第6話 魔法戦

今ここは流血の殺人現場のような光景になっていた…オーガが頸動脈を切段され倒れ伏していた…誰がこんな酷いことを…犯人はこの中にいる!そう!犯人は…私だ!

はい、私ですよー

どうして…こうなったんだろう…

おかしい…私はこれでもゲーム時代は魔法が主流でトップまで登ったはずなのに、今やってるのは暗殺者紛いの戦い方…仕方ないのはわかってるんだけど、まだスキルが何も無いから物理で行くしかないからなんだけど…言いようの無い気持ちになるよね…

思いの外2匹目のオーガは見事なまでに不意打ちが成功したせいで一撃で討伐出来てしまった…

わかってるんだ…これは実力とかじゃない。たまたま上手くいっただけなのである。だから間違ってもここで調子を乗って2人同時とかやると確実に死ねるはずである。

でもどうすればいいんだろう?ここまで惨劇になると思わなかったから計算外だよ。このままじゃきっと血の匂いに釣られて魔物が大量にやってくると思うんだよね。ゲームの世界じゃ普通に消えるけどここ現実だし、どうしようかな…仕方ない…ちょうどレベルも10になったことだしスキル覚えれるから火炎魔法あたりを覚えて証拠隠滅するか…よし、フレイムアローにしよう。ホントは真っ先に回復魔法を覚えたかったが今を生き延びなければダメだ…

そして、フレイムアローを覚えた瞬間背後に気配が…して咄嗟に右に避ける。

ジュル…今さっきまで私がいた場所の地面が一部溶けていた。

背後にいたのはヒュージスライムである。やろおぉ…この私を背後から撃つとは許せない…

ちょうどいい…フレイムアローでリーチ差は埋まった。次の相手はこのスライムだ。

とは言えヒュージスライムの粘液はかなり射程が長い。フレイムアローを当てるには二歩分くらいは近づかないといけない。だが…おいそれと近づけば粘液の的である。なので…私の作戦は…

っと考えてる間にまた粘液射出をしてきた。既にやつの間合いだったわけだ。これをなんとかギリギリのところで躱すと呪文の詠唱に入る。

「地獄の業火よ!

踊れ!狂え!

殲滅の矢となりて全てを滅ぼせ!」

私の力ある言葉が魔力を炎に変えて無数の矢がヒュージスライムに襲いかかった。

ヒュージスライムの体は3分の1が蒸発した。だがそれくらいでは死なないのがスライムのスライムたる所以である。削れた部分が形を変えて先ほどの状態よりは一回り小さいスライムとして復活した。そこでスライムはまた粘液を飛ばし反撃してきた。しかしそんな攻撃は何度も見てもう見切っている。私はスライムの攻撃を躱しフレイムアローを撃ち続ける。その繰り返しを3回ほど繰り返した所でなんとかヒュージスライムを倒した。レベル12になった。

「一つ…いいですか?お嬢さん?」

妖精の姿をした運営が私にジト目を向けながら話しかけてきた。

「なんですか?その目は…」

「僕の記憶が正しければプレイヤーに詠唱なんて物設定した覚えがないんですが…」

「…」

私は少し赤面しながら黙り込む…

「…ってみたかったのよ」

「はい?」

「一回くらいかっこいい詠唱唱えながら呪文使って見たかったのよ!」

そう…実は詠唱なんて必要なかったのである。さっきのは私のアドリブのおふざけである。

「それにしたって…高々フレイムアロー程度の魔法に…あんな大仰な…『地獄の』とか『殲滅の』とかもう最終魔法放ちそうな文言じゃん…まぁ僕もゲームクリエイターとしてその気持ちは分かりますがやっぱフレイムアローにあれは…」

「じゃーどんなのがいいって言うのよ」

「そうですね…例えば…『火の精霊よ…我が敵を穿て!』なんてどうですか?初級呪文なんだからこれくらいシンプルな方が僕好みですね。」

「うーん…まぁ言いたいことはわかるけど…シンプルすぎてつまらないわ…」

「そうですか?まぁ出来れば今のうちに認識を変えたほうがいいと思いますよ。僕は…」

「ふん…まぁいいわ…さっさとレベルあげ…」

と私は言葉を最後まで言い終わる前に何者かの攻撃により意識を飛ばされてしまったのであった。

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