第7話 迂闊
「うぅ…」
どうやら生きてるらしい。
意識失っていたのは多分数秒だろう。
あぁ…レベルがあがったことで即死はしないようになったので気が緩んでいたわ。
気を引き締めないと…ダメージ量から言ってキングラビットに襲われたんだろう。オーガに攻撃されていたのなら良くて骨折…最悪部位欠損か死亡してるはずだし。
やはり目の前には見た目は可愛らしいウサギがこちらを向いて飛び跳ねている。こんな見た目で恐ろしく好戦的で素早く体当たりをしてくるんだから溜まったもんじゃない。
とにかく体を起こし私は戦闘の準備を整えた。
キングラビットはこちらがまだ戦えるのを見ると飛び跳ねるスピードを上げだした。
「ぴょんぴょんぴょんと鬱陶しい…」
キングラビットは常に動き回っているので非常に狙いを定めるのが大変である…
あとさっきのダメージのせいで集中が乱れて考えがまとまらない。
こういう素早い系の敵を倒す時のセオリーといえば足を奪うとか罠で引っ掛けて動きを封じるとかだけど、如何せんこっちはまだ何も準備をしていなかったからそんな都合のいい罠なんてない。だがキングラビットには弱点がある。まず所詮ウサギなので大した耐久力はない事、次に攻撃手段が体当たりしか持ってないこと。しかもファンタジーにありがちな角が生えたウサギってわけでもなく、あくまでただのウサギが素早い体当たりをしてくると言うだけなのだ。そこに勝機があるはずである。さっきは完全な不意をつかれたので数秒ブラックアウトしちゃったけど受ける覚悟さえあれば完全回避でなくても耐えられる攻撃である。
しっかしホント人を馬鹿にしたように飛び回るな…こいつ…あとで絶対ウサギ鍋にしてやる…
だが気持ちとは裏腹にそれから何度か攻撃を試みるが全く当たらない…当てられる気さえしない。
やはりこのレベルで戦うのは無茶だったのだろうか…課金するしか突破方法はないのか…
「ねぇねぇ?課金する?命中補正装備出そうか?」
横で悪魔が囁いている…あれは妖精じゃない。人をたぶらかす悪魔だ。
「くっ…まだ要りません!」
「あれれー?あれだけ絶対の拒否をしてたのにまだって言葉が出たよ?これはもうじき堕ちるな…くっ…とか言ってるし。どこの姫騎士だ。」
「ほんとうるさい!あっちいけ!」
こんなの相手に最終手段なんて使ってたらこの先この世界で生きていけない。きっとそう思う。
それにだいぶ目が慣れてきた。よくよく見たら速度はテニスの球くらいだ。
テニス?ん?てか、何もこっちから宛に行かなくてもよくない?あんなスピードのを体で追いかけるから勝てないだけで来たところを打ち落とせばいいんだよ。
そのことに気がついた私は再び斧を持ち替えテニスプレイヤーのような構えを取る。
そしてキングラビットが攻撃を仕掛けてきたところをラケットのように振り抜き弾き返した。
「よーし!」
吹き飛んだキングラビットは泡を吹いて倒れていた。
すかさずトドメを刺しさっきまでの死闘はあっけなく終わった。
終わってみるとさっきまではウサギ鍋にしてやろうと思っていたが解体とかできないし
そもそもコイツを持って戦うとかできないし邪魔で仕方ない。
諦めて置いていくか。
「せめてカバンとかあれば持って帰れたんだけど…」
「ん?何言ってるの?プレイヤーにはインベントリーあるじゃん…さっきのオーガの時も思ったけどなんか小細工して頑張ってたけど死体も全部血液もインベントリーに収納可能だよ?」
なにぃいいぃぃいぃいぃぃ
「ななななななんで教えてくれなかったのよ!」
「いあ…なんか聞かれなかったし一人で焦ってるから面白くて…」
こいつぅうぅぅ…許すまじ…
確かに私は聞かなかった…でも普通教えてくれても…うぐぐぐ…やめよう…そんな人のせいにしてるようではダメだ…ここはサバイバル…教えてもらって当然なんて甘えていてはダメだ。
自分の迂闊さをバネに次回に活かそう。甘さがあったからキングラビットに不意打ちを食らったんだし自分を戒めよう…
「これでザコ敵は全種類制覇したからこのダンジョンから出れないことはないね」
「じゃーこのまま引き返して街まで戻るのかい?」
「いあそれはなんか面白くないからダメ…と言うよりめんどくさい。」
そうここ初級ダンジョンのくせにそこそこ深いのである。ボスを倒せば転送ゲートがあるから簡単に出れるんだけど、逆走はめんどくさい。
なのでこのまま突っ切ることにする。
そして私はボスへの扉をゆっくりと開けるのであった。
「いざ!決戦へ!」
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