第32話 決着!

腕が回復した私は魔人族の少女のほうを見た。

あいかわらずぼぉーっとした眠そうな目だがなぜかその場で飛び跳ねてる。

「やったぁーやったぁータッチできたぁおねぇちゃん素早いからすごく楽しい」

まだ遊び気分のようだ…こっちはさっきから何度も死に掛けてると言うのに…

その後似たようなパターンを10回ほど繰り返したところで私は呟いた。

「preparation is completed…(準備完了…)」

どこぞのアニメ化された慎重すぎる異世界の人がつぶやきそうなセリフを言ってみる。

「翼よ!重力の戒めを解き放て!」

エンジェリックウィングを発動させると私の背中に光の翼が生え一時的に重力がなくなったかのように身体が軽くなった。

私はそのまま空中を駆け上がり宙返りして魔人族の少女の背中を取る…

そして、両手を彼女の背中に当て

「グランドクローース!!」

全魔力を彼女の背中にぶつけた。

グランドクロスはその戦闘中に受けたダメージの合計に残りの魔力をかけたダメージ計算が行われるスキルである…

そう…私はこのスキルのために今までの骨折の痛みを何度も我慢していたのである。

私が今まで受けた痛みを圧縮して一撃の痛みとして味あうのだ。

このスキルには例え魔人族でもひとたまりも無いはずである。

「はぐぅ…」

肺にたまった空気が抜け呼吸が詰まったような声を上げ少女は100メートルほど吹き飛んだ!

どうやらまだ生きているようである。なんてしぶとい…

だが、もう私の勝ちだ…生きてはいても完全に意識を失っている。

止めを刺すため私は近づきピコハンアックスを振り上げ首元に狙いを定める…

その時…突然運営こと悪魔妖精が現れ、彼女と私の間に入り立ちふさがった!

「なんのつもり…」

私は殺気を載せた声で尋ねた。

「少しだけ話を聞いてもらえませんか?ぼくの話を聞いた上で君がこのあとこの子を殺す事を止めるつもりはありません。君の自由意志に任せると言った身です。君がそう決めたのならそれでいいと思います。ただゲーム時代の思い込みでここが現実化したものだということを忘れ判断を誤っている可能性があります。だから話を聞いてもらえませんか?」

「なによ…とりあえず話してみなさいよ…だけど、もしこの子がかわいいから同情してるとかだったらあんたの事切り刻んで肥溜めに捨てて一生軽蔑して二度と口聞いてあげないからね」

「はい、大丈夫です。そういう気持ちで止めた訳ではありません。

まず最初にもう一度彼女の行動を最初から思い出してください。あの子は一度でも殺気を放ってましたか?」

「いあ…それは…確かに放ってないけど…でも、それって殺気を放つほどにも私を相手にしていなかったってだけの事でそれだけ油断してただけじゃないの?」

「はい、そうとも取れます…ですが単純に最初から敵意など無かったとしたら?」

「そんな馬鹿な!私の腕何回折ったと思ってるのよ!人の腕を10回も折ってて敵意が無いなんて言ったらこの世に敵意がある人間なんていなくなるわよ!」

「そうかもしれません…ただ、彼女のステータスが高すぎるため加減できずにただ鬼ごっこをしていてタッチしただけのつもりだったら?なまじ君が瞬時に回復するものだからこの程度の威力で触ってもぜんぜん問題ないと判断して何度も同じ威力でタッチしてただけだとすれば?」

「いあいあいあ…魔人族だよ?あの悪辣な種族の…」

「はい、そうですね…でもそこなのです。この話の本題は…ゲームの時は敵として登場するので襲ってくるのはみんな悪辣でしたが、ぼくはこの世界の魔人族に特にこれと言った性格を設定していません。人間族と同じ設定なのです。いいやつもいれば悪いやつもいる程度の。ゲームではストーリー上不要だから省略されてるだけでいい魔人族も普通にいる設定なんです。そういうことも踏まえて彼女を力が異常に高い人間族の少女だったと仮定してもう一度彼女の行動を振り返ってください。それでも君は彼女を殺しますか?もちろん殺すのもありだと思います。中身はどうあれ異常な力を持っていてそれを加減できていないと言うのは非常に危険な存在だから殺したとしてもけして非難はしません。だけど、ただもう一度考えるだけ考えてみてください。それだけでいいです。」

「………」

思いもよらない考えに私は混乱しなにもわからなくなった…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る