的スキル私は持ち合わせてないよ
顔がひきつる。
「すみません…この程度の食事しか用意できなくて…」
くっ…子供に本音を察されてしまった。もう…なんでこんな世界にしたのよ…運営。普通にご飯が美味しい世界にすればよかったじゃない…
『そりゃもちろんプレイヤーに課金させるためですよ。NPC売りの回復アイテムである食事を質素なものにすることで課金の食事アイテムを買わせるのが目的です。」
(ちょ…また人の心の中の会話に勝手に入ってくるなんて…
てか、食事課金なんてあったんだ…知らなかった。そもそも課金ページ開かないし…回復はポーション系しか使わなかったし…)
『無駄に食事アイテムは豊富に揃えてありますよ。まぁ命のピンチでも課金しない君には関係ないはな…』
(んじゃ〜っもしかしてケーキとかもあるの?それちょうだい。買うわ。)
『はい?え?これ課金アイテムですよ?あなたの嫌いな課金アイテムですよ?わかってます?』
どうやら運営は私に対して何か勘違いをしているようである。
私が嫌いなのは課金装備でゲーム難易度を下げまくる事であってお金を使うのが嫌いなわけじゃない。むしろお金は使うのも貯めるのも大好きである。それにここは現実…地球で普通に食べれたものにそれ相応の対価を払って買って食べるのは課金というよりただのデリバリーである。
『まさか君に課金をさせるのがこんな簡単な事だったとは…でも、なんか違う…僕が求めてたのは涙を溜め悔しがりながら僕に課金アイテムを懇願する顔だったのに…こんなのじゃ意味がない。』
なんて性格の悪い事考えてるのだ。この運営は…
まぁいいや…とりあえず4つケーキを頼んだ。
「食事ありがとうございます…良かったら私からのお礼にこれをみんなで食べませんか?」
そう言いながら私はユリシアの父親である村長とユリシアと私自身の前にケーキを置き…
『おぉ…感心だね。僕の分も用意してくれるなんて…君って案外いいやつなんだね?』
何言ってんだ?こいつ?とりあえず、馬鹿を置いておいて最後のケーキをユリシアの母親の前に置いた。
『え…母親いたの…父親とユリシアの会話しかないから死んだとかそんな設定かと…』
(ふたりが会話してる間に食事ができたんだからもうひとり人がいるに決まってるでしょ…馬鹿なの?少し考えれば分かる事でしょ?)
いつぞや言われた言葉を倍返しにする私…
『なななな…ぐぬぬぬ…なんて性格の悪い…』
あー…気分がいいわ。人に課金させて悔しがらせようとするやつを悔しがらせるのは。
「えーと…ロキ様?これはいったいなんなのでしょ?」
どうやら見たことないもの過ぎて食べ物とも認識できていないようだ。
「うーんとね…これはケーキって言って食事のあととかに食べるデザート…うーんデザートの概念伝わるかな…果物みたいな…甘い食べ物よ。」
「よくわかりませんが食べてよろしいのですね?」
「うん、遠慮無く食べて…」
そして、おそるおそる食べるユリシア家族一同…
「!!!!!!!!!!!!!!」
「ここここ、これっこここ」
あーなんか鶏になってしまったかな…うん
「これはいったい…なんて素晴らしい味…とても地上の食べ物とは思えない…やはり猫神様…」
またそっち方向で暴走しだすユリシア
「もう疑いの余地はありません。お父さんお母さん今まで育てていただきありがとうございました。」
え?どうした?
「今日より私はロキ様にお仕えしようと思います。それに当たってこの家を出ることにします。」
はい!?
「そうだね…お父さんも寂しいが神に仕えるなんてこんな光栄な事はない。行ってきなさい。」
涙を流しながら賛成するユリシア父…
「そうね…お母さんもそれがいいと思うわ。ロキ様ユリシアをよろしくお願いします。」
何言ってんだこの家族…
「いあ…でも…」
と否定しようと思ったがユリシアの憧れと崇拝の目を見ると断る言葉が出なかった…
まぁいいか…ユリシアを連れて旅するのも…
地球じゃこんなに無条件でなんでも肯定してくれる友達なんていなかったし…
ちょっと新鮮かも知れないわね。
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