第15話 お料理

恐怖のお風呂事件から…三日がたった…

嘘です…放心状態でそれくらい経った気分だけど、まだ日付変わってません。

お風呂を終えた私は食事の準備をすべく調理場に向かった。

まぁ課金の食料でさっさと食べてもよかったのだけど、実はゲーム時代からの持ち越しの草子が持ってた野菜などの食材アイテムが結構あるのである。せっかくだからこれを使わない手はないと思うのだ。

なかなかいい機材がそろっている。IHコンロまであるよ…時代設定ちゃんと仕事しろ…

何をつくろうかな…簡単な肉野菜炒めでもいいし…なんか凝った料理にするのもいいけど…

まぁ今日は何も下準備してないし肉野菜炒めでいいや。

まずはフライパンに油を引いて肉を先に炒めまして火が通りきる前に野菜を入れて軽く炒めて味付けしたら…

ジャジャーン!

ミツキ特製肉野菜炒めの完成です!

「さぁ、食べてみて!」

ユリシアに先に食べる事をすすめる…もう何十回と作ってきた料理だから味見なんてしなくていいわ。

「わぁ!とてもおいしそうですね!いただきますー…ぐふっ…」

え…まさか、そんなはずはないわ…もうユリシアったらそんなむせちゃうくらいがっついて食べなくてもいいのに…

「げほ…げほ…た、た、たいへん個性的なお味ですね…私のような下界のものにはあまりに…高度すぎて…げほ…」

え?うそ…うそ…そんなはずないって私料理得意なんだよ?

そんな明らか無理してお世辞言わなきゃいけないような料理なんて作んないよ?

なんで…なんで?

「説明が必要ですかね?」

ほんと…人が困ってる時に必ず出てくるな…この運営妖精は…

どんだけ私が困ってるのがみたいんだ…

「どういうことよ?」

「それがこの世界の摂理だよ…君がどんだけ料理が上手だろうが料理作成スキルを鍛えてないとどう丁寧に作ろうとごみしか出来ないよ…」

「にゃあああにいいいいい!!」

そんな馬鹿な…

料理作成スキルのレベル上げ…

あの地味なスキル上げをやらないといけないのか…くそ…

とにかく…今日のところは課金料理を食べよう。

「ユリシー…ごめん…変なものを食べさせてしまって…お詫びと言ってはなんだけど今日はこれ食べて」

そう言ってユリシアの前に課金コース料理セットを出した。

「そんな…お詫びだなんて…ロキ様にだってミスをする事はあると思います。そんな事で不快になんて私は思いません。」

理由はどうあれほんとユリシアは私に健気に忠実だわ…

どこぞの悪魔妖精と違って…

「それと、町に向かう予定だったけど三日ほど私はこの部屋に引きこもるわ…こんな屈辱許せないもの…だから町に向かうの遅くなっちゃうけどいいかな?」

「はい、私にかまわずロキ様が望むままにされてください。」

「見てなさい!廃ゲーマーの私の本領ってやつを見せてあげるわ!」




そして…三日後…


「ついに…ついにちゃんとした私の料理になったわ…長かった…」

「いあ…普通三日であげるようなスキルじゃないからね…」

「ユリシー…もう一度私の料理を食べてくれる?」

私は足をふらつかせながら尋ねた…

「はい、もちろんです。何度でもかまいません」

そして、ユリシアの前に料理を出した。

ごくり…ゆっくりとした静寂…

緊張の一瞬…

「お、おいしいです!ほんとにとってもおいしいです!やっぱりロキ様は何でもお出来になられるのですね!」

満面の笑みで嘘偽りない言葉でユリシアが私を賞賛してくれる。

よかった…

これが見たかったんだ…

そして緊張の糸が切れた私は三日間の徹夜もあいまって意識を手放すのであった…

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