第31話 おにごっこ

目の前には赤髪でどこか眠そうな目をした発育のいい身体の美少女がいる。

ファンタジーで言うところのダークエルフのような見た目であるのが魔人族の特徴なのだ。

見た目にだまされてはいけない。基本的にやつらは凶暴な種族なのである。

例え…あんな風にこちらに視線も合わせないで彼女の周りに飛ぶ蝶々を目で追いかけていようとも…

凶暴なはず…だよね?

「ねぇ…おねぇちゃん…ゴブリン知らない?追いかけっこして遊んでたんだけど…かくれんぼに変わったのかな?」

くっ…私が皆殺しにして全部回収したからいないのは当然である。

こいつわかってて言ってるんだ…遠まわしに人のおもちゃ勝手に壊して盗んでんじゃねぇと言っているのである。可愛らしい顔して嫌味な性格だ…

「さぁ?知らないわね…ゴブリンなんてダンジョンに行けばいくらでもいるんだからまた捕まえればいいじゃない?」

嫌味には嫌味で返すこれが私…

「うーん…それもそうだね。」

そう言って少女は不用意に間合いをつめてきた。

くそ…格下だと思ってなんて隙だかけな間合いのつめ方…だがほんとにこのステータス差だとそれで充分なのだろう…例え隙だらけでも私は警戒しバックステップで距離をとる。

「ん?どうしたの?もしかしておねぇさんが今度は追いかけっこしてくれるの?」

そう言ってさっきより速く加速して間合いをつめてきて手を振り上げ平手打ちを繰り出してきた。

のぉぉわあ…あっぶない…ギリギリのところでかわしたが髪の毛が数本切り取られた。

このぉ…よくも私の髪を…

「あれれ?捕まえたと思ったのに…思ったよりも素早いんだね。」

「魔人族にほめてもらえるなんて光栄だわ。」

「ん?おねぇさん私の事知ってるの?」

まぁたしかに原住民は知らないだろうな…

「知ってるわよ。でも魔人族は普通はこんな所にふらっといたりしないはずなんだけどね。いったい何が目的でいるのかしら?」

「さぁ?わかんない…おぼえてない。」

まったくとぼける演技のうまい美少女である。男ならきっと保護欲をそそられてコロッとだまされるんじゃないだろうか…だけど私は騙されないわ。魔人族は狡猾にして悪辣…

それが何の目的も無く動くわけが無い。

でも、今のままじゃさすがにそう簡単には目的は話さないか…

今度はこちらから攻撃をさせてもらおうか!

私は武器にセイクリッドセイバーをかけ攻撃力の強化をはかりリジェネサークルを発動させた。

そしてピコハンアックスを腕めがけて振りぬいた。

「いたたたた…私がタッチするはずだったのに逆にタッチされちゃった?もしかしてお互いにタッチする遊びなのかな?」

渾身の一撃がちょっと痛い程度のタッチに過ぎないってか…

どこまでも嫌味な事を…

と、考える暇も無く向こうの追撃が来た。2回3回と振るわれる手刀…あたれば大怪我間違いなしを何とか避けつつこちらは確実に攻撃を当てる。向こうはダメージが少ないから避ける気が無いのか避けるのが下手なのか全てあたっている。中々辛い戦いだがこれならいけるか?

だが、いけると思ってしまった瞬間わたしは弾き飛ばされ激しく宙を舞った。

「うぐぅあ!」

腕がああ腕がああ折れたぁあ

めっちゃ痛いいい!涙目になりながら私は自分の腕を見た。

まったくの無傷である。否…確かに折れたが瞬時にリジェネサークルの効果で回復したのである。

リジェネサークルはHP1000固定回復と言う初期のスキルでは破格のぶっ壊れ性能なのだ。

今の私のHPは当然まだ1000以下なので即死さえしなければどんな攻撃も瞬時に完全回復するのである。

高レベルになればHPも9000オーバーとかになってHP1000固定回復もそこまで有用ではないがそれでも常に回復し続けるこのスキルはバランスブレイカーと呼ばれていた。

そして、今回の私の作戦はこれ…このスキルを使った自爆覚悟のゾンビアタックである。

致命傷だけは避けて他の攻撃は当たることも覚悟で痛みを我慢し戦い続ける…

そんな出来れば二度とやりたくない戦い方なのである。

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